3分でわかるニュー・シェパード
宇宙旅行が現実に?
ニュー・シェパードは、ブルーオリジンが開発している宇宙旅行用有人ロケットです。人工衛星を軌道上に投入するといった他のロケットと異なり、高度100km前後に宇宙旅行者を連れて行き、地上へ帰還させることをミッションとしています。
ブルーオリジンは、Amazonの創業者ジェフ・ベゾスによって2000年に設立されたアメリカの宇宙開発企業で、約2000人の従業員が働いています。
ニュー・シェパードの重量は約54トン、エンジン(BE-3)の燃料は液体酸素と液体水素で、打上げ時は490kN、着陸時は89kNと、推力を調整することが可能です。
ちなみに、ニュー・シェパードという名前はアメリカ初の宇宙飛行士アラン・シェパードからつけられています。
ブルーオリジンの宇宙旅行
ニュー・シェパードによる宇宙旅行は、打上げ後2分30秒間のエンジン噴射を行って高度100km近くまで上昇、約5分間の無重力状態を体験できるというものです。
打上げ後、ロケット上部の旅行者が乗ったカプセル部分はブースターから分離され、ブースター部分は垂直に着陸します。後にカプセル部分もパラシュートで降下し、いずれも再利用が可能となります。
出典:ブルーオリジンウェブサイト「New Shepard Mission Profile」
旅行の時間は約10分から15分で、価格は約20万ドルです。
この宇宙旅行パッケージの提供を目指し、ブルーオリジンはニュー・シェパードの打上げ実験を繰り返しています。
今年の12月12日には、12回目となる試験飛行に成功しました。
他社の宇宙旅行
宇宙旅行サービスを提供するのはブルーオリジンだけではありません。
クラブツーリズム・スペースツアーズは、アメリカの宇宙旅行企業ヴァージン・ギャラクティックと提携し、同社の宇宙旅行サービスの販売を既に開始しています。
こちらは有翼の宇宙船スペースシップ2で4分間の無重力を体験できます。
出展:クラブツーリズム・スペースツアーズウェブサイト
費用は1人25万ドル、2019年以降運航開始予定となっています。
「ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い」
記事によれば、少なくともあと2回のニュー・シェパードの飛行実験を行った後、年内に有人飛行を行う予定とされていますが、2020年にずれ込む可能性もあるようです。
ところで、ジェフ・ベゾスの宇宙開発は、同じくアメリカの宇宙開発企業スペースXを創設したイーロン・マスクと対比して語られることがあります。
SpaceXが圧倒的スピードで開発を進めるのに対し、ブルーオリジンはゆっくり堅実に開発を進めてきました。
ジェフ・ベゾスは、「ゆっくりはスムーズ、ゆっくりは速い」をモットーに着々と開発を進めており、ブルーオリジンでは軌道投入ロケット「ニュー・グレン」も開発されています。
※ちなみにイーロン・マスクのモットーは「突き進め!限界を打ち破れ!」
また、10月22日には、アルテミス計画で使用する月着陸船ブルー・ムーンの設計、開発のため、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、ドレイパー研究所と提携することを発表しました。
世界で宇宙開発が加速する中、大型ロケットだけでなく、宇宙旅行用ロケットや月面着陸船にも注目です。
マンガ「ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い」
冒頭のマンガを作成いただいたのは、昭和が生んだ天才美少女漫画家あんじゅ先生が運営するオンラインサロン「あんマンサロン」に所属するぽっくすさんです。
いつもありがとうございます!
宇宙法、ロケット美少女化という無茶振りミッションにも対応できてしまう「あんマンサロン」はこちら↓
私たちが宇宙旅行に行くとしたら、(機体に持ち込めるかは別として)何を持っていくでしょうか?
景色を撮影するカメラ、微小重力で遊ぶためのボール、食べ物飲み物など、色々考えられそうです。
お土産はどうでしょう?
どこかの天体に着陸しない限りは外に出られませんから、スペースポートのショップで調達することになるのでしょう。
検査などの準備も必要なので、数日前にスペースポート近辺のホテルに入ることになるでしょう。打上げ前日は眠れなそうです。
このような想像も、いよいよ現実のものとなってきました。
これまでSFの中で描かれてきた宇宙旅行が、いよいよ実現しようとしています。
小柄で旅行が大好きなニュー・シェパードは、ゆっくりした性格。
「ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い」という生みの親のモットーを引き継ぎつつ、通販で買ったシューズでサブオービタルの軌道を描きます。
飛行実験が続くニュー・シェパードですが、今後の活躍が楽しみですね。
参考:
・ブルーオリジンウェブサイト
・クラブツーリズム・スペースツアーズウェブサイト