『Room Music』から『Oxymoron 2』への過程 ~吉本章紘 Online Interview~
サックス奏者の吉本章紘さんは自身のリーダー活動のみならず、大西順子さんのセクステットや、小林桂さんとの共演、岩見継吾さん(Bass)、林頼我さん(Drums)とのオルタナティブジャズトリオ「深海魚」での活動なども活発に行い、様々な表現に挑戦されています。
・吉本章紘さんホームページ
吉本さんは新型コロナウィルスの外出自粛期間中に、御自宅で録音したサックスソロ演奏音源を『Room Music』と題して音楽配信サービス「Bandcamp」に公開。
また、ベーシストの須川崇志さんとのデュオで2017年に発表した『Oxymoron』の続編、『Oxymoron 2』を同じく「Bandcamp」に発表、発売。
春頃から本格化してきたコロナ禍の最中、
精力的に自己の音楽を表現し続けた吉本さんに
先述の作品群についての事を中心に、
オンラインインタビューを敢行しました。
下記よりインタビューとなりますので
ご高覧いただけたら幸いです。
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1.コロナ禍で生まれた『Room Music』
-まずはこの質問をしないことには今回は始まらないかなと思います。新型コロナウィルスは、吉本さんに、どのような影響がありましたか。
まず2ヶ⽉ほどライブはお休みになりました。
それと今回のことで、ライブハウスにおけるソーシャルディスタンスの課題をはじめ、今後のライブ活動の展開や、⾳楽の発信⽅法をじっくり考えていく必要があると感じています。
動画配信も多くなりましたが、無観客の中でのライブ配信というのは、自分の中ではまだしっくりこないというのが正直な気持ちですね。
やっぱり実際に目前でお客様に鑑賞されている、
あの空気感の中でのリアクションも含めて演奏が形成されていくので。
-ライブ⾃粛期間が約2ヶ⽉ほど続いたわけですが、その間の創作活動はどのような事をされていましたか
他⼈と⼀緒に演奏できない時期を、逆に自分の⾳楽に有効活⽤できないかと考えました。
もちろん個⼈練習に時間を割きましたし、
スタンダードナンバーに改めて深く取り組み、
じっくりと練習する時間にもなりました。
しかし、やはり“アンサンブル”をやらないとダメだと感じて、“部屋の空間”、厳密には部屋の鳴りとセッションしようと考えました(笑)。
-部屋の鳴り!?ですか(笑)。確かに自粛期間中は自宅で演奏することにはなりますが、「部屋」という空間とご自身の音との関係を考えての事だったとは…
私の場合、⼀⼈で演奏しようとすると、どうしても⾳を埋めてしまうような演奏になってしまって、バランスが悪くなってしまうんですよ。かといって、
多重録音しても、それは自分自身が作ったマイナスワン音源に合わせて演奏している事になるので、
自分はあまりそこに意味を見出せなくて。
そこで、部屋に流れる空気感や時間を感じながら演奏してみたら、今までにないアンサンブルの感覚を掴めるのではないかと思って。
そういった試みを「Room Music」として録音し、「Bandcamp」に公開しました。
・『Room Music』
-この音源はある程度長く録って、そこから編集されているのですか?
いえ、録音したものを編集せず、ほぼそのまま公開していますね。
・『Room Music 2』
-今回の自粛期間で思ったこと、考えたこと、
沢⼭あると思いますが、特に感じた事は何でしょうか
やっぱり⾳楽で⾷べていくのは難しい!(笑)。
そりゃそうなんですが、あとライブに復帰した後に感じた事も強く印象に残ってますね。
最初のうちは、久々に他人とセッションするわけですから、すごい緊張感があって、演奏が噛み合わない事がありました。
みんなそれぞれ自粛期間にたっぷり練習しているから、スキルは保たれているどころか、かなり良い状態なんですけど、アンサンブルは久しぶりなので、少しよそよそしい雰囲気でした(笑)。
今はやっと程良い緊張感になってきて、アンサンブルもうまくできるようになってきました。
-吉本さんは⼀定の形で演奏するというより、様々なフォーマットで演奏される事が多いですが、演奏するにあたって⼼がけていることはありますか
活動どれもがとても個性的なので、どのような切り替え、またどんな⼼境で演奏しているのかお聞かせいただけないでしょうか
⾃分のリーダー作品は、少しでも⾃分のエッセンスを⼊れていきたいと思っています。あまり世の中に出回ってないレシピみたいなもので、それを調理していくことに創造⼒を掻き⽴てられますしね。
2.『Oxymoron2』について
-須川崇志さん(Bass)とのデュオ、
『Oxymoron』を始めたキッカケを教えてください
カルテット編成で須川君とはよく演奏していたので、他に何か新しい事をやりたくてデュオに誘いました。⾃分たちでメロディー、ハーモニー、グルーヴ、スペースを⾃由に、好きなタイミングで作れるという点で、このデュオはとても⾯⽩いと感じています。
-その他に⾯⽩いと思う部分は?
