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【COP28現地リポート】日本人にとって気候変動とは何か?
2023年11月30日から12月12日にかけてアラブ首長国連邦ドバイにて行われた気候変動枠組条約第28回締約国会議(以下COP28)が閉幕しました。
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https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/pagew_000001_00076.html
今回のCOP28では、
初日で損失と損害に対応するための新たな資金措置の運用化に関する決定が採択され、
また最終的に「エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却」が夜通し議論延長の末、合意されました。
しかし、最終日前日には今回のCOPの主眼であった、「エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却」において、
会議開始当初から「化石燃料のフェーズ・アウト(段階的な完全廃止)」という強い文言が削除されるなど、開催中には化石燃料廃止を巡り、途上国、先進国、産油国など国家間で激しい攻防がありました。
また最終の合意文書も、確かに大きな転換点になるかもしれませんが、多くの国が望んでいたものよりはるかに弱い表現であるとされています。
進展もあった一方、すべての国にとって期待通りになったとはいえないCOPだったかと思います。
COP28に関してはこちらの記事にまとめられています。
https://newspicks.com/news/9356631?comment=true&utm_medium=urlshare&utm_source=newspicks&invoker=np_urlshare_uid8724206&utm_campaign=np_urlshare
このnoteでは、COP28に関する主な合意に関してではなく、
鳥取という日本の人口最小の県から派遣された大学生の横山椋大が、
COP28が開催されたドバイ現地での取材を通して感じた世界の潮流を少し違った角度からリポートします。
そして今我々日本人がすべきこと、
何が必要なのかを最後に考察してみたいと思います。
少々長いですが、お付き合いください。
はじめに
あらためまして、
今回こちらのnoteで現地のリポートをするのは、公立鳥取環境大学横山椋大です。
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公立鳥取環境大学環境学部4年生。NewsPicks第4期Student Picker。
今回、令和5年度トットリボーン!使節団COP28派遣事業でアラブ首長国連邦で開催されたCOP28に学生リーダーとして参加。来春からは京都大学地球環境学堂にて環境学を専攻継続予定。将来は環境問題を専門とするジャーナリストを志ざし、日々勉強中。
人口最小の鳥取県は、国が2030年までに2013年度比の温室効果ガス削減率46%減を掲げる中、60%減を目標として定めており、
国の支援も活用しながら、地産地消の再生可能エネルギーの導入推進や電気自動車及び健康省エネ住宅の普及促進など、気候変動対策に野心的な取り組みを行なっています。
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また、県内の米子市、境港市、鳥取市は、環境省から脱炭素先行地域に選定されています。
https://www.pref.tottori.lg.jp/datsutanso/
今回、脱炭素社会実現に向けて中心的役割を果たす若者の人材育成の一環として、
鳥取県は脱炭素社会推進課の令和5年度トットリボーン!使節団COP28派遣事業が実施されました。
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私はこの事業において学生リーダーとしてCOP28現地に派遣され、現地では国際会議の視察や関連イベント等への参加、また多くの人との交流やインタビューを通じて世界の脱炭素の潮流を感じてきました。
COP28現地の様子
今回のCOP28は中東の国、アラブ首長国連邦(以下UAE)で11月30日から12月12日に開催されました。世界第7位の石油生産量を誇る産油国で開かれるということもあり、COP開幕前から多くの注目と批判を浴びていました。
実際、今回のCOP28をUAEは天然ガスの交渉の場に使うと企んでいるのではないか、また開催期間中には現地でこれまでのCOPで最多となる2400人もの化石燃料の廃止に反対活動を行うロビイストが紛れ込んでいるとの報道がありました。
