序章 始まり編|The Beginning 『5 再びの神』
ラウル率いる神の軍と魔王軍の戦いは激しさを増し、謎の奴と互角に渡り合い、剣を何とか奴に当てようと振っている。
謎の幹部は素早く、相手は腕だが俊敏に攻撃を繰り出している。
そして一回一回の攻撃が非常に重く、鎧を纏っているラウルでも嫌でも後ろに体が引いてしまう。
「くッ――ハァァァッ!」柄を強く握り、自身の体に流れる光の力を剣に流し、黄金の刀身が光り出した。
この世界の剣技とは、刀身に自らの力を流しすことで剣技を使う。
明光流派・純技――《穿光《シャイニングピャアズ》》
剣を振り、光の斬撃が生まれる。
その斬撃は複数に分裂し、敵を穿つ!
「この程度……」
「貴様は何者だ!!」光の神の攻撃を受けても傷が見当たらないとは――どんな小細工を――!!
ラウルではこいつは倒すことは困難だ。
その瞬間だった。大地が揺れ、盛り上がった大地が大きな音とともに粉砕した。ラウルと奴が同時に感じたのは無限に増すほどの破壊の力だった。
上空に浮かぶのは、大量の破壊の力に手足と首に枷が付き、鎖が伸びる先には十本の漆黒の巨大な剣だった。
あの姿、見たことはないがわかる!真の姿のような……掴んでいる武器は進化したようなものになり、大剣並の大きさであった。
そしてレイムの右目に浮かんでいる紋章には見覚えがあった。
「破壊神軍の紋章……」
それは”レギリオンの大戦”にて三代目破壊神が率いる破壊神軍の紋章だった。
その紋章はレイムは知らないはず――レイムの配下である最破達も言っていないはずだがッ――
「魔王軍は殲滅だ!――」破壊の剣を上に掲げると一瞬のうちに剣先に破壊の力が高密度に集中している。
あれだけの力が放たれたら、我が軍の後ろの国も消滅するッ――!!
破壊の力は他の力とは違い、放たれた後でも力は膨張し続ける。
「糞ッ、我が軍よ!今すぐ後退しろッ!!」ラウルはすぐに軍を下がらせた。破壊の力で巻き込まれる可能性がデカすぎる。
「貴様も道ずれたっ!!」奴はラウルの腕を掴んだ。ラウルをも掴んで離されないその握力も凄まじい。
するとラウルの目の前から奴が一瞬消え、姿が見えた時には離れた所に倒れていた。まるで見えない何かに弾き飛ばされたような感じだ。
いや、見えない何かではない――。
破壊神の力の一つである漆黒に染まった手、破壊神が操るもう一つの力〈破壊の手〉である。無数の手を伸ばし、破壊の限りを尽くす。
破壊に特化した力……もうあの状態のレイムは止めることはできないだろう。
「貴様の相手は私だ……さぁ、我が力を食らい塵も残さず消滅するがいい、虫けらがッ――」初めて聞いた口調だ。
人格が変わったのか、本当に別人のようだ。
本当に虫けらを見るような目、レイムの今の姿はその名の通りの破壊神である。
そしてラウルから奴を引き離し、破壊の剣の先の破壊の力は一定を超え膨張し始めている。破壊の力はあらゆる力を破壊の力に変換することができるのだ。
周囲の地形は歪み、空気に漂う力さえも乱し、近くにいるだけで呼吸困難に陥ることもあり得る。
「皆ッ、急いで後退しろぉぉぉぉぉッ!!」とラウルもそこから離れ、走り出した。
そして王家の神々でも耐えきれるかわからない威力の破壊の力が今限界に達する。
「このぉぉぉぉぉッ――」奴は怒り、自分が敗北することを悟ったのだ。
「死ねッ、我が力に砕け散ろッ――」
――《破滅星閃覇《ユーディス・ノヴァレーション》》
全てを滅ぼす不気味な星を眺めるような光から地に向けて放たれた。
それは、地を砕き、魔王軍は全てその光に触れ消滅していった。
そしてレイムは剣を振り下ろした。
禍々しく黒い力が放たれ、物体に触れた瞬間、膨張が広がり大地や魔王軍は跡形もなく消滅していった。膨張する破壊の力でラウルは衝撃に耐えていた。唯一確認できたのは悲鳴を上げながら消滅する名の知らずの幹部がいた。
そして上空に浮遊するレイムは気を失い膨張する破壊の力の中に落ちていった。
「レイムゥゥゥゥゥッ!」膨張が治まり、その後には大地が凹み巨大なクレーターが出来ていた。周囲には消えることのない破壊の力が漂っている。
そしてクレーターの中心には少し縮んだレイムがいた。
ラウルは近づき、生きていることを確認した。
「ロナッ、後は頼む……私はすぐに領域に戻る……」とラウルの背後には、犬のぬいぐるみの容姿をした者が立っていた。
「了解しました……あとは破壊神配下”最破”の一人であるロナが務めますのでご安心を……」最破の者達はレイムを生まれた時から知る者達であり、家族同然である。
他の者に触れられるのは、少し抵抗があるらしい……。
そしてこれからの仕事の方が多いラウルは光の騎士達とともにエレクシア領域に帰還を始め、ロナは伝達魔法でどこかと連絡を取った。
「ロナだ……戦いは終わったがレイム様が気を失った……数人来てくれ……」破壊神とは呪いの力を持つ者……最強の力であり、他の神々から恐れられている存在。
この世界には最強の一角である”破壊神”の他に最強は世界をこの手にすると躍起になっている。
そしてレイムは破壊神という自分の存在を――真実を確かめるために動き出すのは、近いであろう……。
~コメント~
大魔王の軍勢の前線を一人で消し去り、神クラスの存在を屠ったレイム……後者はレイムの意思ではないが、全力であれば一つの町を消滅させられるほどです。