scp紹介第20回scp-3519
scp紹介のお時間です。
今回はキリのいい20回で何を書こうか迷ったのですが、このキリ番記念は次回に回します。
なぜかというと、次回紹介するとても熱いストーリーの中にこのscpが出てくるので今回は先にこちらを紹介します。
それでは行きましょう。
scp-3519【静かなる日々】
オブジェクトクラス:Keter
(後にNeutralized)
さて、こいつの特別収容プロトコルなのだが…
そんなものないんだよ。
こいつの収容は必要ないと報告書にしっかり書いてある。
引用はこちら
「SCP-3519への感受性を有する人物が生き残っていないことから、これ以上の収容は必要とされません。感染は無力化したと見做されます。世界的メディアのかなりの割合が感染を媒介すると思われ、その収容は現時点の財団に可能な域を越えています。しかしながら、感染した記録媒体の ― 全てではないにせよ ― 大部分は更なる伝達が起こる前に劣化してゆくことが予想されます。」
まぁこの内容で察するとは思うが、こいつは感染するタイプだ。
それも人間の思考を汚染していくタイプ。
こういうのを財団は「ミーム汚染」 っていうから覚えておくように。(ミーム感染とも言う)
ちなみにミーム汚染系のscpを収容できない訳では無い。
財団はあの手この手で何とか収容してきた。(中には収容できないものもあるが)
じゃあなんで収容しないのかって?
この一文に尽きるよね。
「SCP-3519への感受性を有する人物が生き残っていないことから、これ以上の収容は必要とされません。」
感染した人みんな死んだんだって
さて、こういったミーム汚染に対して財団は対抗策を打ち立てる、それが確立されたら次の順番で配布しろとのことだ。
1.MTF U-4の隊員
2.重要ミーム学部門の職員
3.O5評議会
4.世界オカルト連合
5.世界保健機関(WHO)
6.残りの重要な財団職員
7.一般人口
ま、世界を救える順にって感じだね。
オカルト連合についてはまた今度説明しよう。
さて、そろそろ本題に入ろうか。
このscpの特性は?
説明: SCP-3519は印刷物・視覚メディア・聴覚メディアにおける複数の媒介物によって拡散するミーム感染です。このミーム感染は、2019年3月5日に世界の終わりが来るということ、そしてその事象が発生する前に自殺するのが望ましいということへの強い確信から成っています。
SCP-3519は、差し迫った終末に関する信念を報じているのであれば、メディアと口伝えのどちらによっても伝達されます。感染は、証拠が欠如しているにも拘らず、当該ミームが積極的に受け入れられることを特徴としています。予測される出来事の具体的詳細は幅広く分かれており、宗教における救世主的な人物の出現、破壊的結果を及ぼす天文学的事象、自然環境の壊滅、技術的特異点、現実不全イベントなどの発生に対する信念が挙げられています。
特筆すべきことに、これらの出来事はどれ一つとして問題の日時に予想されるKクラスシナリオと関連しておらず、当日のKクラス発生可能性についての財団の評価はSCP-3519の報告後も0.015%という僅かな数値です。
初期感染に続き、影響者たちは恍惚として天啓を受けたと主張する、千年王国説を信じ始める、自殺念慮を見せるといった傾向を示し始めます。影響者が感染した様々なSCP-3519信念の文脈上では、超越のための前提条件、もしくは終末事象を乗り切るために好ましい手段として自己安楽死が合理化されます。
自殺は相当数の症例において初期感染の数週間後に発生します。現時点では的確なデータの収集が困難であることから、正確な統計情報は入手できません。しかしながら、SCP-3519の信念を全体的に採用してから40日以上生存している既知の感染者は存在しません。
ちょっと長いので掻い摘んで説明しよう。
まずこのscpは先程言った通りミーム感染系のオブジェクトだ、こいつに感染すると2019年3月5日に世界が滅亡するから自殺しようぜって思うようになってしまうscpなのだ。
みんなも聞いたことあるでしょ?
ノストラダムスの大予言みたいなあんな感じ
ん?自殺は大袈裟?ただの終末論?
考えてみてよ、こいつは、scpなんだぜ。
ミーム汚染・感染ってのは思ったよりも厄介なものなんだ。
まず、感染したかなんて自覚はない。(ある時もある)
それに感染したところでそれによる思考(今回だったら終末論+自殺欲)を正しいと信じて疑わないんだもん。
このscpの驚異はまだある、それは脅威の拡散力だ。
それは、テレビやラジオなどのメディアだけでなく、口頭の会話、何気ないメモ、動画などの荒らしコメですら感染してしまう。
情報の出処なんてどうでもいい。
「2019年3月5日に世界が終わる」と知った時点で感染してしまうのだ。
ちなみにだが殺傷力も高い
これに感染すると40日以内に死ぬ
とまぁこのscpの説明は以上だ、とってもシンプルでしょ?
