YouTubeで129時間融かした僕が考えるアイルランド音楽のリズム #土曜夜にアイルランドを語る
みなさんこんにちは〜、アイアイと申します。このハンドルネームにした理由は忘れましたが、実体はメロディオンを弾いている中林です。おさるが弾いてそうな楽器だしベストマッチな名前な気がしてきたので、名前はこのままにしようと思います(笑)
某ウイルスの影響で外出や交流に制限が出ていますが、みなさん無事にお過ごしでしょうか。私は仕事も授業も会議も飲み会も友達との雑談も実は在宅のままできるということ自体にまず驚き、「家でできることが広がった」というポジティブなすり替えをして気分を保っています。もはや満員電車に乗りたいですね(??)
はじめに
さて今回主催の方から、おそらく「YouTubeのアイリッシュ関係の動画に高評価ボタンを押した回数」に目をつけていただいたんだと推測していますが、私にこの連載の1回分を書く機会をいただきました。ありがとうございます。数年前にこの音楽を知ってから、Youtubeでレアそうな動画を発掘して高評価ボタンを押す習慣がついてしまい、その数は今日時点で1,552本でした!1本で1セットは弾いていると思うので5分あるとすると、合計で丸々129時間はYoutubeを見ている計算になります。習慣は恐ろしいですね。ちなみに、このプレイリストを純粋な状態に保ちたいが故に、アイリッシュ以外の動画にはどんなに良いと思っても高評価を付けられない病にかかっています。
ここまでたくさん動画を見てきて、もちろんCDを聞くのも好きなので、何か生産的なことができないかと思った時に、(おもしろ動画紹介なども考えましたが)楽器を弾いたり演奏を聞いたりする上で少しでもプラスになることを提供できたら良いかなと考えました。ということで今回のお題は、
おうちでできるアイルランド音楽のリズム研究
です!要約すると「アイルランド音楽のリズムについて、Youtubeの動画をネタに、おうちで研究するのも楽しいよ」という内容です。
ターゲットの読者としては、
A. 始めたばかりの人
伝統音楽の達人たちの演奏と比べて、自分が弾くと何か違うな〜みたいな感想はよくあると思います。その理由は人の数だけあると思いますが、リズムは誰もが悩まされる部分じゃないでしょうか。僕も音楽自体ほとんど未経験でこの音楽と楽器に出会い、今まで熱中してきましたが、最初の段階からもっとリズムについて語ってくれる人が周りにいてくれたらよかったなと思います。現在進行形でそう思っている人の手助けになれば嬉しいです。
注意点として、これが全てだとは言っていませんし、これが正しいかどうかもわかりません。ただなるべく客観的になるようには努めているつもりですが、鵜呑みにはしないでください。自分で音源を聞いて、気に入ったところを真似してみる、みたいな地道な作業が結局誰にも文句は言われないし自分も楽しいです。
B. リズムについて話す機会のある人
これを機に、リズムについて話しましょう!話すきっかけ、また語彙として使っていただければと思います。また自分のリズムを別の視点から捉え直すきっかけにもなればと思います。
C. リズムに詳しい人、身につけている人
ぜひ意見交換したいです。その人の感覚をこの説明がどのぐらいカバーできているか? それ以外で大事な要素はどう表せるだろうか? などについて議論できるのを楽しみにしています。
などを考えています。(つまり特に絞れていません)
0章 書いたきっかけ
音楽の三大要素はリズム・メロディ・ハーモニーだと言われますが、これはアイルランド音楽においても大事な要素だと思います。今回はその中で「リズム」に注目します。
Reel, Hornpipe, Jig, Slide, Polkaなどリズムを区別する語彙がたくさんあることや、ダンスのステップがそれぞれ区別されていることからも分かるように、リズムをかなり大事にしているのがアイルランド音楽の1つの特徴だと思っています。しかしリズムを人に伝えるのはかなり難しく、「考えるな、感じろ、慣れろ」派(これは実は正攻法なのだと思います、一緒に演奏したり歌ったりして体得するのが遠回りなようで近道なのでしょう)、「ノリを出せ」派(これだけ言われてもよくわかりません… 結局、じゃあノリって何?どうやったら出せるの?というところも伝えないといけません)などのアドバイスをよく耳にします。
自分自身も聴きながら弾きながら部分が多いし、YouTubeやCDを漁って研究するのが自分自身で本当に好きで、その過程で学んだこともたくさんある気がします。
自分がもし伝統音楽の達人だったら、この通りに弾けば完璧だ!みたいなことが言えたのかもしれませんが、惜しくもそれはできません。なので、その楽しみ方自体や、現時点で僕がどう考えているかをシェアできたらと思っています。
また自分自身への疑問として、「このリズムを言葉や図に表すとどうなるの?」というのは気になったので、今回の記事で考えてみることにしました。
それでは始めましょう(前置きが長い)
1章 Youtubeを(アクティブに)聞いてみよう - 速度を変える
新手の文豪さくやちゃんの記事はみなさん読みましたか?Youtube動画に混じってセッションしよう!というノーベル平和賞レベルの記事です。
上の記事にも挙げられているように、YouTubeにはTG4等のテレビ局・楽器屋さん・奏者の公式チャンネル・ライブの参加者(これはグレー寄りの黒な気もしますが)がアップロードした良質の動画がたくさんあります!ありがたいですね。
例えば…
普通に聴くのも楽しいのですが、私がオススメする面白い使い方は、「再生速度を変えて聴いてみる」ことです。Youtubeの画期的な機能として、再生速度を変える機能があります(去年か一昨年ぐらいに増えた気がします)。 しかもピッチはそのままに速度だけ変えられるので、スローモーションでゾンビみたいな低い声になったりする事はありません!(↓ここにあります)
蛇足ですが、アクティブに聴くという意味では、深く聴いて研究するだけでなく一緒に弾くのも面白いですよね。アイルランドの某奏者もJoe Burkeのレコードと一緒に弾いて練習していたという話をしていました。Youtubeなら再生速度を変えるのも巻き戻すのも簡単です。
スローにすると、
・曲覚えもちょっと楽に
・細かいアレンジやテクニックもはっきりわかる
利点がありますが、もっと大きく、
・リズムをどう表現しているのか
もわかりやすくなります。
実際に上の4つの動画(4つの動画はのうち2つはReel、2つはJigになっています)を1倍で聞いたあとに、0.5倍速で聴いてみましょう。個人的には、1倍速では「軽快な感じ、体が動く感じ、スピード感」みたいなものを感じますが、0.5倍速だと「独特のリズムの揺れ方、溜め方の規則性」を感じます。同じリズムごとに(同じくらいの速度で)聴き比べてみると、もちろん奏者ごとに細かい部分が違ったりしますが、大枠として共通している規則性があるのではないでしょうか。
ではこの違いを作っているのは何なのでしょうか?その規則性はどう表したら良いのでしょうか?
