イデアルは「イデアルホールディングス」へ。私が店舗を手放す理由。
株式会社イデアルを経営しています、和田 亮(わだ りょう)です。
前回のnoteより間が空いてしまいましたが、今回はみなさんにお知らせしたいことがあり、再度筆を取りました。
私の会社「株式会社イデアル」は「イデアルホールディングス」になります。
ご存じの方もいると思いますが、「ホールディングス」とは「持株会社」のこと。イデアルが「持株会社」という立ち位置になり、イデアルのお店である「五郎」や「十郎」を傘下に持つことになります。
ただ、一般的なホールディングス化の傘下や管理下に置くのとは違います。あくまでイデアルとしての企業メリットを小規模店舗にも適用し、イデアル自体はサポートやアドバイスに徹します。
各お店は店舗スタッフに譲って独立。独立した時点から、それぞれ店舗のスタッフ代表が社長になります。
現在このホールディングス化に伴う準備をしていますが、先日知人からこのような質問がありました。
「お店を譲ってしまって大丈夫?」
「事業を縮小してどうするの?」
など、詳しくイデアルの事業計画について知らない方から心配されることがありました。
私としてはホールディングス化はベストな手段であり、イデアルが進化したと捉えています。しかし、このままでは独立させる真意が伝わらない。
そこで今回のnoteでは、ホールディングス化の理由やいきさつを語っていこうと思います。
あの星野リゾートを成功に導いた「運営特化戦略」とは?
ホールディングス化、つまり各店舗の独立は前々から考えていました。
以前、このnoteで「「クジラ」よりも「スイミー」?飲食業経営の根幹となる"お金"の考え方」という記事を書いたことがあります。
今回のホールディングス化は、この記事でご紹介した星野リゾートさんの経営のやり方「運営特化戦略」を実現しようとしたものです。
「運営特化戦略」とは、イデアルに当てはめれば「五郎」や「十郎」などのお店を会社で所有せずに独立させる。イデアルはお店のサポートにまわるという戦略です。
海外のホテルチェーンではよく見られる戦略です。
弊社の場合、「運営特化戦略」にはたくさんのメリットがあります。
1.店舗スタッフのお給料が増える
現在、イデアルは「五郎」「十郎」など、直営店を9店舗運営しています。さらに独立支援事業、プロデュース案件や熟成肉卸し販売、弁当製造販売事業、EC事業、イベント出店、専門学校への講師派遣など、様々な仕事を行っています。
この状態で新規事業が入ると、当然私1人では管理できません。中間管理職的な人材が何人も必要になります。
そうなると、中間管理職にも給与が発生し、必然的にお店の店舗スタッフのお給料が少なくなってしまいます。
しかし軌道に乗った独立支援店舗のサポートは、基本私一人と経理・総務・デザインの少数の本部社員だけでできます。店舗の仕事を管理する中間管理職は不要です。
実際に独立支援店舗である「たらふくうなり」「西堀じゅんちゃん」、元店舗スタッフが資金を出して独立したお店の3店舗には中間管理職がいません。
お店に権限の移譲をして店舗スタッフで全ての決定を行えば、中間管理職がいない分、店舗スタッフのお給料が増えます。
もちろん、イデアルでの店舗運営のサポート業務は継続。店舗が必要な時に必要なフォローに入ります。人が足りない時には現場に立てる本部マネージャーや私がいます。
このように「運営特化戦略」により、店舗の利益が直接店舗スタッフの給与に反映されやすいシステムになります。
2.独立のリスクが少ない
「独立したい」「自分の店を持ってみたい」という人はたくさんいると思います。
ただ、独立にはたくさんのリスクがあります。
その一つが金銭面。「お店は持ちたいけど、お金を借りるのに抵抗がある」「もし独立に失敗したら...」と思っている方も多いでしょう。
イデアルでは独立を希望する店舗スタッフにイデアルが出資してお店を出し、3年任せます。利益が出るとわかった時点で、お店をそのまま譲ります。
もし利益が出るのが難しいとわかったら、業態変更や新しいお店への挑戦にシフト。それでもうまくいかないお店は会社の責任で閉店させます。
このやり方なら、店舗スタッフがお金を借りるリスクを背負わずに独立ができます。
3.イデアルが新しいことに挑戦できる
今あるお店を店舗スタッフに譲れば、イデアルも私も管理の余裕ができるので、新しいことに挑戦できます。
今は店舗スタッフが希望しているホルモン焼とかタコスとか、またラーメン屋など、居酒屋以外のお店の出店を考えているところです。
「運営特化戦略」にこだわったのはなぜか?
