モンスターのいる家
今の家に引っ越して来たのは13年ほど前。
前に住んでいた家が市の区画整備区域に入ったため、今の土地を見つけて家を建てた。
前の家が中古だったので、新築はとてもうれしかった。
キッチンのシンクや壁紙、カーテンもこだわって決めた、日当たりの良い家。
ソファも家具も新しい家にふさわしいものを選んだ。
いつまでもピカピカに使おうと誓った。
その頃我が家には老犬がいた。
雑種のモモちゃん。
若い頃はおてんばだったけど、すっかり落ち着いて、静かに穏やかに暮らしていた。
環境の変化を心配したけど、あまり気にしていないようだった。
しかし次第に大好きだった散歩も嫌がるようになり、寝ている時間が長くなっていった。
少しでも歩いてもらいたい、そんな想いから、いつもは行かない場所に車で行って、モモちゃんと歩いていた時のこと。
どこかから子猫の鳴き声が聞こえた。
(どこから聞こえるんだろう…)
と探してみると、道端に段ボールが置いてあり、そこから聞こえたのだった。
子猫は小さく、目やにがひどかったけど、病院に連れていくと大きな病気はないことが分かりほっとした。
里親を探そうかとも思ったが、モモちゃんのことを母親のように慕い、モモちゃんのほうも満更でもなさそうな様子。
何よりとてもかわいかったので、我が家の家族になった。
コウメちゃん。
私の人生で初めての猫。
コウメちゃんはおてんばで気が強くてツンデレでめちゃくちゃかわいかった。
それから三年後にモモちゃんが亡くなった。
コウメちゃんを抱き締めてわんわん泣いた。
それから一年後、私は一人での散歩中にまた子猫の声を聞きつける。
公園のトイレで、べちゃべちゃに汚れていて、その日は大寒波が来る予報が出ていたので、一刻も早く保護しなければと、手袋を装着して保護し、家に連れて帰った。
里親を探すことも考えたけど、かわいかったし、何よりコウメちゃんの寂しさも紛れるかなと期待してうちの子にした。
それから二年後、私はまた子猫の声を聞きつける。
かわいかったので以下同文。
それから色々いろいろあって七年後の今、我が家の猫は総勢七匹になった。
四匹目以降はみんな、病気になっていた大人の野良猫を保護した。
今はみんな病気も治って元気に過ごしている。
七匹もいるともう家中がまるで大きな爪研ぎのようだ。
絶対に爪を切らせたくない派の猫はコウメちゃんをいれて三匹。
どうにかこうにか切れるのが三匹。
爪が伸びてる様子のない子が一匹。
どうなってるんだ。
壁ってこんな層になってたんだ~…
ソファって中身こんなんなってるんだ~…
市販の爪研ぎってこんなにゴミが出るんだ~…
えーこんな高い位置に爪で引っかいた跡~どうやってつけたんだろう~…
と発見が尽きない。
こだわりの壁紙はもう至るところボロボロだ。
コウメちゃんだけだった時はまだキレイだったソファも、今はもう見る影もない。
六匹目と七匹目はオスなので、四つ足で立ったまま壁に向かっておしっこしたり、洗面所でおしっこしたりとマーキングに勤しんでいる。
私は消臭に勤しむ日々。
かつて遊びに来た友人から
「何もかもが優雅すぎるよ~」
と言われていた家は今何処。
いつか何かの事情でこの家を出ていく日が来るのかもしれない、と考える。
その時は…この家は売れないかもしれないな~。
いや、壁紙を全部剥がしておけばなんとか売れるか…?
猫という生き物は恐ろしい…。
『おしゃ家ソムリエおしゃ子』でおしゃ子に「コルビジェの家具でも平気で爪を研ぐというあのモンスター…?」と言われていたのも納得。
そうか!我が家はモンスターが集う場となっていたのか!上等上等!こんなかわいいモンスターなら全然OK!
先のことは分からない。
今はとりあえず、みんな存分にこの大きな爪研ぎと化したこの家で存分に爪を研いでおくれ!
みんなが元気で楽しいならそれでいいよ!
モンスターの大きな爪研ぎと化した、ここが私の家だ!