ここからは、世界がどういうふうに滅亡していったかのタイムラインが残っているので解説していこう。
18/12/29、CNNの報道番組、“アンダーソン・クーパー360°”1より
会話の中身は割愛するが、事の発端はこの報道から始まった。
報道されたのはアメリカである。
(T-65) 18/12/30: インドのカリャンコットで発生した300人以上の集団自殺がSCP-3519と関連付けられる。
たった1日でインドまで影響が出ている。
(T-62) 19/01/02: 関連する自殺は17ヶ国で2600人以上に拡散している。感染がSCP-3519に指定される。ワタナベ・ノリ博士が主任研究員に着任。
もうこんなにも犠牲者が出ている。
影響力の強さが尋常じゃない。
(T-61) 19/01/03: SCP-3519の収容プロトコル確立。
財団もただ指をくわえて見ているだけではない。早くも次のような収容プロトコルを確立させた。
「機動部隊プサイ-10(“マズローの動機付け”)に、SCP-3519に感染した人口の特定任務が割り当てられます。特定された人口は機動部隊イータ-10(“シー・ノー・イーヴル”)および機動部隊イータ-11(“獰猛な獣たち”)によって確保されます。前記3つの機動部隊の全てにSCP-3519媒介メディアの確保・抑制任務が割り当てられます。」
このようなメディアを抑えろという感じだったが時既に遅しである。
(T-53) 19/01/11: MTF η-10の日報がSCP-3519の兆候を示す。機動部隊司令部はMTF η-10の隊員らの任務を解き、Eクラス隔離下に置くよう指示した。
(T-49) 19/01/15: リチャーズ司令官(MTF η-11所属)より、SCP-3519の幾何学的拡散に直面している検疫の努力が完全な失敗に終わったという報告が入る。
財団職員の一部が感染してしまったらしい、更に検疫も失敗に終わった。
(T-47) 19/01/17: SCP-3519収容プロトコル改正。
ついに収容プロトコルの改正、最初に載せたミームを摂取する順番がここでのプロトコルに当たる。まぁ、開発された場合は、なんですけどね。
(T-45) 19/01/19: 自殺率は世界人口のおよそ1%まで増加している。この危機に対する国際的認識は、SCP-3519の妥当性に関する信念の広範な拡散によって妨げられている。
(T-36) 19/01/28: 自殺率は約30%増加。現在の死亡統計は検証が不可能。主流派キリスト教徒、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、仏教徒の間において亜種ミームの存在が確認される。
たった9日で自殺率が29%上昇、最初の報道から1ヶ月で全世界のおよそ3割の人口が自殺により失われた。
(T-34) 19/01/30: 収容プロトコル改正。
2度目の改定
機動部隊プサイ-10(“マズローの動機付け”)に、SCP-3519感染の拡散マッピング任務が割り当てられます。機動部隊ウプシロン-4(“糖衣錠”)に、以下の配布優先度を持つSCP-3519対抗ミームの配備任務が割り当てられます。
1.MTF U-4の隊員
2.残りの重要な財団職員
3.一般人口
いや、リストが減ってるやんけ…
O5も世界オカルト連合もWHOも消滅した。
(T-27) 19/02/06: 自殺による死者は最低でも2億5千万人であり、さらに1億人が疾病や必須サービスの喪失で死亡または瀕死と推定される。財団サイトは、世界的に職員数が10%低下したと報告している。
自殺だけでなく、大量に人が死んだことによるインフラの停止で死亡する人も増えている。
(T-27) 19/02/06: 収容プロトコル改正。
機動部隊ウプシロン-4(“糖衣錠”)に、SCP-3519対抗ミームの継続的な緊急配備任務が割り当てられます。グリーフ・カウンセリングおよび自殺の予防を、全ての生き残っている財団職員が利用できる状態にしなければいけません。
ついに財団は一般人を救う余裕も無くなってしまった。
(T-8) 19/02/25: 収容プロトコル改正。
またしても改定。内容はこちら。
グリーフ・カウンセリングおよび自殺の予防を、全ての生き残っている財団職員が利用できる状態にしなければいけません。自殺用カプセルを要請に応じて利用可能にします。可能であれば、全ての生存しているKeterクラス異常存在の無力化命令が実行に移されます。財団施設は、所属スタッフ数が30%を切った時点で、もしくは施設管理官の裁量で、施設放棄プロトコルに個々に従ってください。
財団内でも自殺の準備が進んでいる。
財団の方針としては明らかに矛盾しているのだ。つまり、財団内でも感染が進んでいる。
ちなみにさっきの改定との間に核戦争が起きたり、財団の博士が自殺したりしている。
(T-5) 19/02/28: 次席研究員のローリー・ジョーンズ博士がSCP-3519プロジェクト主任に昇進。
(T-4) 19/03/01: プロトコル ローズ・アラバスター3制定 — 次席研究員ローリー・ジョーンズ博士、O5-6に昇進。
次席研究員だったジョーンズ博士が主任になってからたった1日でO5-6に昇格している。
財団上層部ですら感染から逃れられずに自殺してしまったということだろう。
(T-1) 19/03/04: 収容プロトコル改正。
運命の日まであと1日、ここで最後のプロトコル改定が行われた。
内容は………1番最初に載せた収容プロトコルの通りだ。もう感染した人はみんな自殺したのだろう。
そして、来たる3月5日
(T=0) 19/03/05:
(T+1) 19/03/06: いい天気だ。
運命の日の次の日、たった一つのメッセージがタイムラインに残されている。
それは終末を生き延びた人のメッセージ。
このscpは2019年3月5日に世界が滅亡するから自殺しようというミーム汚染のscpだ。
つまり、3/5を生き延びて次の日を迎えられれば「世界滅亡なんてなかったんだ」という話になる。
異常性は無力化されるのだ。
しかし、もう人類の大半は自殺してしまっている。
このメッセージを残した博士は自分の命が尽きるまで生きていくのだろう。
この静かなる日々を
CC BY-SA 3.0に基づく表示
SCP-3519 - These Quiet Days
by sirpudding
http://www.scp-wiki.net/scp-3519
http://ja.scp-wiki.net/scp-3519