しかし、今回のCOP28では、
MOBILIZE FOR THE MOST INCLUSIVE COP
という文言が4つの重視すべきパラダイムシフトの中に記述されており、先進国、途上国などの国、若者、少数民族含め、最も包括的なCOPにするとの目標が打ち出されていました。
これは産油国アラブ首長国連邦がCOPの議長国が打ち出したものではありますが、
産油国も協働で脱炭素社会実現に向けて共に歩みを進めていくということは、
SDGsの「誰一人取り残さない」という原則に合致します。
そのため、今回のCOPはいい意味でも悪い意味でも注目度が高かったCOPだといえると思います。
現地の様子はというと、街のあらゆるところにCOPのPRがなされており、
国をあげてCOPを開催しているのだということが伝わってきました。
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また今回COP会場のExpo City Dubai は4.38平方キロメートル、東京ディズニーランド約8.5個分の面積があり、97000人を超える参加者が登録されていたといいます(実際には10万人を超えていたとも)。
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会場は政治交渉が行われる国連管理エリアとブルーゾーンと開催国政府が管理するグリーンゾーンがあり、ブルーゾーンだけでも、100を超える建物と各国とテーマに沿ったパビリオンがあり、到底全部回ることは不可能でした。(笑)
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世界では何が起きているのか
2023年は世界各地でこれまで経験したことのない猛暑に襲われ、観測史上最も暑い夏と言われました。
猛暑だけでなく、日本では大型台風といった気象現象、世界では大雨、大洪水、干ばつ、山火事等の異常気象が多発しました。
気候変動の影響について、COP現地で世界各国から集まる方々と交流した時に
世界的な合意形成をつくっていくかはやはり非常に難しいということを痛感しました。
それは「気候変動」といった一言でもその国のコンテクストや文化、また直面している現象によって気候変動の認識、課題は違うからです。
現地で世界の方々と交流したなかから
いくつか事例を紹介します。
太平洋ミクロネシアのパラオでは、海面上昇によっていくつかの島が沈没し始めており、自分たちの誇りの島々や踊りや歌などの文化をどう守っていくか、次世代を担う子どもたちにどう継承していくかというストーリーテリング(語りでの伝承)の重要性を説いていました。
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また同じ島嶼国のキリバスでは、英語でいうIslandという意味を持つ現地語がそのままidentity という意味を指すといい、
島を守っていくことはそのまま我らのアイデンティティを守っていくこと
だと、話してくれました。
中国では、近年大洪水が発生し多くの被害が発生しているといいます。
しかし、多くの人は気候変動の影響というわけではなく、『運が悪い一年だった』という認識を持つ傾向にあると中国の大学生が話してくれました。
これは、教育が影響していると話してくれました。日本でもとられている「分散型」の環境教育が考えられるといいます。中国では気候変動に関して主に地理で学習するそうですが、環境学習という一貫したカリキュラムではないために、今起きている現象と気候変動の影響を結びつけにくいという課題が出てくるといいます。
https://www.bbc.com/news/world-asia-china-66458546
次にナイジェリアからきた22歳の青年との交流から得た内容です。
ナイジェリア国内の気候変動による影響は、
国内北部は旱魃、南部では大洪水が発生しているといいます。
昨年には過去最悪と言われる大洪水が発生し、死者は600人、200万人あまりが被災したと報じられました。
ナイジェリアで気候変動の影響を直接受けるのは、多くの国民が従事している農業であるといいます。近年では干ばつ、洪水により農業が続けられなくなったと話してくれました。
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これにより飢餓や争いも発生しているといいます。彼は、”traumatic”(トラウマのように悲惨な状況を指す)という言葉を何度も使っていたのが印象的で、気候変動待ったなしの状況であることが伝わってきました。
その脆弱な環境で若者が未来を変えていくんだという強い意志を感じ、圧倒されました。
彼が話した重要なことは、
アクションをとって政府に対するロビー活動を続け、政治を動かすこと、
