人事評価が大嫌いだったベンチャーマネージャーが4年の歳月を経て、重要性に気づいた話
「マネジメント」をテーマに1年を振り返る「マネジメントアドベントカレンダー2021」の機会を頂きました。錚々たる面々の中で、恐縮しまくっていますが、1年間をざっくり振り返りたいと思います。
先にお伝えしておくと、エモいストーリーも、新奇性のあるTIPSもありません。が、組織を良くしたいと願うマネージャーの皆様に読んで頂く事で、少しでもチームを良くするヒントを持って帰って頂ければと思います。
自己紹介
キャリアとしては、SaaS×スタートアップ界隈にお世話になり、現在はHR領域のスタートアップでビジネスサイド全般の立ち上げを担当しています。
SaaSビジネスは、世間的には注目されているものの、実際の立ち上げは非常に泥臭いものです。特にスタートアップの場合は、限られたリソースで品質・機能のバランスを鑑みながら、プロダクトや事業についての意思決定を繰り返していく事になります。そんなSaaSスタートアップの酸いも甘いも経験し、現在に至ります。
マネジメント歴としては4年ですが、学生の頃から、組織を率いる、人を育てるといった事に携わる機会が多かったため、プレイヤーとしての仕事と比較して「難しい」と感じるシーンはあまり無かったように感じます。
一方で、いわゆる「エンゲージメントが高い」組織を作る事にはかなり苦労していました。この1年で気づいたのは、これまでの自分には、全社の制度や理念をチームに落とし込むという仕事が圧倒的に欠けていたという事です。
もう少し噛み砕くと、「業績」以外の会社の方針や思想を「翻訳」した上でマネジメントが出来ていなかったという事です。
そんな中、この1年間で着手した事は、評価制度やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の運用をやり切るという事でした。
なぜこの2つに着目したかというと、理由はシンプルで、「最もやり切っていない取り組み」だったからです。
これまでKPI管理等の業績マネジメントや1on1等のピープルマネジメントは、量・質的にもそれなりに真剣に取り組んできました。
一方で、評価制度やMVVは、運用が面倒な割に目に見えるリターンが少なかったり、これまで周囲に熱量の高い人物がいなかったため、なあなあで過ごしてきました。(ぶっちゃけちょっと面倒くさいとも思ってました)
そのため、自身のマネジメントの頭打ちを感じた時に、分かりやすく差分を出せそうだったのが評価制度とMVVの2つだったという訳です。
マネージャーとして評価制度を運用することの大切さ
ベンチャーにおいては、大手企業の様に明確な人事評価制度が無いケースも多いと思います。最近は、いわゆる「●●人の壁」に備えて、アーリーフェーズから明確な制度を設けている会社も増えつつありますが、概ね下記の制度設計になっているのが典型的なパターンではないでしょうか。
グレード(等級)が7段階くらい用意されている
各グレード毎の抽象度の高いミッションが言語化されている
期初に定量・定性目標を設定して達成率×プロセスの2軸で評価
場合によってはクレドやバリューの体現度も評価要素として含める
そして、運用の実態としては、評価期間の8~9割は業績(数字)のマネジメントに追われ、期末の評価タイミングで定性目標の存在を思い出す…という経験をされたベンチャーマネージャーの方も多いのではないでしょうか。
この様な運用の問題点は、評価制度が「給与査定」のツール以上の役割を果たしていないという点です。
ですが、本来評価制度は、会社にとって望ましいあり方や行動、成果が明文化されたものです。とすれば、マネジメントツールとしてこれ以上に説得力があり、効果的なものはありません。
したがって、定期的に現在のミッションや設定された目標に立ち返り、対話を繰り返す事が組織とメンバーの方向性を一致させるというマネジメントの役割を果たす上では非常に重要となります。
と、色々正論を吐いた所でこんな疑問を持たれた方も多いんじゃないでしょうか。
ミッションの抽象度が高すぎる。何を持って評価をすればいいの?
頑張って評価をしてもどうせ評価調整がかかるので無駄じゃないですか?
これはまさに自分自身が新任マネージャーだった時にずっと感じていた事で、当時は評価制度は、目標設定と最終評価以外ではほとんど活用しない状況でした。
ですが今振り返れば、未熟だったとしか言いようがありません。ここからは、実際にここ1年でこの2つの問いに対して取り組んだ内容についてシェアしたいと思います。
抽象的なミッションを具体に落とし込む
ここがまさにマネージャーの果たすべき役割ですね。どの職種やチームでも汎用性のあるミッションを設定している場合は、特に抽象度が高くなりがちです。そのため、ミッションを自チームにFitさせるためには、マネージャーが「翻訳」する必要があります。
そして、何より重要なのは、対話を繰り返す事で、具体的な内容に落とし込む事。
その過程で、ミッションへの理解と納得度が高まっていく訳です。ここを面倒くさがると、「ポジションや給与の割にやたら期待値が高くて割に合わないな…」とか「プロジェクトや施策をガンガン振られてやってられん」的なベンチャー不満あるあるに陥る事になります。
ぜひ期末の評価時だけでなく、期初・期中でもミッションについては常に対話・すり合わせるようにしてみて下さい。
常に上司や人事にメンバーの評価を発信する
これも人事評価あるあるではないでしょうか。。定量・定性の両面で成果を出していて、S評価でマネージャーが上げたものの、A評価に下がる。一方で、B評価者はそのままで、実際の活躍度ほどに差がつかない。
より酷いケースとしては、経営陣と距離が近いメンバーが贔屓されるケースですね。あまり公に語られませんが、評価制度が形骸化する要因の1つではないでしょうか。
そんな環境で我々はマネージャーはどの様な行動を取れば良いのでしょうか。まず、チームに対して責任を持つ立場として、評価によってメンバーの意欲が削がれてしまう事は避けなければなりません。
評価制度に対して不満が発生する最大の理由は、「評価基準が不明瞭」である事です。上記はアデコグループによる調査ですが、その他の調査期間でも一位の回答は概ね一致しています。
つまり、「評価の結果」ではなく「評価の理由」に対して不満を抱えているのが実態であり、多くの企業では評価理由の説明責任が果たされていない状態であると考えられます。
裏を返せば、マネージャーの出来る事は、説明責任がメンバーに対して果たせる状況を作り出すことになります。具体例を上げてみましょう。
上司・人事にヒアリングを行い、評価理由を明確にする
メンバーの活躍を能動的に発信し、上位層にファクトを届ける
上司との1on1でメンバーの活躍を定期的に伝える
列挙すると当たり前の事のようですが、これを実際にやりきれているマネージャーの方はかなり少ないのではないでしょうか。
本心としては、いやいやこんな七面倒臭い事をやらせないで、正しく評価してくれよという声も聞こえてきそうですが、最終評価を決める経営・人事も人間です。
最終評価者でも、常に正しい判断が出来る訳ではないという事を念頭に置きましょう。チームの成果がメンバーの頑張りによってもたされている以上、正しく評価をされるために、一手間、二手間かける努力を怠ってはならないと個人的には思っています。
さいごに
ここまで読んで頂きありがとうございました。マネジメントについては、常に悩みながら毎日を過ごしているので、壁打ちやディスカッションの機会を頂けるようであれば、TwitterでDM頂けると嬉しいです。