2章 リズムを形づくる3要素
リズムは、繰り返しのパターンに現れます。1秒に1回太鼓を叩く人形のおもちゃも、まあリズムに含んで良いでしょう。
Reelだったら4つの音が最小のブロックな気がします。Green MountainのAパートだったらAFFF EFDEで2ブロックです。楽譜だと4/4ということでしょう。
Jigだったら3つの音が最小のブロックとして分けられそうです。Connachtman's RamblesだったらFAA dAAで2ブロックです。この2倍で捉えた方がまとまりは良さそうです。(楽譜では6/8で書かれますね)
この音の繰り返しのパターンは、メロディを無視してリズムだけ取り出すと、音の始まるタイミング、音の長さ、音の強さに分けられそうです。図にするとこういう感じです。
このリズムの要素を図にしたものを、リズムの形と呼ぶことにしましょう。
さて、YouTubeの動画を一つ選んで、ゆっくり再生してみましょう。もちろん全体の流れの中で振れているので均一ではないですが、聞こえてきた平均的な「リズムの形」を書いてみてください。人によって違うと思うし、それぞれがいいと思う形をゲットすることが一つの目標だと思うので。
かけましたか?
僕はこういう感じに書きました。
Reelは3つ目の音が強く長く聞こえます。偶数番目は比較的軽めに聞こえます。
Jigは1つ目の音が強く長くて、そのせいで2つ目が後ろにずれてる感じがしました。
この「リズムの形」だけでは、演奏のごく一部しか再現できていないと思いますが、上の規則性を捉えられているでしょうか?そしてスピードを早めた時に、動画の時に感じた「軽快な感じ」(これは人それぞれ違って良いと思います)を感じられるでしょうか?実際にこのリズムを作ってみて、試してみましょう。
3章 「リズムの形」を再現してみる
では、「リズムの形」だけ真似てみるとどうなるのでしょうか?実際に体験するためには、
・歌う
・楽器で実際に弾く
・手を叩いたり机を鳴らしたりで表してみる
などでできると思います!録音してアプリに入れれば、再生速度を変えることもできると思います。
今回はどれもお伝えしづらいので、音をならせるソフトを使ってみます。GarageBandというソフトが最初から入っていたのでそれを使いました。ただ単に叩かれる机の代用なので、どんなものでも良いと思います。
まずReelの方を比較してみました。先程書いていたリズムの形で表すと、次の3種類を実際に音を鳴らして比較してみました。
(1) 均等:4つの音が全部同じ長さ、同じ強さ、そして正確に1/4ずつのタイミングで鳴り始める場合
(2) 長さとタイミングを変える:2,4個目の音を短く、少し遅らせた場合
(3) 強さを変える:3個目の音を強くした場合
ということです。これを聞いてみて、聞こえ方がどう違うかみてみましょう。(この下の動画は1倍で再生してもらって大丈夫です😆)
(1)の均等、(2)長さを変えた時、(3)強さを変えた時 で聞こえ方がどう変わるか、またスピードを早めた時の聞こえかたの違いに関して、なんとなく法則があるようですね。
・長さを変えることによって、「溜め」感が調節できる。溜めれば溜めるほど、シーソーの「がったんがったん」という感じが強くなるようです。
・強さを変えることで、メリハリがついて、まとまりよく聞こえるようです。Reelでいう3音目(裏拍)に強い音を置くと、スピード感にも影響していそうです。
Jigでも同じことをやってみました。
(1) 均等
(2) 強さを変える
(3) 後にずらす
(4) 音の長さを変える
これだけ聞いているとすごいシュールですが(笑) 自分なりに、聞こえてきた音源に似せてみようと試行錯誤するのは結構楽しかったので、是非お気に入りのパラメーターを見つけてみてください!
終わりに
「手を叩いてください」と書いても多分叩いてくれないので、シュールな動画を作りましたが、これを足がかりに自分自身でいろいろなリズムを試してみてくださいね。
掴めた!と思ったら、今度は楽器それぞれでそのリズムをどう表現するかを考えてみたり、さらにはあえて崩すみたいな遊び方もできると思います。その時にもYouTubeは友達です!
今回紹介した動画は城さんが下のプレイリストにまとめてくれました!よかったらどうぞ。
次回予告
次回は主催の城さんによる「今こそはじめる、シャンノース」です!こういう状況だと、日頃からちょっとした運動をする習慣のある人が羨ましいのですが、シャンノースは一石二鳥なのかも(?) 来週の公開まで正坐待機でお願いします!