メリットが多い「運営特化戦略」ですが、もちろんデメリットもあります。
もし出資したお店が3年以内に利益を出せずに閉店した場合、負債はすべてイデアルが負うことになります。
ですが、すでにイデアルが独立をサポートした実績もあります。しっかりとサポートをすることで、店舗スタッフもイデアルを信頼して一生懸命働いてくれると信じています。
だから、そこまでデメリットとは思っていません。
実際にコロナ前、「たらふくうなり」の店舗スタッフにお店を権限移譲しました。
「たらふくうなり」は売上が増え、店舗スタッフも成長。「たらふくうなり」の成功例があるので、他のお店も絶対に成功すると思っています。
また、独立させた店舗の経営が上手くいった時のイデアル側の儲けが少なくなるというデメリットもあります。
独立したお店に利益が出ても、そのお店はすでにイデアルのお店ではないので会社に還元はあまりありませんから。
せっかくリスクを承知でお店を創り店舗スタッフを育て、多額の利益を出しても、その恩恵を存分に得られないのも「運営特化戦略」が少ない理由の一つです。
しかし「経営者や経営陣だけが儲かるという考え方はどうなのだろうか?」と私は思っています。
イデアルの理念である「Make People Happy(人々を幸せにする)」に反しているのではないかと。
私自身、物欲があまりなく、高価なものを所有することに貪欲ではありません。
もちろん美味しいものを食べて、好きな国に自由に行けるくらいの収入は欲しいですが笑、それ以上にお金を必要としてません。
私は有り余ったお金を必要としてませんし、お金があり過ぎるが故に不幸になった知人も見てきたので。
それなら、儲けたお金は店舗スタッフが良い収入と適切な労働環境で働けることに使った方がいいと思いました。
独立した代表者がやりがいを持って働ける仕組みを創ってあげることに使った方がいいと考えたのです。
最初、「店舗の経営をお店の代表スタッフに任せる」と話した時、周りの人は難色を示しました。
妻や友人には「30年も携わってきた和田の代名詞のような五郎を人手に渡すのはどうなの?」と。
それでも、家族や友人一人一人に自分の考えや「運営特化戦略」のメリットを伝えると、みんな理解してくれました。
店舗スタッフも「社長ともっと働きたかったけど、社長が選んだ道を信じます」と言ってくれました。
この「運営特化戦略」を成功させるには、店舗や本部スタッフとの信頼関係が必要です。
そして、信頼関係を築くためにはコミュニケーションが必須。
私はTwitterをやっていて、店舗や本部スタッフもフォローしてくれていますが、より直接的なコミュニケーションを頻繁に取っています。
実際に店舗や本部スタッフとはこまめに一緒に食事をとるようにしてます。
おかげさまで私のスケジュールには、年中スタッフとの研修旅行やコミュニケーションのための食事会などが入っています。
食事会だけでなく、今後は積極的にお店に出ようと思っています。特にまだ店舗スタッフを社長として育てきれてないお店に出る予定です。
今後は「薪焼きイタリアンFIREPIT(ファイヤーピット)」に立とうかな、と考えています。
久しぶりに現場の雰囲気を感じながら、店舗スタッフを育てたいですし、お客様との会話も楽しみです。
ホールディングスへの移行は、イデアルの理念「Make People Happy」を叶えるため
いよいよ本格的にイデアルホールディングスへの移行が始まります。まずは7月から「古町五郎」「万代五郎」「十郎」「マリスコ」「焼NIQ」が独立する予定です。
他のお店も店舗スタッフが成長してやる気があるなら、引き継がせる準備をします。
銀行や取引先に新社長(独立するお店の店舗スタッフ)を紹介したり、新しい契約をしたりで最近はとても忙しいです。
他にも保険や不動産の手続きをしたりなど、やることは山積みです。
しかし、この忙しさもイデアルの理念「Make People Happy」を叶えるためのもの。
「たらふくうなり」の独立で成功したという経験もあります。今回のホールディングスへの移行もきっと成功するはずだと信じています!
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
引き続きお店や会社のことをnoteに書きたいと思っています。ぜひチェックしていただければと思います。よろしくお願いします。
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