scp紹介第18回 scp-1983

こんにちは、リョータ研究員です。

みなさんもだいぶscpに慣れてきたのではないでしょうか?

ここいらで私のとても好きなscp、2つのうちの1つを紹介しようと思います。


今回は怖くないよ!




scp-1983【先の無い扉】


オブジェクトクラス:Keter


このオブジェクトは大きく2つに分かれている。それぞれscp-1983-1と-2にナンバリングされているので、説明しよう。


scp-1983-1はワイオミング州にある平屋の農家だ。悪夢的カルトによる連続的な儀式殺人の後、1968年に廃屋になっていることが分かっている。
この建物の中は異常空間になっており、内部と外部の寸法が明らかに一致しない。
正面の玄関だけでなく、窓や裏口、壁の裂け目から中に入ることが出来る。
めっちゃ簡単に言うと、ドラえもんの四次元ポケットみたいな建物って感じ。


さて、続いてscp-1983-2についてだ。
こいつらはおおよそ1.8メートルの人型をした真っ黒な生き物だ。
人間を見つけると未知の方法で心臓を引き抜いて、お家(scp-1983-1)に帰っていく。
scp版ゾルディック家ですね。


さて、財団はもちろん内部探査の為に部隊を派遣している。
記録があるので一つ一つ見ていこう。


補遺1: 機動部隊Chi-13の1部隊を怪奇現象の調査のため戸口から内部へと派遣。帰還せず。しかし、彼らが入室するとすぐに正面入口のドアが出現し、彼らを異空間に閉じこめる。SCP-1983-2は出現せず。

1回目の部隊は帰還することができなかった。
財団は直ぐに次の手を打つ


補遺2: 第一急襲部隊の安否を確かめるため第二急襲部隊がSCP-1983-1に侵入。帰還せず。扉は閉まらなかった。SCP-1983-2が現れたためエージェントモーリスが戸口に入り、直後に扉が閉まる。


最初の部隊の安否確認のための部隊も帰還できなかった。
勘のいい諸君らならお気づきだろうが、こいつは中に入ったら出られないタイプのscpだったのだ。
それに気づき始めた財団はまた次の手を打つ。


補遺3: 1989年5月23日、D-14134は、25mのコードで外部と接続された有線式テレビカメラを渡される。彼は可能な限りの内部調査と帰還を命じられる。一度戸口を過ぎるとカメラの映像は遮断。コードはぴんと張り詰めたかと思うと、パチンと音を立て切断される。


入ったら戻って来れないと察した財団はDクラス職員を用意。
有線式のカメラを持たせたが、内部に入ると無駄なようだ。
またしても、彼は帰ってこなかった。
財団はまたしても次の手を考えなければならない。













はずだった…












なんと、Dクラス職員が中に入ってから数時間後、突然scp-1983の異常性が消失


一体中で何が起こったのか?
財団は直ちに内部を調査。
その結果、数人のエージェントの干からびた死体と、文書1983-15が見つかった。


この文書は中に入った部隊の1人が報告書形式で書いた非公式のレポートである。
彼の文章を引用しながら中で何があったのか、一緒に見ていこう。






アイテム番号: わかんねえ

オブジェクトクラス: Keter。かわいそうに。

特別収容プロトコル: アンタは死ぬよ、残念だけど。

これは脅しじゃねえ。オレはエージェントバークレー。オレはこの呪いの中にいて、アンタに話してる、アンタもここに来たのか?アンタ死ぬよ。オレはすでに死んでるだろうけどな。

だから出れねえ。さっさと封印しな。方法は唯一つ。呪われた扉を閉めることだ。その扉を通っても戻れねえからな。まあ、もう試してるか。だけどヤツらは本気になれば外に出られる。そのせいでオレらはこのクソッタレな場所を見つけちまったんだからな。
アンタがもう扉を閉めてくれてるといいんだがな。オレらはもう閉めた。外に出るのは諦めたんだ。まだやってねえなら、まっすぐ戻って扉を閉じな。それが今、アンタがやる唯一つのことだ。なんにせよ、アンタは死ぬ。死ぬ前になんかイイことしときな。」


内部を探索しながら、もう外には出れないことが分かったのだろう、だいぶ諦めた様子が伝わってくる。
それでも続く人のためにこの文書を残そうとするあたりさすが財団のエージェントと言うべきか。


説明: んで、ここから説明だ、もう知ってるかもな。財団はアメリカのど田舎で問題が起きたと知らされる。牛や野生生物が変死したんだと。行方不明者の数は増えるばかり。見つかっても心臓が無くなった死体で見つかる。切ったり、裂かれた痕もなくな。胸の真ん中がカラなんだと。

ヤツらは真っ黒いカスみたいなのが浮かんでるのを見つける。似たようなヤツを見たことがある財団の秀才野郎が、殺し方を発見した。神に祈りを捧げた銀の弾丸をぶち込めばいいってな。文字通りにな。なんでかは知らんが、それでうまく行く。どの神かは関係ねえ、アンタが心を込めたかが重要だ。

