映画「教誨師」
半年前に読んだときに、映画化されたら必ず観ると決めていた教誨師を、観た。
ストーリーは読んだときにノートにも書いているので、そちらをご参照頂ければと思うのだが、記憶に残った部分だけ書き留めたい。
(因みに、原作の書籍はノンフィクションであるが、映画では登場人物も少しだけ違っている。)
高宮という、IQの高い死刑囚と対峙したシーンで、大杉漣さん演じる教誨師の佐伯保が答えに窮する場面だ。
高宮は、巧みな話の展開で佐伯を息詰まらせる。
命が等しく守られるべき大切なものならば、何故牛や豚は屠殺されて良いのか。イルカはダメなのか。
佐伯が、「イルカは知能が高いと聞きますし...」
と答えると、高宮は得意顔で
「牧師さんも同じ考えじゃないですか。
だから僕は知能の低い人間を殺したんですよ」
と言う。
佐伯が、「人間は他の動物とは違う。」と言えば、高宮は「だったら死刑で人を殺すのはどうなんだ」と。
死刑囚と面会し、キリスト教を説く特権を与えられた特別な立場の人間であるにも関わらず、根本的に重要な問題に哲学的な正解を歯切れよく言うことのできない、無力感のようなものを感じた。