プロテウス効果のためにアバターを変えられる?【VRChatアンケート調査第二弾】
はじめに
女性アバタを使っていると足を閉じてしまうなど,アバタによってふるまいが変わった経験があるでしょうか。アバタの見た目によってふるまいが変わることはプロテウス効果と呼ばれており,これが今回のアンケートテーマになります。
プロテウス効果についてはこちらにまとめたので読んでみてください。
そして,このようなアバタを変えることによる効果を有効活用し,私達の認知や能力の拡張を行うゴーストエンジニアリング(鳴海,2019)が提唱されています。
ゴーストエンジニアリングについては以下の動画や論文,noteを確認していただくのがいいと思います。
前回のアンケート調査第一弾では,VRChatユーザはアイデンティティを維持する傾向があり,アバタ自体がアイデンティティという回答が最も多くなりました。
一方ゴーストエンジニアリングでは,特定の能力を引き出すために,特定のアバタに変更する必要があります。これはアイデンティティを維持しようとするユーザと相性が悪いように見えます。
また,プロテウス効果の問題点として,効果はユーザの意思とは関係なく生じます。アバタに私達のふるまいが引っ張られることは,まるでアバタに自分たちが制御されているようで抵抗があるのではないでしょうか。
そこで今回は,プロテウス効果自体やそれを活用することに対する抵抗感,プロテウス効果のためにアバタを変えることへの抵抗感を調べました。また,第一弾のアンケート結果から,アイデンティティを維持すれば,プロテウス効果のためのアバタ変更に抵抗がなくなるのではないかと考えました。
アンケート結果
今回もGoogleフォームのリンクをTwitterで投稿する形で回答を集めました。
その結果,94件の回答が集まりました。
回答いただいた皆様,Twitterにて拡散していただいた皆様,
ありがとうございます!
【質問1】
使用中のアバタから想起するイメージによって行動が変わるとしたら,どの程度それを受け入れられますか?
【質問2】
実際に,使用中のアバタから想起するイメージによって行動が変わった経験はありますか?
【質問3】
使用するアバタによって能力が向上するとしたら,どの程度活用したいですか?
【質問4】
能力を向上させるため,全く別のアバタへ変更することにどの程度抵抗がありますか?
【質問5】
能力を向上させるためにアバタを変更する際,変更先のアバタが自身のアイデンティティを引き継いでいたとしたら,アバタを変更することにどの程度抵抗がありますか?
【質問6】
「プロテウス効果」を知っていますか?
考察
今回のアンケートはプロテウス効果に関するものでしたが,プロテウス効果を知らない方も多いはずなので,質問1~5はプロテウス効果という言葉を使わずに質問しました。質問6の結果からわかるように,プロテウス効果という名前はあまり知られていないようです。
結果として,7割のユーザがプロテウス効果の経験があり,8割のユーザがそれを受け入れられることがことがわかりました。アバタによって私達のふるまいが影響を受けることは,乗っ取られているようで抵抗があると予想しましたが,意外とそうでもないみたいです。アバタの見た目だけでなく,ふるまいもアバタにあったものにしたい,なりきりたいという気持ちがあるのだと思います。
そして,プロテウス効果を活用して能力を向上させることにも積極的で,そのためにアバタを変えることに半数のユーザは抵抗がないことがわかりました。多くのVRChatユーザはアイデンティティを維持しようとすることが前回のアンケート結果からわかっていたため,これは意外な結果です。プロテウス効果の活用で想定されるような,一時的なアバタ変更なら抵抗がないのかもしれません。抵抗がないと答えたユーザは,アバタの見た目よりも能力向上を好むユーザ群とも言えそうです。
また,アイデンティティを引き継ぐと,能力向上のためにアバタを変えることの抵抗はさらになくなるようです。これは多くのユーザがアイデンティティを維持しようとしている前回のアンケート結果とも一致しています。
このように全体的にプロテウス効果やその活用に対して肯定的な印象を受けました。
一方で大学生,大学院生を対象とした,アバタを通してなりたい自分に関するエッセイを分析した研究(畑田・鳴海,2022)では,「なりたい自分とは本来は長い時間や努力・経験を経てようやく手に入れるようなものであり,アバタ上で手に入れたとしてもそれらの努力や経験は得られない」というエッセイがあり,インスタントにアバタを変えることや,それによってふるまいを変えることへの強い抵抗感が見られます。
どうやらVRChatユーザとそれ以外でかなり認識に違いがあるようです。
多くのVRChatユーザは何度もアバタを変えた経験があるため,アバタを変えることへの抵抗が少ないのかもしれません。
ただし,上記の研究と今回のアンケートは異なる部分も多くあります。
アバタからアバタへの遷移と肉体からアバタへの遷移は感じることも違ってくるでしょう。加えて,上記の研究で対象にしているのは「なりたい自分」であるため,プロテウス効果のための一時的なアバタ変更とは異なります。
このような理由から,全く異なる結果になっていると推測できます。
「なりたい自分」に関しては,VRChat等のメタバースやVTuberのためにアバタの作成や改変をしたことがある人とそうでない人で大きく意見が変わりそうです。アバタを作成・改変したことがある人は,簡単に「なりたい自分」にはなれない現実を知っています。このような経験がある人にとって「なりたい自分」とは,「長い時間や努力・経験を経てようやく手に入れられるもの」になるでしょう。
少し脱線しましたが,VRChatユーザ以外に今回と同じアンケートを取ってみると全く別の回答が得られるかもしれません。
今後もVRChatユーザを対象としたアンケートを実施し,このようにnoteにまとめていく予定です。これ調査してほしい!というものがあれば,コメントやTwitterのDM等でお知らせください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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