オレにはもうできねえがな。巣を見ちまったからな。

とにかく、財団はアレがすべてどこから来んのかわかってる。村の真ん中にある、なんかの家だ。殺人やらカルトやら儀式やらうわ言喚くやらなんやらあって以来そこには何年も空き家だ。肝心なのは、ここの玄関からヤツらが出続けてるってことだ。部隊がそんなか入っていったが誰も帰ってきやしねえ。でも、バケモンも出てこなくなった。正気な奴ならこう言うだろう。十分だ、目を離すな、少しでも動くものがあれば殺せ。だけど、これがこの財団だ。

アンタはどの糞部隊のタフ野郎だ。スクェーレ・ノースか、オレみたいに聖歌隊か。アンタは扉をぶっ壊して中に入る、それだけ。そしたら終わりだ。

居間は最悪だ。そこはオブライエンが捕まった場所だ。捕まるとアイツは突然ぶっ倒れ、ヤツらの一人が心臓を取ったんだよ・・・爪で、だったかな?」


このscpが発見された経緯と、例の化け物について書かれている。
この時には既に黒い化け物を倒す方法は確立されていた。
祈りを込めた銀の弾丸を彼らに放てばいい。
…にしてもらいきなり部隊の1人がハートキャッチ(物理)されてるが


「ヤツらはここでは不明瞭だ。もう気づいてるだろうが。ヤツらは影みたいなもんだ。光から離れろ。バカみたいな話だけど、そうしろ。光の中で、影は強くなる。ヤツらは輪郭を持つ。暗闇ではヤツらは不明瞭になる。ヤツらはアンタにほとんど触れられないし、見ることもできない。オレはヤツらは影を見てるんだと思う。わからねえが。正直なところ、ここじゃ藁にも縋りてえ。

アンタはもう扉で戻ろうとしただろうな、だけどできねえ。それはもっと最悪な場所につながってる。そこにバケモンはいない、だけど…外に出て家から離れたジョーンズは、信じられねえかもしれないが、溶けた。アイツの身体から何かがはじけだして、そして…。アイツが戻って来なかったってことよく覚えておきな。そして、オレらは扉を閉めた。」


黒い化け物は影を目標に襲ってくると推測している。
光から離れろというのも本体は見えなくても影を見つけて襲ってくるからだろう。
さらには、外に出たエージェントの1人は溶けたらしい。
そりゃ、外に出る気も失せるわ。

次はちょっと長いよ


「それで、オレらは家の中を動き始めた。気づくまでオレらは光を点け続けた。3人がそれで殺られたが、おかげで周囲を良く観察することはできた。

ここがどこかって?でかい。ただの農家じゃねえ。ここは…ここはまるでいろいろな場所をかき集めて継ぎ合わせたようなとこだ。アパートみてえなとこもあればショッピングモールみてえなとこもある、信じちゃもらえないかもしれんが、オレの高校のロッカーまでありやがった。タイルも何もかも同じやつだった。

ほかにはなんでできてたと思う…ごみだ。それは黒く、影みたいで、ほとんどが光りに照らされていた。明かりが消えれば、アンタも手を入れられる。止めといたほうがいいがな。それでトレスは消えた。なんかがアイツを捕まえると、引っ張られていった。穴は小さかったが、それでもアイツは引っ張られていった。

だから、光は避けろ、暗闇で足元を見続けろ。

もちろん、脱出はできねえ。オレらもそれは理解した。アンタが見つける扉はこのキチガイ病院の別の部屋に着くか、外に出るかだ。ようやくオレらは死ぬんだとわかった。そう、ここじゃ餓死するか、ヤツらに捕まるかしかねえ。感動的な選択だよなあ、ええ?

ここでアンタがやることは一つだ。オレはやりきれなかったが、アンタはできるかもな。それをしてもアンタが生き残れるとは思わねえ…でも大事なことだ。誰かがやってくんなかったら、ヤツらはいつか外に出てくる。間違いなく。

ここは色々な場所を奪い取ってできたものだ。それで、オレはこう考えてる。ここにはまだ他に扉が存在するに違いないと。オレらは見つけた扉をすべて閉じきった。だけど、また扉が開いたら?そのとき財団がヤツらを見つけられなかったら?クソが、あいつらは扉を閉めることすら知らねえんだ。また誰かこの中に入ればヤツらを止められるってことに気づいてくれるのを願ってる。もっとも、入ったヤツがみんな扉を閉めるくらいには頭が回るって仮定の話だがな。」


探索のために光を出していたため、3人がやられてしまったらしい。
しかし、そのおかげか中はよく見られたようだ。
結果として、内部はただの農家ではない。
ショッピングモールやエージェントの通ってた高校など様々な場所がパッチワークのようにくっついている空間のようだ。

さらにはゴミがあったらしいが、中に手を突っ込むとエージェント・トレスが何かに捕まって引っ張られたらしい。
人が入らないサイズの穴に引っ張られ続けたらどうなるんだろうね?

