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多数派の声届かぬ総長選挙
12月18日より特別宗会がはじまり、19日には総長選挙が行われました。開会式の門主御教辞では、能登半島地震の被災者へ哀悼のことばに続き、このように述べられました。
門主御教辞の抜粋
浄土真宗本願寺派宗制には、
「本宗門の宗祖親鸞聖人は顕浄土真実教行証文類をあらわし、龍樹天親曇鸞道綽善導源信源空の七高僧の釈儀を受け、仏説無量寿経の本義を開顕して本願名号の真実の教えを明らかにされた。これが浄土真宗の立教開宗である。本宗門はその教えによって本願名号を聞信し、念仏する人々の同朋教団である。あらゆる人々に阿弥陀如来の智慧と慈悲を伝え、もって自他ともに心豊かに生きることのできる社会の実現に貢献する」
と記されています。
あらゆる人々に阿弥陀如来の智慧と慈悲を伝えることというのは、表現を変えると、先人の方々が大切に受け継いでこられたみ教えの肝要をひろく、わかりやすく、また次の世代に確実に伝えるということであり、これはこれまで私が親教や消息で申し述べてきたことであります。
議員の皆さまにおかれましても、このことを常に心にお留めおきいただかれながら、伝わる伝道をはじめとした宗門の諸活動にお力添え頂きますことを切に願っております。
ご親教「わたしたちのちかい」やご消息「新しい領解文」が次の世代に確実に伝えていく言葉として念を押されています。
総長指名と議員の反応
総長指名
大谷光淳門主による総長指名は、元総長(2023年5月~2024年3月)の池田行信議員と、各教区学習会で説明役を担い、『なぜ「私の煩悩と仏のさとりは本来一つゆえ」なのか』を執筆した元総合研究所所長の満井秀城氏が指名されました。過去2回の総長指名と同様の方針が今回も維持された形となりました。
池田行信(東京教区、6)
満井秀城(安芸教区、勧学寮員、元総合研究所所長)
議員の退場
この指名に対して参加議員76名中、53名が投票を放棄して退場する異例の事態となりました。先の宗会議員選挙では、「新しい領解文」が争点になり、教区の声を受けて問題意識を持った議員が多く当選し、推進に反対する議員が多数派になりました。退場した議員は投票を放棄する形で意見を表明しました。退場した議員はこちらです。
■顕心会
浅野弘毅(四州)、武田昭英(安芸)、桑羽隆慈(山口)、下川弘暎(福岡)、竹中了哲(富山)、清岡大地(大阪)、渡邊幸司(安芸)、梨本興正(国府)、出口智順(大阪)、亀原了円(熊本)、西光義秀(奈良)、柳樂由乗(山陰)、寺西龍象(安芸)、井東壮一(山口)、伊藤宗玄(北豊)
■一信会
竹田空尊(福井)、笠置信行(鹿児島)、森眞仁(大分)、黒田玲(新潟)、豊原正尚(兵庫)、近藤利尊(岐阜)、松野尾慈音(東海)
■凛和会(※新会派)
松原功人(山口)、高務哲量(福井)、寺澤真琴(滋賀)、稲城蓮恵(大阪)、福本康之(兵庫)、松月博之(福岡)、浦霧慶哉(佐賀)、木下明水(熊本)
■無所属
鈴木寿昭(東北)、海野暁光(長野)
■門徒議員
助永一男(備後)、宮川孝昭(滋賀)、和田学(岐阜)、嶋田典之(大阪)、磯淵光男(安芸)、山手卓男(山口)、太田喜之(福岡)、田川安一(大分)、谷口太一郎(佐賀)、髙木義明(長崎)、三嶋統吾(熊本)、両川武弘(北海道)、石井弘光(東北)、山口格夫(東京)、飯吉守(国府)、八百坂徹(新潟)、髙栁昇(富山)、山岡弘之(高岡)、奥村正昭(福井)、中根義一(東海)、立花美一(和歌山)、倉石功(北豊)
ここでいったん休憩となり、しばらくすると再開は約3時間後の16:00という知らせが入りました。
面会はしない
休憩中に何が行われていたのか。議員によると、宗会運営委員会で話し合いが行われ、起きた出来事をご門主にお伝えし相談するための面会を求めたところ、面会はしないと連絡が入ったそうです。総長選の結果を伝えることができない事態となり、再び宗会運営委員会で話し合いが続きました。結果、再び同じ指名者のもと選挙が行われます。各教区の民意を受けた53名の議員が選挙を退場した事実は過去に類を見ないものですが、それに対する門主面会の場は設けられませんでした。
選挙の結果
16:00より選挙が再開されました。結果は、満井氏が当選しましたが、総長職を辞退。これを受け、翌日に再指名が行われることになりました。
池田行信 14票
満井秀城 61票
