なぜ企業はlove.fútbolと連携してスポーツグラウンドをつくるのか。その3つのビジネス理由。
近年、企業が社会貢献活動と連携するスポーツスポンサーシップの事例が出るようになってきました。一方でその動機やメリットが問われることも多いため、今回のnoteで「なぜ企業がlove.fútbolを支援するのか?」、その理由を紹介したいと思います。社会貢献と言えば、寄付や物資提供など「与える」ことのイメージが先行するかもしれませんが、企業は私たち社会セクターから企業単独ではつくることができない価値を「受け取る」ことができます。
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先月、love.fútbolはPincus Family Foundation(米国)と約1.3億円のパートナーシップを締結しました。この結果、2019年は新たに米国、ドミニカ共和国にも展開し、メキシコを含めた3カ国5地域にて子どもたちのスポーツグラウンドづくりを広げていきます。2019年はその他の企業パートナーの支援も加え、16個のグラウンドづくりを予定しています。
これまで、コカ・コーラ、ユニリーバ、アンダーアーマー、ESPN、シティグループ(いずれも現地法人)をはじめとする名だたるグローバル企業とパートナーシップを締結し、7カ国33地域、33個のサッカーグラウンド(スポーツグラウンド)をつくり、安全にサッカーをしたくてもできなかった4万人以上の子どもたちが安心してサッカーを楽しめる場を届けてきました。
love.fútbolはなぜこうした大きな企業とパートナーシップを締結できるのか。企業がlove.fútbolを支援する3つの理由を紹介します。
1. 広告効果
2. マーケティング活用
3. サステナビリティ
1. 広告効果
プロジェクトを支援する企業は、オフラインとオンラインで広告露出の機会を得る。オフラインでは、地域に配布するリーフレット、地域住民のユニフォーム、会場に飾るバナーなど。オンラインでは、TV放送、ウェブメディア、SNSを使って、「子どもたちの安全なスポーツグラウンドと町の課題解決」をおこなうスポンサーとして、企業名やロゴがその県・市・町と世界に発信されていく。
過去の事例では、プロジェクト支援額に対して40%〜75%の広告効果を得ている。love.fútbolのプロジェクト費用1,000万円を基準に考えると、400万円〜750万円の広告効果を得たことになる。もっと大きな広告効果を得た事例がESPNだ。ESPNは、2016年にブラジル、メキシコ、アルゼンチンの3カ国3地域でプロジェクトスポンサーをした際、SNSのユーザリーチ数が2.5億を超えた(私はこの専門ではないが、フォロワー単価1-3円で換算することがあるようで、その場合は2.5-7.5億円の広告効果を得たことになる。)3つのプロジェクトに3,000万円スポンサードしたとしても、その25倍の広告価値になる。ただし、上限はその限りではない。 後述するが、企業は完成した後もグラウンドをマーケティングやCSRに活用できるため、 さらに広告機会を得ることができる。
2. マーケティング活用
企業がlove.fútbol支援する理由の1つに、ターゲットとする地域で企業のブランドイメージを向上させて、商品・サービス購入の実利につなげることが挙げられる。実際にESPNとのパートナーシップでは2017年以降も、ブラジル、メキシコ、コロンビア、インドでプロジェクトを実施し、マーケットプレゼンスを高めることに活用頂いている。
ここでは2016年にブラジルで実施したUnileverの例を紹介する。Unileverは、2016年のブラジル五輪に際したマーケティングの一環として、リオ・デ・ジャネイロの2地域で2つのグラウンドづくりを支援いただいた。その際、グラウンドをつくる過程で、各ブランド(商品)に設定された社会テーマに応じて、コミュニティの子ども、大人たちに各種プログラムを提供し、意識・行動の変化をサポートした。
例えば、
Vim(食器洗剤)は、環境をテーマにジカ熱予防啓発とゴミの清掃活動。Omo(洗濯洗剤)は、アートをテーマに子どもが子どもらしくいられる場づくり。Dove(ヘアケア・ボディケア)は、自己肯定感をテーマに子どもたちに外見にとらわれない自分らしい美しさを伝え、Lifebuoy(石鹸)は衛生をテーマに手洗いの習慣化をサポートし、Brilhante(洗濯洗剤)は女性のエンパワメントを行った。