気候変動に対する知識を学習するだけでなく、植樹などの活動で多くの人を巻き込むことが不可欠だと話してくれました。
https://www.cnn.co.jp/world/35194745.html
ケニアの保健省からの使節団の男性は、
『これまでマラリアが出ていなかった地域でマラリアが発生するようになった』
と、人間の健康面での気候変動による危惧を話してくれました。
実際、気候変動は人間に様々な面で影響を与えます。
日本では気候変動による健康への影響について、大々的に報じられることはないと感じますし、私にとって新鮮な視点でした。
最後に印象に残っている内容を紹介します。
それは、youth, women&gender pavillion でザンビアから来た女性が話した内容です。
ザンビアでは、気候変動の影響でナイジェリアと同じく、住んでいた土地から離れるしかない、いわゆる「環境難民」が多く発生し、その中で大きな格差が生まれていると話していました。
この格差は、
ジェンダーや貧困の格差を指し、社会的弱者と言われる人々に大きな影響をもたらすということを話されていました。
話の中で彼女は
Vulnerability of youth (脆弱な社会の上に立つ若者)という課題を強調して話しており、
「未来を担う若者や子供達のために」
という内容を繰り返し話していました。
またこの女性が話した中で、個人的に強く残っている言葉があります。
それは『Youth is resource』(若者こそが宝である)という言葉でした。
未来を担う子どもたちをどのように吸収するか、また声を拾うプラットフォームをどう作るか、気候変動に関する議論や政策提言、若者が声を上げ政治を変えていくかといった必要性を強く説いていて、気候変動に適応するために議論を続けていくことが重要であると話していました。
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気候変動は、異常気象をもたらすだけでなく、
文化、社会の脆弱性、経済、農業といった生業、健康、人権、性別といった悪影響や格差を拡大させます。
それらを踏まえて、各国と意見交換してどう仲間を作っていくのか、
そしてどう世界協働で気候変動という共通の課題に立ち向かっていくかが重要であるものの、いかに難しいことであるかを痛感しました。
各国と日本のパビリオンの様子
次に現地で各国のパビリオンを回った様子と日本のパビリオンの様子について簡潔に記します。こちらで記すパビリオンは主にブルーゾーンのパビリオンを指します。
COPには、政治交渉が行われる国連管理エリアとブルーゾーンと開催国政府が管理するグリーンゾーンがあり、ブルーゾーンだけでも100を超える建物と各国のパビリオンとエネルギー、ファイナンスなどそれぞれのテーマごとのパビリオンがあります。
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時間の都合上、より多くの国のパビリオンを回ることは出来なかったものの、
国ではEU、イギリス、ギリシャ、イタリア、エジプト、パラオ、UAE、サウジアラビア、
テーマ別では、youth,women & gender、energy and finance ,LGMA(Local Governments and Municipal Authority )を中心に回り、それぞれで
発表やお話を聞くことができました。
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それぞれの国、またテーマ別のパビリオンにて共通していたのは、その国や団体が目指すビジョン、各国のパビリオンではその国の文化やアイデンティティを中心に各国のスタンスが示されていたという点です。
パビリオンは主に国と国同士がビジョンを共有し、協働してどのように気候変動対策に向けて取り組んでいくか共有し、議論し合う場であるとの印象を受けました。
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次に日本のパビリオン の様子を記します。
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Japan パビリオン は、building 63にあり、入り口付近には主に日本企業の技術展示がされていました。入って奥にトークセッションが開かれるスペースがあり、連日自治体や企業が登壇され、日本の技術や取組を世界へという内容を中心に発表がなされていました。
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環境省ホームページには、このような文言がありました。
日本は、1.5℃目標に向けて、世界の国々とともに、 気候変動対策を成長につなげていく行動を起こしていきます。
