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3分でわかるイギリスの宇宙活動法と宇宙産業法

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ロケットや人工衛星を打ち上げるための根拠法は、日本やアメリカにだけ存在するものではありません。今回は、イギリスの法律(正式名称:「この国と関連する者による宇宙物体の打上げ及び運用及び宇宙空間におけるその他の活動の実施に関して連合王国の国際的な義務への適合を確保するため免許交付その他の権限を国務大臣に与える法律」)を取り上げてみます。
※訳:https://space-law.keio.ac.jp/pdf/datebase/each_countries/britain/19860618.pdf

なお、イギリスでは2018年3月15日に新しい法律(宇宙産業法)が制定され、これが施行された場合、今回取り上げる法律はイギリス国外でなされる宇宙活動だけについて適用され、イギリス国内の宇宙活動には新しい法律が適用されることとなります。後半では、宇宙産業法について軽く取り上げます。

宇宙条約で求められる監督体制と許可制

そもそも宇宙条約は、宇宙活動の基本的なルールとして、民間企業などの非政府団体の宇宙活動を監督する義務について定めています(2条)。

月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。

宇宙条約を批准している国は、宇宙活動法のような「許可制度」を設けた法律によって国民の宇宙活動を監督しています。イギリスもその国の一つです。 

免許制

イギリス国内国外問わず、以下の活動を行うには国務大臣が交付する免許が必要です。

①宇宙物体を打上げ又は打ち上げさせること
②宇宙物体を運用すること
③宇宙空間における活動

※2018年宇宙産業法が施行されると、イギリス国内の宇宙活動には新しい法律が適用されます。

損害賠償

宇宙活動によって損害を発生させてしまい、被害者から政府に請求がなされた場合、その請求について政府に賠償することとされています。
ただし、国務大臣の指示に基づいて行われることに起因する場合等には責任は負いません。

2018年宇宙産業法ーニュースペースを見据えた新たな法律

冒頭でも触れたとおり、イギリスでは2018年3月15日に新しい法律(宇宙産業法)が制定されました。

宇宙(飛行)活動を「宇宙活動」と「準軌道における活動」に分け、それぞれ宇宙活動を打上げや運用などの宇宙空間におけるあらゆる活動、準軌道における活動を宇宙旅行を目的として、成層圏(高さ約10~50km)まで到達した後、地球周回軌道に乗らず地表に戻ってくる活動と定義しました。
宇宙飛行活動を行うには「事業者免許」が必要となります。
また、宇宙機の発着またはその運搬のための航空機の離陸の場を「宇宙港」と定義し、宇宙港事業を行うには「宇宙港免許」を必要としました。

このように宇宙旅行が前提とされていることもあり、安全性確保のための規定も整備されました。
事業者は、インフォームドコンセントや年齢の基準を満たさない参加者に宇宙飛行活動に参加させてはならず、政府は、参加者の訓練や適性、健康基準等に関する規則を定めなければならないとされています。

また、万が一事故が発生した場合の損害賠償についても、事業者の責任を明確化し、保険に関する規定や、賠償額が保険金額以上になった場合に政府が補償する規定を整備し、事業者のリスクを減らして市場に参入しやすくしています。

新しい宇宙産業法は、文字どおりニュースペース時代を想定したルールとして機能することが期待されています。

参考:
・イギリス 「この国と関連する者による宇宙物体の打上げ及び運用及び宇宙空間におけるその他の活動の実施に関して連合王国の国際的な義務への適合を確保するため免許交付その他の権限を国務大臣に与える法律」
https://space-law.keio.ac.jp/pdf/datebase/each_countries/britain/19860618.pdf
・国際商事法務 Vol.47, No.9(2019)「世界の宇宙ビジネス法(第12回)英国の宇宙ビジネスと法」 増田史子
・「【イギリス】2018年宇宙産業法の成立」 国立国会図書館調査及び立法考査局

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