この結果、コミュニティで各ブラントの認知と共感が上がり、商品の売上にも効果があったと発表している。また、2017年に開催されたBeyond Sport(スポーツを通じた社会活動を表彰する国際イベント)では、企業の最優秀キャンペーンにあたる「Best Corporate Campaign or Initiative in Sport for Good 」を受賞した。当プロジェクトは、まさにブラジル五輪と絡めた同社のマーケティング施策に大きく貢献するものになった。
普通にサッカーグラウンドをつくるだけではこうはならない。
私たちが地域の人たちを主役とする手法でグラウンドをつくっているから、スポンサーに地域の人たちと密なコミュニケーションを構築できる機会を提供できる。
3. サステナビリティ
33分の31 = 93%。この数値は、これまでlove.fútbolがつくったグラウンドのうち、今も地域の人たちの手で運営されているグラウンドの割合だ。学校、スポーツ施設問わず、途上国のハード支援では建設後の運営が課題になるケースが多いが、love.fútbolのプロジェクトでは、地域の人たちが自治できる仕組みをつくる。そのため、完成した後にlove.fútbolがいなくなっても、地域の人たちによって運営維持されている。しかも、子どもたちのスポーツ施設、兼、地域課題を改善するコミュニティ・スペースとして活用されている(私たちがつくるグラウンドのコンセプトは「more than place to play」といい、スポーツを楽しめる以上の場所をつくっている)。
企業がlove.fútbolのグラウンドづくりをサスティナブルな(持続性のある)プロジェクトと評価し、支援する理由は3つある。
1つは、これがもっとも大きいが、支援の成果があること。当然だが、つくっても、使われない・機能しないようであれば支援をする意味がない。
2つ目は、サステナビリティは企業の事業活動自体に求められているものであること。サステナビリティの国際基準を定めるGRIは、「地域コミュニティ」を重要な33テーマの1つとして定めており、企業は自社のCSRや社会貢献活動は地域の持続的発展に寄与することを評価している。
3つ目は、完成した後でもグラウンドをマーケティング活動やCSRに活用できること。たとえば、ブラジルのプロジェクトをスポンサードいただいたコカ・コーラ社は、定期的にコカ・コーラ杯を開催して、地域との関係を強化している。上記のESPNも完成後のグラウンドをうまく活用している。グラウンドでスポーツを通じたジョブトレーニングを提供する仕組みをつくり、若者の就職支援に成果を挙げている。
以上、企業がlove.fútbolを支援する理由として「広告効果」、「マーケティング活用」、「サステナビリティ」の3つを挙げました。その他にも、従業員参画(Employee Engagement)の機会がたくさんあり、社内啓発や従業員の意欲向上などインナーマーケティングになることも評価頂いています。
企業のニーズがそれらの点にある場合、または子どもたちのスポーツの場所をつくりたい場合、私たちは価値を提供することができます。
2019年、love.fútbolは、Pincus Family Foundationの他に、ESPNや他スポンサーの支援をうけて16個のグラウンドづくりを計画しています。love.fútbol Japanも、アジアで2つのプロジェクトを実施する計画です。 もしみなさんの企業がカンボジア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイにてスポーツグラウンドづくりプロジェクトに少しでも興味がありましたら、ぜひご連絡ください。
最後に。
企業に提供できるビジネスメリットは、私たちの活動の数ある価値の1つです。このnoteを読んでくれたみなさんにはもう一度、ページの最初から最後までに掲載した「写真」を見て欲しいと思います。
今、子どもたちがサッカーを含めた新しい機会に挑戦できる環境をつくること、子どもたちが暮らしやすい社会をつくること、これこそが私たちの活動がみなさんに提供できるもっとも大きな価値です。
<12月20日:プロジェクト報告会を開催します>
「子どもの命」を守るサッカーグラウンドづくりプロジェクト。
〜子どもが安心して遊べるスポーツグラウンドづくりに大切な3つの要素とは?〜
詳細・お申し込みはこちら。
https://lfj-br-project.peatix.com/
加藤遼也
love.fútbol Japan代表。
Twitter:@Ryoyalovefutbol
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