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副業にあたって役立つ裁判例⑥ マンナ運輸事件(東京地裁H24.7.13判決)

これまでの裁判例①-⑤は、副業がばれて解雇されたケースでした。

今回のマンナ運輸事件は違います。

副業をちゃんとしようとしたものの、不許可になり続けた従業員が、それじゃあ困るといって稼げたはずのお金を賠償しろ、と求めた事案です。

この事件では、給与の減額が大事な背景としてあります。仕事時間が減り、給料も減る。しかし、支出の削減には限界がある。そうすると副業で稼がないといけない。こういったことは今後も増えていくでしょう。

裁判をした結果、4回の許可申請のうち、最後の2回については、違法と評価されました。

さて、じゃあいくらの損害賠償が認められたのか、気になると思います。僕は気になりました。

まず、いくら請求していたか、です。

請求していた金額は全部で200万円。そのうち大体半分が稼げたはずのお金でもう半分が精神的苦痛の慰謝料。稼げたはずのお金をどう主張したかというと過去にしていたアルバイトの8か月分の実績(月額約6万円)。

この稼げたはずのお金について、判決は、

原告は,まず,就労できなかったことによって得られなかった利益を主張し,その利益として,平成21年5月から同年10月までD社で行っていたアルバイト就労における収入相当額の損害を主張する。
 しかしながら,原告がD社で行っていたアルバイト就労は,原告の第1申請と同内容のものであり,上記2(2)イ(ア)のとおり不許可とするのが合理的というべきものであったから,これによる収入相当額の損害があったということはできない(なお,原告の第3申請,第4申請を前提とした損害額の主張を原告はしておらず,この点は,次の慰謝料算定の一要素として考慮することとする。)。

損害賠償認めず!認めたとしても、申請③と④は、週1で3,4時間(しかも申請が遅い)ですからそこまでの金額にはならないでしょう。

ただし、判決では、精神的苦痛については、損害賠償をすべきと認めました。

原告は,次に,被告による不合理かつ執拗なアルバイト就労の不許可がされたことにより,本件訴訟における追加的な主張立証を含めて対応を余儀なくされ,生活の足しとすべき収入が得られなかったなどの精神的苦痛を被ったことが認められる。
 そして,その苦痛に対する慰謝料額は,被告の対応の不合理性の程度,許可されるべきアルバイト就労によって得られた収入の程度,それが原告の収入に占める割合,原告が被告の不合理性の主張立証に要した労力等をはじめとする諸事情を総合的に考慮して,30万円とするのが相当である。

30万円。

ほぼ100%弁護士費用のほうが高いでしょう。

一方で会社は、こうして社名付で裁判例になってしまいます。完全にlose-loseですね。もちろん、他の従業員にとってはありがたいでしょうし、意味がないとは全く思えませんが、このあたりが労働裁判の難しさでしょう。

なお、本件は、会社が不当労働行為を別件でやっちゃってたりしますので、そこが判決内容に影響もしていると思います。


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