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混乱の原因

浄土真宗本願寺派では、宗派の宗務に関する評議や議決を行う機関「宗会」において、僧侶議員47名、門徒議員31名の宗会議員が議会を執り行っています。僧侶議員は現在、ご消息を申達した総責任者、石上智康議員率いる「八五倶楽部」、日谷総務、弘中総務率いる「誓真会」、新しい領解文に疑義を呈する「顕心会」「一信会」の4つの会派に別れています。

総局をはじめ、「八五倶楽部」と「誓真会」の方々に、一部事実誤認しているという情報が入ってきます。

いわく、現在の混乱の原因は、「勧学・司教有志の会」が声明を出したことによって各地に広がっていったという認識です。情報提供をいただいた組報で某議員はこのように記されていました。

「勧学・司教有志の会」から疑義が出されて、その波紋が各地に広がり、長期にわたる宗務の停滞を余儀なくされ、最終的には総長退任となりました。

有志の会が扇動したごとくの表現になっていますが、実際はどうであったのか改めて発布当時の出来事を時系列で確認します。

1/16 ご消息発布
1/17 
[宗派]宗務所の朝礼で唱和がスタート
1/23 
[宗派]伝道院等の教育機関で唱和がスタート
2/01 
[宗派]本願寺新報に勧学寮の解説掲載
2/03 徳永勧学寮頭辞表提出
2/03 法義示談の新領解文に対する質問に相馬勧学が苦言
2/05 新しい領解文を考える会発足
(グループに疑義の声が溢れる)
2/10 [宗派]本願寺新報表紙に新領解文掲載(以降毎号)
2/13 中津聞熏会で新領解文の勉強会(以降、各地で勉強会が開催される)
2/16 
[宗派]宗報に制定の経緯を掲載
2/24 新しい領解文に関するシンポジウムYOUTUBE配信
(以降、関連する動画が複数のチャンネルから多数配信)
3/03 
[宗派]宗会にて唱和推奨の慎重性を求める請願書否決
3/17 
[宗派]中外日報に見開き広告記事掲載
3/21 
[宗派]書籍「新時代の浄土真宗」発刊、以降全寺院へ発送
3/22 考える会よりアンケート募集
3/26 勧学・司教有志の会より声明発表
3/27 
[宗派]常務委員会で宗務の基本方針具体策が可決

ご消息が発布されてから有志の会が声明を発表するまで2ヵ月強。ご覧のようにその間、全国では多くの声があがりました。特に当会で開いたグループでは不安の声で溢れ、同時に各地の自主的な学習会やYouTubeでの配信が動き始めています。火に油を注いだのは、宗会や常務委員会を待たずに宗務所や教育機関で唱和が始まり、紙面への掲載や書籍など次々に具体策が行われたことです。当会では、想像以上に違和感や不安を訴える声が多かったため、その窓口としてアンケートを募集しました。

これは「勧学・司教有志の会」が声明を発表する前にあがった声です。3月22日から26日のたった5日間で640名の声が集まりました。9割以上が違和感を持ち、これまでにあがった様々な声もこの時点でほぼすべて出ています。有志の会は、これらの声の一部を聞いた上で声明の発表に至っています。一方で、新領解文を擁護する議員方は、「ネットの一部の声」と全く聞き入れる姿勢を持ちませんでした。ネットの一部の声は全国の僧侶や門信徒の声でもあり、議員それぞれの教区の声も含みます。民意を中央に届ける役目を担う宗会議員が、なぜ耳を傾ける姿勢を持たないのか理解出来ません。今からでも、ぜひお目を通していただきたいです。

有志の会の声明がとても影響力を持っていることは事実ですが、それは全国の僧侶や門信徒の不安の声を聞いた上で、浄土真宗の安心を示してくださった行動です。いわば、正確な内容で代弁してくださったから、多くの方が賛同したのです。ここに総局側の認識と大きなズレを感じます。本来は宗会議員が自教区の声に耳を傾け、その声を中央にあげて勧学寮に安心を示してもらうのが筋ではないでしょうか。残念ながら今回はそれが完全に失敗しています。中央のごく一部でご消息の制作が進められ、それを担保するがごとくに勧学寮が解説文を出し、総局を筆頭に宗会議員、宗務員はそれに従って進めていく。全国の僧侶や門信徒は、たとえ疑問があっても口にせず、問答無用に尊いものとして受け取るというのがこれまでの本願寺です。

まとめると、混乱が広がった原因は、新領解文自体に問題があることと、認知されないままに誰の声も聞き入れず急転直下で推進がスタートしたからです。宗会や常務委員会を待たずに推進しているということは、民意どころか宗会議員すらないがしろにされています。宗会議員も直前までご消息の内容は知らされず、2年前に出されたご親教をスライドさせた内容に一同驚き、息をつく間もなく宗務所や宗門校で唱和が始まるという驚きの連続でした。遡れば、勧学寮を通さないご親教「私たちのちかい」と「浄土真宗のみ教え」を関連施設で唱和し始めたことが一連の流れに含まれます。それら異例の事態の連続によって各地で動揺が広がり、後に有志の会が声明を出して多くの人が賛同しました。宗会で「唱和推奨の慎重性を求める請願書」が出された頃には慶讃法要を目の前にしてかなり具体策が進行し、すでに止めようがない状況だったため圧倒的多数で否決されたのではないでしょうか。どこに原因があるのかを冷静に考えてください。あきらかに、当時の総局の進め方に問題があります。ここから目を反らしている限り、今回の騒動の収束はないと思います。

また、某議員の言葉にはこのような文章もありました。

本来、この教学問題を扱う機関は勧学寮であり、宗会は新しい「領解文」の是非を議論する場ではありません。

ご消息の申達をしたのは総局であり、申達がなければ「新しい領解文」はありません。申達した責任の中には当然、内容への責任も含むことは三好総務が学習会で公言されています。宗会では教義的な議論をせずとも、「新しい領解文」の発布の経緯に関する不透明性や強引な推進、その後教団内に混乱が起きていることに対して宗務の是非を議論する場所ではないでしょうか。その上で、教義に関しては勧学寮や勧学司教に是非を聞くべきです。発布当時から総局は一貫して「勧学寮が認めた」と言い続けていますが、その勧学寮の5名中2名が自ら寮員を辞めて疑問の声を上げられているのに、書類上だけを見て「認めた」というのは誰も納得できません。教学的な問題に口を挟むというのではなく、その歪な状況を正常化していくのが総局の役割だと思います。そのためには、自ら辞めた寮員の声にも耳を傾けてください。

繰返しになりますが、福井教区の学習会で統合企画室の中井部長が言われたように、「宗会議員は各教区のかけはし、声を中央に届ける人。選挙で選ばれし方は教区の意を表する方が出てくるべき」です。権力のある人の顔色を伺うより先に、全国の僧侶や門信徒の声に耳を傾けていただきたいです。そして、全国各地の僧侶は、地方の声を中央に届けてくれる人を代表に選べるように心がけていくべき問題です。


制定から発布までの強引な進め方についてはこちらのvol.2~vol.5に詳しく書かれていますのでご参照ください。


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