あの、結局あなたは誰なんですか。

「いや、だからさ! コイツは誰なのかって聞いてんの。誰?」
「いや、あの……だから、局長で画家の、お医者様ですよ」
「そうです。私が山羊なのです」
「いやいや、おかしいでしょ。なんで自動販売機がそんなことを言うんですか。どこでどう判断したら、これが局長になるんですが?」
「違います! 局長で画家の、お医者様です」
「はい。山羊です」
「ああああっ! なんなんだよ! どうして自動販売機が言葉を発している? なんで山羊を名乗る? なんで? 画家とか医者ってのはどこからきたんだ? コイツはただの局長だろ? なあ」
「違う! 彼は局長で画家のお医者様! それ以外でも、それ以下でもない! ただの、局長で画家のお医者様だあ!」
「ええそうです。山羊です」
「ああああああああ!」
 蟹股で走り去っていく警部の後ろ姿や慌てぶりは、自室でゴキブリを発見してしまった時のそれとほぼ同一のものだった。

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