このscpに入ったが最後、餓死か化け物に心臓を奪われるかしかない。
彼らは探索を進める事に扉を閉めてまわった。

扉を開けるとそこには別の空間が広がっている。
開け続けるといつか化け物は外に出るだろう。
そうならないように、扉を閉めてまわったのだ。


「そうか、オレはこれを止める方法を見つけたと思う。それは巣だ。

オレは一度だけ、2, 3分見ることができた。デニングの心臓を抜き取ったクソ野郎をオレらは追った。オレはこの部屋がすべての中央にあるんだと思う。それは真っ黒で、どんな灯りも吸い込むことができるんだと思う。ランプ、懐中電灯、ロウソクなんかもな。他のヤツらも運んでいったのをオレらは見た。とにかく、中央にたくさんの心臓でできた塊がある。心臓はどれもこれも山に投げ込まれて、引き裂かれてた。ヤツらはデニングの心臓を放り込むと、それは鼓動し、脈打ち、のたうちまわった。それから引き裂かれて、心臓を一つ引きぬいた。それは震えて、成長し、動き始めた。塊がバラバラになっても心臓は鼓動し続けた。オレの胸も疼くのを感じた。

そこは影の集まり。バケモンってことじゃねえ、本当の人間の影の集まりだ。人間から伸びてる影は一つもない。影は心臓から伸びていた。そして、新しい影が現れると同時にバケモンが産まれた。影の奴は心臓から離れようとしていたが、離れられなかった。

オレは逃げた。オレは耐えられなかった、分かるか?オレはこのクソッタレな状況に対処する訓練なんて受けてねえ。オレの後ろでなにか聞こえた。それがオレを呼び止める仲間の声なのか、バケモンがオレらを見つけた音なのかわからないが、オレは皆と別れた。オレは隠れるのにちょうどいいクローゼットを見つけ、それ以来ずっと隠れ続けている。オレはこれをペンライトで書いている。ヤツらが近づく音が聞こえたら、オフにしてる。今の所、このやり方で上手くいっている。」


扉を閉め続けた先に、バークレーさんは見てしまった。


奴らの巣を

エージェント・デニングの心臓を抜き取った化け物を追うことで奴らの巣にたどり着いたのだが、そこでとんでもないものがあった。








そこにあったのは、大量の心臓の山








そこに放り込まれたデニングの心臓から化け物が産まれた。

そこの巣は影の集まり
化け物の事じゃない
本当の人間の影


これは推測だが、化け物は心臓から黒い身体のコピーを作り出せるのではないのだろうか。

持ち主の魂を遺して

心臓から抜け出したくても抜けられない影というのはその心臓の持ち主の魂なのでは無いかと思う。

そして、バークレーさんはそこから逃げ出した
無理もない

クローゼットに隠れながらこの文書を書いている。


「オレはここから動けない。オレの銃には弾が少し残ってるが、意味なんてねえ。もう祈れない。巣を見ちまった。だけど、アンタ、これをアンタが見つけたら、オレに代わって、やり遂げてくれ。多分、アンタはオレよりも強い。決心がついたら、巣に行ってぶち壊してくれ。すべての心臓をぶっ壊すんだ。そしたら、ヤツらを殺せるかもしれねぇ。これがオレが考えられる唯一の方法だ。アンタは死ぬだろう、でも何やってもここじゃ死ぬんだ。だからなんの問題もないだろ?

オレ、オレはこれから居間へ向かう。アンタがこれを見つけてくれることを祈って。もちろん、オレの心臓はヤツらに使わせない。

Good luck. Morituri te salutant.
(幸運を。死にゆく者より敬礼を。)」


凄まじい光景を見てしまったバークレーさんはもう祈れない。

しかし、託すことはできる。

彼は持ちうる情報を文書に残し、奴らが外に出ないように心臓の山をぶっ壊す事を後に続く人に託して自ら命を絶ったのだ。




結果はもう知るとおりである。


3回目に派遣されたDクラスはこの文書を見たのだろう。
そして、見事にやり遂げた。

死にゆくものからの思いを受け継ぎ、死にゆく運命にありながらも、祈ることを忘れずにシルバーバレットを撃ち抜いたのだろう。


そんなDクラス職員に財団で2人目の勲章が送られた。

財団ではDクラスは実験に使われる駒であり、悪く言えば殉職は当たり前みたいな所はある。

そんなDクラスに勲章が与えられるのはとても異例なことなのだ。




勇気を持って命を捧げた

エージェント・バークレーと
Dクラス・D-14134に


敬礼を








scp-1983

オブジェクトクラス:Neutralized(無力化)










CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1983 - Doorway to Nowhere
by DrEverettMann
http://www.scp-wiki.net/scp-1983
http://ja.scp-wiki.net/scp-1983(翻訳)