そのためのソリューションを提供するため、 住居、モビリティ、産業、エネルギー、適応といったエコノミーワイドな 日本が誇る最先端の製品・サービスをご紹介します。
また、地方政府、企業、国民と一緒になったマルチレベルアクションを促すための、 日本国政府の取組もご紹介します。
Japan Pavilion で私が感じたのは、他国と違い、
日本は、企業の技術や自治体の脱炭素への取組を世界へ示すことに重きを置いているという点でした。
産油国の脱炭素社会に向けたロジック
次に今回の議長国であるUAEとサウジアラビアのパビリオンを視察し、両国の方々との交流を通じて得た視点を記したいと思います。
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冒頭で触れたように、
今回産油国でCOPが開催されるにあたってスキャンダルや批判的な報道が数多くありました。開幕直前には、UAEがCOPをガスの交渉の場に使おうとしているのではないかという報道がBBCをはじめ世界各国のメディアが報じました。
https://www.bbc.com/news/science-environment-67508331
また開催期間中には、議長を務めるジャーベルUAE産業・先端技術相兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)最高経営責任者(CEO)がCOP開幕直前の11月21日に開かれたオンラインイベントで、「化石燃料の段階的廃止によって、気温上昇を1.5度に抑制するという科学やシナリオは存在しない」と発言したことを英ガーディアン紙が報じました。
https://www.theguardian.com/environment/2023/dec/03/back-into-caves-cop28-president-dismisses-phase-out-of-fossil-fuels
国際的な議論では、「化石燃料の段階的廃止」が今回のCOPで重要な命題として挙げられていました。当初、UAEとサウジアラビアのスタンスは、UAEは、石油とガスを含む化石燃料より石炭廃止に重点を置いており、サウジアラビアはこの段階的廃止に反対の立場をとるなど、最終合意の3案において反発の姿勢をとっていました。
そして、終了前日の11日に公表された合意草案で、多くの国々が求めていた化石燃料の完全な「段階的廃止」が従来案から削除されました。
これには主にサウジやロシアなどOPECプラス構成国が石油やガスの段階的廃止への合意に反対があったためとロイター通信は報じていました。
https://jp.reuters.com/world/environment/J73AQ7MXTJK3LMKGU3RABYDEYY-2023-12-11/
つまり、この2国に関しては世界的に見ると脱炭素に向けて積極的であるとは到底言えないと思います。
しかしこの章では、現地での両国のパビリオンの様子と伺った話から、
感じたことをあえて少し違った観点から記述します。
この両国のスタンスの背景にあるのはやはり、石油、石炭、ガスに完全に依存した社会を作ってきている点です。
特にサウジアラビアは世界最大級の石油埋蔵量、生産量及び輸出量を誇るエネルギー大国であり、輸出総額の約9割、財政収入の約8割を石油に依存しているため、易々と化石燃料の段階的廃止に向けて舵をきることはないと思われます。
両国の思惑の一つとしては、次の産業(例えば再エネ、技術等)が完全に稼げる競争力がつくまで世界の脱炭素に向けた潮流を遅らせたいという化石燃料の延命の思惑を持っていることが考えられます。
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しかし、両国のパビリオンを訪れたとき、UAEは2050年までに、サウジアラビアは2060年までに脱炭素社会実現というビジョンをもっており、それに向かって様々なテクノロジーを駆使して取り組んでいくという姿勢を感じることができました。
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また私がUAEのpavilionを訪れた際は、
たまたま「space science and technology for climate change」という会が開かれていました。
登壇していたパネラーの5人が共通して話していたのは、
「これらの技術は我々のビジョンを達成するための道具である」
という点でした。
UAEパビリオンで開かれていた「space science and technology for climate change」の様子。space technology やAIを使い、過去で何が起き、未来で何が起きるのか予測することで、今とるべきことを議論するということを話していました。