私の創造⼒を掻き立てられる所でしょうか。
特に須川くんの演奏には、
とてつもないエネルギーを感じます。
そして、様々な音楽的印象を与えてくれます。
自分は自分の思う演奏を力強くやらないと、
やられてしまうような感じです。
-このOxymoronの活動において、 吉本さんに影響を与えたアーティスト、または音楽はありますか
たくさんありますが、⾝近なミュージシャンや共演者から⼀番影響を受けていると思います。
・『Oxymoron』(2017年)
-『Oxymoron 2』のリリースは今回のコロナでの⾃粛期間の間にリリースしようと 思いましたか、それとも以前からこの時期にリリースする予定がありましたか
今回の作品は、このコロナ禍の時期にリリースしようと決めました。アルバムの収益に関しては、経費のあまりかからない「Bandcamp」を利用することで、レコーディングを行ったお店(下北沢APPOLO)やミュージシャンに、少しでも足しになればと思っています。
・下北沢 APOLLOライブスケジュール
-今作のコンセプトを教えてください
ライブで録音した演奏をピックアップしたという事⾃体は前作「Oxymoron」と変わりませんが、
今回の選曲は、より展開が緩やかで、⾃宅で⼀⼈で
ゆっくり聴いていただけることを⼼がけました。
前作は曲時間も短め、激しい演奏も随所にありましたから、そういう曲はできるだけ選んでいません。
演奏⾃体は録り貯めていたものなので、
新曲がどうこうという事ではなく、
今回の作品は、“この時期に選曲した”という部分に
大きな意味があると思っています。
その時期、状況ならではの心象で選曲しているので、それがよく現れているのではないでしょうか。
・『Oxymoron2』アルバムダイジェスト
新たに2枚目を出すにあたって、APOLLOさんで新録する事も考えたのですが、先ほど話したように、久々に人と演奏したとして、うまくいく自信がなかったですし、無観客の中での即興より、やっぱりお客様がいて、そのリアクションが感じられる音源の方がいいなというのもあって。
-2015年から2〜3年かけて録⾳したテイクから選んで収録したとの事ですが、 採⽤したテイクの判断基準は。
即興演奏なので、お客さんと演奏者の気持ちが乗ってきている曲を、なるべく選曲しました。何度も言いますが、やっぱり演奏がかなり変わってきますよ、お客様の有無というのは。
-今回のアルバムから、あえて1曲選ぶなら、どの曲を選びますか
3曲目の“city ”かなと思います。曲の分数が⻑いので即興の醍醐味が特にあるように思います。
『Oxymoron』を今後どのように展開していきたいですか
現在は、このデュオでは定期的にやっていないので、またお互いの気が向いたら(笑)、やりたいと思っています。久々にデュオで演奏した時の、以前からの変化がまた楽しみですね。
・『Oxymoron2』
『Oxymoron2』購入はこちらから↓
http://oxymoronduo.bandcamp.com/album/oxymoron2
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インタビューは以上です。
吉本さん、ご協力ありがとうございました。
今回のお話を踏まえて、吉本さんと須川さんだからこその即興演奏の醍醐味を楽しめる『Oxymoron2』(もちろん前作も)や、吉本さんのソロ演奏集『Room Music』を楽しんでいただけたら幸いです。
吉本さんは昨年、デジタル配信限定アルバム『Nostalgic Farm』のリリースや、2020年2月に新宿ピットインで開催された、クラブイベントとジャズライブのコラボレーション企画、「Namboku Records presents Lofi impro.」にも出演するなど、近年ますます幅広く活動をされていますので、
その動向、今後もお見逃しなく。
記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もしよろしければサポートお願いします。取材活動費やイベント運営費用などに活用させていただきます。何卒よろしくお願い致します。