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ベンチャー同士の経営統合物語  ~第一章 経営統合するまで~

オルタナティブデータプロバイダーの草分け

事業を開始してかれこれ5年くらい経った。知ってる人もいるかもしれないが、Finatextグループのカンパニーにオルタナティブデータの基盤とサービスを提供しているナウキャスト (Nowcast Inc.)という会社があるのだが、金融機関へのデータサービスの提供 (売り上げの70%が日本以外)、購買データを起点とする事業会社向けのデータ利活用のソリューション、そして日銀の金融政策決定会合や内閣府の月例経済報告にも引用される「日経CPINow」や「JCB消費NOW」などといったリアルタイムな経済指標を提供している。自分でいうのもなんだが、2020年7月時点で日本ナンバーワンのオルタナティブデータカンパニーの自信がある。

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史上初の東大経済学部発の技術ベンチャー

ナウキャストの起源をたどると、僕の母校のしかも出身学部でもある経済学部の教授の渡辺努先生の研究室で立ち上げたプロジェクトにさかのぼる。失われた20年ということで、長い間デフレが続いている日本経済の原因を究明するべく立ち上げられた壮大なプロジェクト「長期デフレの解明プロジェクト」(http://www.price.e.u-tokyo.ac.jp/)だ。このプロジェクトの中で、中央銀行が的確なデータを用いることができなかったこと、そのために正しい政策決定ができていないことがデフレの要因ではないか、という仮説が挙げられた。その結果、政策決定の羅針盤として2013年5月にPOSデータを用いて、日次で物価指数を配信しようという画期的なプロジェクトがはじまり、これが「東大日次物価指数」として有名になる。2013年4月にいわゆる異次元緩和が始まったという当時の時勢も加わり、この指数は短期間で爆発的な知名度を誇ることになった。これを事業化させようということで、東大からスピンアウトしてできたおそらく歴史上初の正真正銘の東大経済学部発ベンチャーとしてナウキャストは産声をあげたのだ。投資家は日本経済新聞、東大エッジキャピタル(UTEC)などのこれ以上ない面々で、意気揚々と2015年にスタートを切った。

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(創業時のナウキャストの写真 - 左から二番目は元日銀総裁の福井俊彦さん、真ん中は元日銀審議委員の須田美矢子さん) 

想定より圧倒的に難易度の高かったインデックスビジネス

2016年当時のナウキャストは日経CPINowというインデックスをサブスクで提供するという一本足打法でビジネスをやっていたのだがこれがなかなか伸び悩み、次の展開を打ち出せずにいた。というのも日経225やS&Pから始まり、MSCIやiTraxxなどの成功したインデックスを見ていると、これを配信しているだけで儲かるやんと思われるかもしれないが、インデックスビジネスは1つ成功したら9999個失敗するくらいむちゃくちゃ狭き門なのだ。それは東大の時代に爆裂に有名になったナウキャストでも例外ではなかった。事業をスケールして黒字化する糸口をなかなかつかめずにいたのだ。ちなみに、今オルタナティブデータは一種のバズワード化しているが、このデータビジネスのトレンドにのって会社や新規事業を立ち上げる人等は、綿密に収益モデルとプロダクトの独自性をかなり考慮しておいた方がいいと思う。考えているより100倍難易度が高いのは断言できる。

東大発ベンチャー同士が東大VCを通して経営統合へ

同時期に金融機関のフロントソリューションを中心に展開していたFinatextは、より事業をスケールするためにデータ分野への参入を考えていた。同じ東大経済という出自もあり、ナウキャストに注目した僕は彼らの投資家のUTECのパートナーの坂本氏を通じて提携を持ちかけた。少しずつナウキャストの現状を知った僕は、ただの提携ではなく同じグループになることでもっと本格的な連携をしようという考えを持った。ものすごく強いブランドと技術力を持っていたナウキャストがあまりにももったいなく見えたからだ。ナウキャストの創業者である渡辺努先生が同じグループになることに賛同してくれ、日経新聞社も説得できたおかげで、ベンチャー同士の株式交換というものすごく珍しい手法を用いてナウキャストをFinatextの100%子会社にすることで経営統合を果たしたのだ。

あの頃を振り返ると、決して今のようなオルタナティブデータの全盛期がくるなんて予見できてなんていなかったし、ものすごく詳細なシナジーを生み出せるというクリアな打算があったわけではなかった。ただ、これから金融サービスを提供していく上で間違いなくデータが差別化要素になっていくことはそれなりに確信があったのと、経営統合は統合した後がとんでもなく大変なわけだが30歳になりたての自分にはそれが貴重な糧になると思い、ここまで突き進んできた。

これが実際、経営統合が成立したときに渡辺努先生と撮った写真だ。どうでもいい話だが、この時は自分の体重も100kg超えをしていた。(さらにどうでもいいのだが、その後ライザップをはじめ、3ヶ月で20kgを減量した)

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晴れて、2016年8月に経営統合が成立して僕が代表取締役に就任。と同時に、自分の想像をはるかにはるかにはるかに!!!上回る大変な日常がはじまることになった (第二章に続く) 。

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