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グラシアス佐伯さん。心から。

先日、佐伯夕利子さんがJリーグ理事を退任されました。

佐伯さんが理事でいらしたこの2年間は、

ひたすらにコロナに振り回された2年間であり、

自分自身がJリーグの側からシャレン!に携わった2年間であり、

大和シルフィードに移籍してクラブのプロ化に動き始めた2年間でした。

「命つなぐアクション」も、「ソナエル東海」も、立ち上げのフェーズから、より深い連携、より深い展開へとフェーズの成長が求められたタイミングで、それはシャレン!自体の立ち位置や方向性をどうしていくのか、という点でも同じだったかもしれませんが、いつもその悩みに寄り添って、誰よりも当事者として、それでいて常に高い視座と視野を持って、シャレン!をエンパワーメントしてくださいました。

不思議なほど、モヤモヤしている時や、八方塞がりになりかけているタイミングに限って、それをクリアにしてくれる佐伯さんのコメントやフィードバックを聞く機会に恵まれることが多かった気がしますが、素晴らしい指導者とは、きっと出会う選手たちにこういった思いを抱かせる人なんだろうと、身をもって学びました。そして、この出会いは与えて頂いた幸運でもあり、でも自分自身が佐伯さんのことが大好きだから得られたであろう幸運でもあったのだと、勝手にそう思っています。

何より。女子サッカーに移籍してきて、これまでJクラブにいた中ではほとんど見ることのなかった、「怒鳴る指導者」、「誹謗を浴びせる指導者」、「常に指示命令を出し続ける指導者」を街のグラウンドで目にすることが増え、自分で考えることを最初から放棄していたり、指導者にひたすら答えを求めたりする育成年代の選手に接することが増え、でもその現実も踏まえた上でこれからどうしていくべきかを議論をするにあたって、佐伯さんの「教えないスキル」がどれほど心強い指針となったかは、計り知れません。

サッカーとは畑が異なりますが、これまで幼児教育や臨床発達心理の研究を通じて常に考えてきたこと、大事にしたいと思ってきたことが、驚くほどここにたくさん詰まっています。

「教えないスキル」をサッカーの指導者に紹介すると、多くの場合、「教えないってことは何もしてはいけないことですか?」とやや困惑気味に反応されるのですが、これは幼稚園の教育実習に来た学生さんも同じです。我国の幼稚園教育要領には、「環境を通して行う教育の意義」が明記されています。幼児期の発達において重要なことは一方的な陶冶ではなく、主体的な興味関心を発揮し得る環境の構築であり、そして教師もまたその環境の一部である、と。

真に理解しようとするだけで1年から2年はかかるほど重い事項ですが、これは向き合う子どもたちの発達の段階が違うというだけで、サッカーにおける選手育成においても同じくらい大事なことだと考えています。

「教えない」は、何もしない、ではなく、「子どもが学び成長する力を奪わない」という戒めであり、「子どもを伸ばすのは環境であり、指導者もまたその環境の一部に過ぎない」という謙虚さであり、「口で教える以外の有益なアプローチは無数にある」という可能性への挑戦である。

これは流石に勝手すぎる翻訳かもしれませんが、でもこうした議論や振り返りが常にできるような、そんなクラブにしていきたいと、強く願っています。

そして、いつかは佐伯さんに監督のオファーを出せるようなクラブにしたい。でもこれは強く願うのではなく、自分自身の内に静かにしまって、この先壁にぶち当たるとき、折れそうになるときに、握りしめていきたいなと思います。

グラシアスと、心から。佐伯さん本当にお疲れ様でした。

そしてこれからも、よろしくお願いいたします。

(プロの女子サッカークラブって、どうやってつくればいいんだろう。)

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