僕は雨が嫌いじゃない
僕は雨が嫌いじゃない。正確には好きでも無いが嫌いにはなれないのだ。
僕は学生時代に好きな先輩がいた。
僕はバスケ部で基本的に体育館でしか練習をしないが罰ゲームで外周をさせらる事があった。その外周の時だけ窓から見れる少し無愛想な先輩に恋をしていたのだ。
その少し無愛想な先輩は吹奏楽部でトランペットを吹いていて、走ってる時に校舎の窓からトランペットの音が聞こえると先輩が応援してくれてる気がして罰ゲームなんかじゃなくて、疲れなんて吹き飛ばせるような身体が軽くなった気がした。
とある日にまた罰ゲームで外周をしていた時に急に雨が降り出したのだ。
田舎の山の方に学校があった為天気が変わりやすく、天気予報では雨と言ってなくても急に大雨になる事もよくある話しだ。
そんな田舎の学校だから雨の日は傘を貸し出してて持ってない人でも濡れずに帰れるようになっていた。
でも、その日は珍しく傘を借りて行く人が多くて貸し出してる傘が少なくなってたのだ。
バスケ部は部活が終わるのが遅くて借りれる傘がなくなっていた。残り少ない傘を友達に譲って僕は通り雨だと思い雨が少し落ち着いてから走って帰る事にし、1人雨宿りをしていた。
だんだん外も暗くなるのになかなか雨が落ち着かない。
くしゅん!
横で小さなくしゃみが聞こえた。
暗かったので気づかなかったがしゃがんで雨宿りしている先輩だった。
これは話しが出来るチャンス!と思っていたのだが当時の僕にそんな勇気もなく、ただただ横目に先輩を見て雨宿りするだけで時間は過ぎていった。
おーい、まだ学校居たのかー!
先生が僕ら2人に気付いた。
先生の傘を貸してやるからと1本傘を貸してくれた。外も暗いし笠も1本しか無いから2人で駅まで歩いたらと提案してくれたのだ。
ここにきて2度目の喋れるチャンス!
これは無駄には出来ないとドキドキする気持ちは落ち着かして先輩と雨の中2人歩いた。
普段何気なくさしてる傘
こんなにも2人だと距離が近いのか…
雨を傘が弾く音だけが2人の周りに響いてる、まるで傘の中だけは2人だけの空間のようなそんな気がしていた。このまま一生この雨が続いて駅に着かなければ良いのにと願うばかりで口を開く勇気はでない。
あ!良かった来てくれてたんや
先輩が急に口を開く、雨の音にも負けない声だった。先輩の見てる方には傘をさして待っている男の人が居た。
明らかに僕達よりも歳上のその男の人が誰なのか分からなかったが近寄る先輩の表情を見てすぐに分かった。
無愛想な先輩がその男の人に見た事もない表情で話ししていた。その顔今まで見た物の中で何よりも綺麗で可愛くて…
あぁ、そうか俺は何もできないで失恋してしまったんか…
その後の事はあんまり覚えていない。
覚えていふのは、雨の中涙を誤魔化す為に傘もささずに帰ってびしょ濡れで親に怒られ、次の日に熱を出した事。
僕は雨が嫌いじゃない。僕に失恋を教えた雨だから好きにはなれない。
でも、僕に人を好きになる喜びと成長させてくれた雨の事を嫌いになんてなれないのだ。