両国のパビリオンでは技術を海外に売ることが主目的ではなく、
これらの技術を使って我々は我々のビジョンを達成するのだということを繰り返し述べていたような印象を受けました。
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またサウジアラビアのpavilionでは、入り口から一人ひとり真摯に訪れたゲストに話しかけ、自分たちの技術を紹介していました。
私もコーヒーとデーツを渡され、DAC(Direct Air Capture)などのテクノロジーの説明を受けました。
担当してくれた彼は、
「これらのテクノロジーを駆使しながら、俺たちは2060年までに達成してやるんだ。」
といった内容を丁寧に話してくれました。
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UAE、サウジアラビアは世界有数の産油国であり、また実際に訪れてから実感しましたが、UAEは観光大国で、膨大なエネルギーを消費しています。
両国の環境負荷は非常に高く、気候変動の責任が問われる国であることは間違いないと思います。
また、先ほど彼らが持つテクノロジーについて触れましたが、
それらのテクノロジーの導入によって化石燃料を使い続けられる道を開いていき、化石燃料の社会を延命させたいという意図もみえます。
しかし、この章で伝えたいのは、
両国を賛美するということではなく、明確なビジョンをうちだし、テクノロジーを道具にイニシアティブをとろうとする明確なロジックが見えるという点です。
この点、
脱炭素に向けて駆使する技術の捉え方やロジックが日本と異なるなと感じました。
また仮に、このイニシアティブが国全体に浸透し、
今産油国で消費されているエネルギーが再生可能エネルギーに置き換わったとき、
脱炭素に向けた世界の覇権は大きく動くことだろうと思います。
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今我々日本人は何をしなければいけないか
現地では世界の潮流を肌で感じてきました。
やはり日本国内では感じること、知ることができないものが多かったと思いますし、世界の国々では何が起きているのか、進められているのかを知ることで日本の立ち位置を客観的に見ることができると思いました。
また、気候変動をはじめとする環境問題は、目に見えない問題で、まだ分かっていないことが多いからこそ、何を持って環境に良いか悪いか等、
冒頭で述べたように人や国のコンテクストにより解釈が異なります。
だからこそ環境問題に関しては様々な意見や報道が飛び交います。
今回この記事で、各国で何が起きているのか、またUAEとサウジアラビアについて違った角度から述べたのは、様々な意見や見方があるという例を簡潔に示すためでした。
このような状況で我々市民は
どれがとるべき情報なのか、
どの意見からみて環境にいいのか悪いのか、
環境配慮が進んでいるのか遅れているのか
等、困惑するのも当然だと思います。
その中で私たち日本人は何をすべきなのでしょうか。
私は、
日本、または日本人のアイデンティティという色眼鏡から気候変動とは何かということを考えることがまず必要だと現地に行って痛感しました。
気候変動に関して、北極、南極の氷河が溶けている、または海外では森林火災が多発しているという問題がわかりやすい例として取り挙げられますが、このような報道だけでは日本の中で気候変動を身近に感じることはできないと思います。
繰り返しになりますが、
上記で述べたように「気候変動」といった一言でもその国のコンテクストや文化、また直面している現象によって気候変動の認識、課題は違います。
日本では気候変動により身近でどのような影響があるのかを考え、気候変動を捉え直すことが、まずは必要だと感じます。
例えば、
今、日本では毎年のように10年に一度と言われる大雨や台風といった気象災害が発生するなど、身近なところに影響があります。
私が住んでいる鳥取でも8月に台風7号の影響で土砂災害が発生しました。
【台風7号被害】土砂崩れで1000人超が孤立 鳥取市(2023年8月15日)
また私自身農村に住んでいるということもあり、気候変動による農業などの食料生産への影響というのは測り知れないと感じます。
実際、収穫量が減少、また野菜の出来も近年暑さに影響を受けており、今後が不安だという話もよく知り合いの農家さんから伺います。
また日本の美や和食といった文化をつくってきた四季も気候変動の影響で二季になってしまうと危惧されています。
News Picksでも、【盲点】気候変動と「俳句界」の意外な関係という記事が組まれていました。
また将来、もしかすると日本の春の風物詩であり、日本人の精神である桜が咲かなくなる可能性もあります。
また和食に関して、農林水産省ではユネスコ無形文化遺産に登録された和食の定義として、
