【#英語教材レビュー】『公式TOEFL®英単語』




▶️『公式TOEFL®英単語』とは (公式HPより引用)


・TOEFLの開発元ETSによる初の公式単語集

本書は、TOEFL®テスト開発元の米国ETSが作った初の公式英単語集です。ETSが持つTOEFL®語彙コーパス(これまでにTOEFL iBT®テストおよび関連教材に登場した英単語のリスト)を分析し、出題頻度と重要度が特に高い英単語約2,000語と派生語約1,800語を厳選収録しました。

TOEFL®テスト日本事務局 (2024).ETSが作った世界初『公式TOEFL®英単語』刊行のご案内 

・英単語の語義説明が英語,日本語である

本書では、語義説明を英語で示していますので、単語の本来の意味やニュアンスを確かめながら学習できるのがポイント。もちろん、理解を助ける日本語訳もついています。

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・本番テストに基づいた例文

例文は、過去の出題に基づいて作成されており、音声も実際のテストでナレーターを務める声優の声を使っているのが特長です。TOEFL iBT®、TOEFL ITP®どちらにも対応しています。

アメリカなど海外の大学留学を目指している方はもとより、世界中で通用するアカデミックな本物の英語力を身につけたいと考えているすべての方にとって待望の一冊です。

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▶️結論:TOEFL iBT対策には微妙


・記事を読む前に

※単語帳に対する厳しいコメントが一部ありますが,当局や単語帳作成者の気分を害したり,批判したりする意図は一切なく,あくまで「TOEFL iBTで高得点を狙う学習者にとっては,物足りないかも」という,TOEFL学習者1個人の意見です。単語帳としての性能や情報量は凄まじく,類書にない創意工夫と,公式ならではのコーパスを用いた単語選定には敬意を表します。


・理由①:TOEFL iBT に出てくるハイレベル語彙の掲載がない

本単語帳は,大まかに「最重要単語」と「発展単語」のセクションに分かれていますが,後者のセクションでも,TOEFLでよく見る難単語の掲載がありません。

※ここでいう「掲載がない」は,見出し語 or 派生語に 掲載がない,という意味です。同書の例文を探せばあるかも(?)ですが,そこまで覚えることはほぼ不可能,かつ覚えるべき単語として認識できないので除外します。

【ハイレベル語彙の一例】
flora (植物相) / fauna (動物相) / frontality (芸術品,彫刻などが正面を向いていること) / turnpike (馬車が通るような有料道路) / celestial (天体の) / aquifer (帯水層) / pastoralism (放牧) / extraterrestrial (地球外の) / edifice (大型建物) / K-T boundary (K-T境界線=恐竜の絶滅の原因とされる火山噴火の堆積層) / megafauna (大型動物相)…

TOEFL iBT Reading section の過去問より

などなど,90~100点以上を目指す際に知っておきたい単語の掲載がありません。80点以上あたりからTOEFLの点数を上げたい学習者にとって,本単語帳掲載の単語は多数が知っている単語で占められており,ボキャビルとしては物足りないと思います。

そもそも,TOEFL 開発元のETSが作成している以上,私が例で示したようなハイレベル語彙がテストに出ていることは認識しているはずで,学習者は,そうした痒い所に手が届く単語帳が欲しかったのでは?と思います。
(だからと言って,あの3800のように,"melon" (イルカの反響定位用の器官)とかを図示もせずに掲載するのはやりすぎと思いますが… )

コーパスをベースに単語を選定すれば,当然ハイレベル語彙は至る所にあるわけではないので,掲載優先度としては落ちてしまうのかもですが,学習者が欲しいのってハイレベル語彙では?と思っていました (私だけ?)