白 票 1票
総長当選者が辞退した事例は、2012年、門主側の本命とされる橘正信氏と、神子上恵群氏(元龍谷大学学長)の指名があり、神子上氏が当選しましたが総長を辞退して再指名となりました。再指名では現在の議長、園城義孝議員と橘正信氏があげられ、園城議員が総長になりました。
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再指名と再選挙
10月20日10:00より議会が再開しました。総長の再指名は再び池田行信議員と、「新しい領解文」の制定に深く関わった石上智康氏でした。今回は多数派議員による退場の手段は取られず投票が行われました。選挙の結果、白票が全体の約7割を占めましたが、池田議員が再任されました。
池田行信 22票
石上智康 0票
白票 52票
池田行信総長あいさつ
総長候補者としての指名を賜り恐縮至極に存じております。 また只今は総長選挙にあたり、議員の皆様から尊い御協賛を賜りましたこと衷心より厚く御礼申し上げます。もとより浅学非才のわたくしでございます。甚だ微力ではございますが、皆様のご教導ご鞭撻をいただき宗務に精励させていただきたく思います。
さてこの機会に「新しい領解文」に関しましてひとこと思うところを述べさせていただきたく存じます。昨今SNSをはじめとするネット社会にフェイクニュースの拡散や誹謗中傷が蔓延する中、未だそのモラルやルールが十分に確立していない現状において、「新しい領解文」をめぐり様々な誤った情報が飛び交い、事態の沈静化を難しいものにしていることは残念に思います。その意味において、正確な情報の共有に資する事を目的として、軽戒3年の処分が確定した前勧学寮頭の審決書の閲覧が、前総局により許可されたことは問題解決に向けたひとつの前進に思います。監正局は宗法第60条に、懲戒処分を行い宗務および事務に関する訴え等を審判して宗門の秩序を保持することを目的に設置されている機関と明定されています。その監正局が審決書の中で勧学寮は宗法上、宗門の教義に関する最高機関と認定されていることに留意する必要があります。その勧学寮の『新しい「領解文」(浄土真宗のみ教えについての消息)』に対する原点は公文書によってあきらかな通り、総長宛令和4年12月19日付同意についてであります。前寮頭のご消息文案同意を再考するように求めた要請書に対しましても、現勧学寮頭は再考は差し控えさせていただきたく存じますと正式に回答されています。ご高承の通り、教義問題の是非につきましては、宗法第70条の規定上、宗会も総局も原則その内容に立ち入ることはできません。もし宗会が勧学寮を差し置いて御消息内容の是非について議論するとしたならば、宗会の多数決でその是非が決められることになります。「新しい領解文」をめぐる混乱を鎮静化するためには、それぞれの守備範囲、役割分担を踏まえて、着地点を見出す必要があると思います。 よって、私たち宗門人は、宗門秩序の保持については監正局の判断に、教義問題の是非については勧学寮の判断に従い、事態の収束に向け相互理解を深めるよう努力すべきと考えます。教義問題に関して総長には宗法上の制約があります。常に適法かつ慎重に対処しなければなりませんが、より宗門内の相互理解が深まるよう、努めて参りたい所存でございます。僧侶門信徒宗会議員の皆様をはじめ、ひろく宗門内の皆様方のご理解ご協力をお願い申し上げ、新総長挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
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総長選の議員報告
Facebookでは参加議員の報告や感想があがっています。
松原功人議員(山口教区・9期)
https://www.facebook.com/kohjin.matsubara
渡邊幸司議員(安芸教区・3期)
https://www.facebook.com/kouji.watanabe.1422
稲城蓮恵議員(大阪教区・1期)
https://www.facebook.com/rene.inagi
木下明水議員(熊本教区・1期)
https://www.facebook.com/meisuiTV
各社メディア
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