『南北に長く、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。
このような、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題し』』
とあり、特徴の一つとして
自然の美しさや季節の移ろいの表現
が挙げられています。和食そのものも気候変動によって失われる可能性があります。
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これらは将来絶対に起きないと否定することはできないものであり、気候変動による日本文化の損失です。
つまり日本のアイデンティティが気候変動により失われる可能性があるということです。
気候変動という世界的な問題に対して
まずは日本人としてのアイデンティティというフィルターを通して捉えることが重要であるという点を強調しておきます。
そしてこのフィルターを通して気候変動とは何かを捉えた上で、
様々な選択肢を持ち、そして検討するイノベーティブな考えを持つことが次に必要であると思います。
特に日本という災害が多い国のエネルギー事情においては、なおさらイノベーティブな考えが重要です。
既に何度も述べているように気候変動というまだまだ未知が多く、
コンテクストによって解釈が大きく異なる問題に対処していくためには、
様々な選択肢と視野を持って取り組んでいく必要があります。
原発を例にあげます。
日本国内では、3.11後原発に関して否定的な報道が多いですが、
世界的には原子力発電が脱炭素に向けた代替策として注目を集めており、現地でも原子力発電のパビリオンが何個もありました。
また今回のCOPで原子力発電の容量を三倍にするとの合意もありました。
https://indianexpress.com/article/world/climate-change/cop28-22-nations-commit-to-tripling-nuclear-capacity-9055613/
見方を考えれば、
これは未来のため、今できることに取り組もうという意志の表れでもあると感じました。
つまり核廃棄物等の問題はあるものの、未来のためには化石燃料を廃止することが先決であり、原子力発電を使うのはその代替策という位置づけであるのではないかということです。
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しかし、もちろん原子力発電に関する否定的な意見もあります。
NGO/NPOの気候ネットワークが出している記事には
「原発は気候変動対策とならない」
として、
原発は化石燃料から脱却するまでの時間稼ぎであり、根本的な解決につながらないといった様々な意見を出しています。
一つの問題や政策に対して多様な角度から様々な意見があります。
ここでは政策に対して、どれがいい悪いといった肯定も批判もしません。
しかし、どの問題や政策も一長一短であり、
どの立場から見て環境にいいのか悪いのか、私たち自ら考えなければいけません。
この立場というのが、
まさにアイデンティティというフィルターであり、
そのうえで、自分たちが目指す社会のためには何が必要か、世界的な視野と様々な選択肢を持って気候変動に対して立ち向かっていくべきだと考えます。
全体のまとめになりますが、
まずは我々日本人、特に未来を変えていく若者世代は日本人のアイデンティティというフィルターから気候変動とは何か捉える必要があります。
そのうえでいろんな考えや選択肢を持ち、この気候変動という問題に向き合い、実現したい社会について議論していくべきだと思います。
日本が誇るテクノロジーだけではイニシアティブをとっていくことはできません。
どのような問題が気候変動によって私たちの生活にもたらされ、気候変動に立ち向かうためにどのような社会を実現していくべきなのかというビジョンがあってこそ我々のテクノロジーは威力を発揮します。
これらのロジックがあってはじめて、世界に打ち出せるイニシアティブを我々はとっていけるのではないかと思います。
以上の内容は、一個人がCOP28現地での体験に基づく内容で、
また何度か述べたように環境問題に100%の事実はありません。
まだまだ書ききれていないところも多々ありますし、私自身勉強不足の身です。
しかし、気候変動対策に対する関心が高まり、
議論が活発になることを願い、寄稿しました。
この記事を通して、様々な意見をいただけることを願っています。
今回、このような機会をいただけたことに非常に感謝しているとともに、まだまだ自分が勉強不足であることを痛感しました。
今後、益々の研鑽を積むとともに、
気候変動対策にアクションを起こす人材になれるように勉強を続けます。
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