長くなりましたが,理由①のまとめとしては,「TOEFL iBT 特化のハイレベル語彙の掲載」が無いので,TOEFL iBT 対策なら他の単語帳を使うのも検討した方がいいと思います (特に,90点以上を目指す学習者にとって)。


・理由②:背景知識の補強がしにくい (ほぼできない)

TOEFL iBTが難しいテストだ,と言われる理由の1つとして,内容がアカデミック寄りで,日常であまり馴染みがないから,というのがあります。(ネイティブ的には,TOEFL iBTは大学初級レベルらしいですが,)異国語で,自分の専門外の範囲を読まされる (聴かされる)のは辛いです。

そんなテストで役に立つのは各分野における背景知識です(単語,文法等,言語としての英語の知識ももちろんですが)。よって,これまでのTOEFL iBT用の単語帳は,ほとんど全てが分野別の章立てをしているか,別冊や巻末に分野別で背景知識を補う補講があります。

例えば,私が愛用する 高木 (2017)の単語帳 (※) では,基本単語,熟語のセクション以外は,「自然科学」「人文科学と・社会科学」「人間とその世界」に分かれていて,語彙に加えて,図表や短いパッセージを読みながら,背景知識を吸収できるようになっています。

【背景知識の一例】
⚫︎イラストや図があるトピック
太陽系の惑星 / 元素の構造 / 大航海時代の船 / 生物の系統発生 / 地殻の構造

⚫︎背景知識のパッセージがあるトピック

産業革命 / 近代の公害問題 / 人口増加 / 顕微鏡の構造と用途 / クモの生態 

(※) 高木 義人 (2017). TOEFL®︎テストiBT & ITP 英単語. テイエス企画

ところが,『公式TOEFL®英単語』では,背景知識の説明が手薄です。背景知識のセクションがなく,頻出テーマの説明やイラストもなく無機質です。

例えば,同単語帳のAmazonの商品紹介ページでは,"molecule" (分子)には「3つの原始で構成される水分子」とあります。理系トピックが苦手だと,イメージが湧きにくい人もいるかもです。他にも同ページに "magnetic" は「引きつける」で掲載されていますが,TOEFL的には「磁場の」の意味で,"magnetic field" が多い気がします。そしてそこに,磁場の図があってもいいですよね。

こんな風に,単語の意味と用例の参照はできそうですが,「結局,それ何?」と概念の理解不足に陥ってしまいそうだなと思いました。

ということで,背景知識の吸収がしにくい本単語帳を,TOEFL iBT 用にメインで使うのは,個人的にはあまりお勧めしません。


・理由③:「発展単語」セクションの派生語が少ない

派生語は英語のボキャビルにおいて,重要な役割を果たします。それを意識してか,『公式TOEFL®英単語』の「最重要単語」セクションでは,見出し語に対してかなりの量の派生語が掲載されています。

例えば,同書のAmazonの商品紹介ページでは,見出し語の "estimate" に対して,"estimation", "overestimate", "overestimation", "underestimate", "underestimation"と5つの派生語があり,「最重要単語」セクションの派生語は,かなり重宝すると思います。

しかし,「発展単語」セクションでは "molecule" (分子) に対して "molecular" (分子の) という形容詞がなかったり,"merchant" に "merchandise" (販売促進する) がなかったり,「最重要単語」セクションでの勢いはどうした?と言わんばかりに派生語が少ないです。

しかも,上記の単語は発展というほどでもないので,この辺りの派生語を取りこぼしていると後々困る瞬間があると思います。発展と名のつく章をやったけど,意外と基礎で抜け漏れがある,みたいなことが発生しちゃうので,「発展単語」セクションにも豊富な派生語をつけてくれ〜〜って思います。


▶️私のオススメ


●分野別IELTS英単語

・概要:IELTSで高得点を目指す学習者のための英単語集
・価格:2750円(税込)

・感想:IELTS Academic用なのに,TOEFL iBTで頻出の単語が多数掲載されています。特にCEFRでC1レベルの単語や,分野別の専門用語の掲載が豊富で,CEFR B2の学習者がステップアップするのに適していると思います。分野ごとの章立てになっているので,体系的にとは行かないものの,背景知識の獲得もしやすいと感じます。


【Short Summary】

▶️『公式TOEFL®英単語』とは
・TOEFLの開発元ETSによる初の公式単語集

▶️TOEFL対策には微妙 & 使い勝手が悪い
・TOEFL iBT に出てくるハイレベル語彙の掲載がない
・背景知識の補強がしにくい (ほぼできない)
・「発展単語」セクションの派生語が少ない

▶️私のオススメ
分野別IELTS英単語


Acknowledgements:
Props to my students for taking my group classes.



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