【第1部 破壊と再生のプリンセス編|Princess of destruction and rebirth】お試し編
――世界は神が創造した。
――じゃあその神はどこから来たのか?
――世界の外は真っ暗な宇宙が無限に広がり、どこにも居場所なんかないと言うのに……。
複数の女性、そして遠くから見つめる男達。
その中心に一人の赤子、漆黒の瞳をしているその存在を女性たちはあやしている。
まだ言葉は理解していないが、その空間にある無限に等しい壁が見えない高さの本棚にぎっしりと大小、厚さが異なる本の中から童話と言えそうな本を毎日眠る前に読んでいる。
それは神以外の存在の目線から語られている。
女性たちは容姿は人間であるが、異様な悪魔の翼や角を生やし、男達も同様だ。
人間。
悪魔。
天使。
そして神。
その類の話は、理解が難しい……だが子守唄の代わりにはなる。 この赤子、この少女は生まれた瞬間から世界から恐れられた。
この世界で最も恐れられる力、『破壊』を宿してるのだから……。
そしてその者達は破壊の神に長年仕え、今代の神が少女に仕えているのだ。
神はどこから来たの?、と物心がつけば、いつしか聞かれると男の一人は思うが、女性たちはその愛くるしい神に夢中である。
「後継者か……」腰に刀を装備し、和国出身である証、和服を見に纏っている。
「嫌、か……」その横でその呟きに言葉を投げたのは、老執事であった。
「そんなことはない、だがまた同じ時間が進むようで怖いんだ……」
「ほう、ジュウロウ、お前でもそんなことを思うのか……無欲ではなかったのか?」
無欲という言葉は彼の強さを表している言葉、この者達の中で唯一の人間であり、恐らく人類最強の実力を持っている。
「それは、関係ないと思うが、ビリルはあの方が進んだ先をレイム様がそれを後追い、消えてしまうことは……今だから思える将来や代々の破壊神は世界の先を見たのではないか?三代目様もレシア様も……」
今この世界に存在する神々の中で頂点に立つ6人の神々は今代で五代目となり、破壊神は今代目以外が死亡とされている。
「あぁ、そうかもな。そしていずれレイム様も同じ場所へ行きつき、そこが運命の分かれ目となる……それが破壊神にもたらされた宿命なのかもしれない……」
「世界の先へ行くことがか?」
この世界を全て見たわけではないが、三代目に仕えていた二人がこう話しているのだからそうなのであろう。
破壊神がこの世界の先へと行く宿命なら我々はついて行くともう既に決めているのだ。
―――
――
―
12年後……。
世界は決まった事柄で進み、時間はその概念に固定されて、それと反対に誰かが望むのは運命という偶然では片づけられないことである。
何事にも真実が存在する。
誰かがその一つの原点から糸を引き、真実が簡単にはわからないほどに糸は引かれ、運命がばら撒けれたのだ。
誰かの手で生まれた存在……造られた側には勝手にと何度も思い、人から造られ万能の力を宿し、世界を壊し、再創生を施した。
そして私は……。
この世界の悪と呼ばれる存在は複数あるがそのうちの一角である存在、”魔王”だった。
ここは大海の真ん中。
すると上空に赤く巨大な魔法陣が展開され、赤き光線が大海に突っ込み荒々しい波が発生した。
そしてそこには多くの影があった。赤い魔法陣は魔王の中で最強の存在である紅蓮の魔王だと言うことの証明である。
魔王の中の王で大魔王と言われている。
そして今のは広範囲の召喚魔法……軍だけを送り、軍は止まることなく海を渡り、血を踏み、命令があるまで永遠に……。
それと対になるのは、この世界の創造した神々で天界に住む神々の中で王家の神である6柱が創生神である。緑を象徴する風の神、赤を象徴する炎の神、青を象徴する水の神、紫を象徴する闇の神、黄を象徴する光の神、黒を象徴する破壊の神……その六人の神が歴代に渡り魔王達を撃破してきたが、最古の魔王達は一対一では勝利は揺らぐ……かつて炎の神と破壊の神は大魔王と戦い勝利したが完全に滅びることはなく復活し、そして更に力を得るのだ。
その呪いのような力は神の中でも最強の存在がそんな呪いを宿し、他の神々の中から恐れられている存在が破壊の神だ。
その名の通り、破壊を司る神。
何故、恐れられているのかそれは単純な力である。
恐れ、嫌われ、そして裏切りの神と……。
今から3000年前のこと……今代で五代目となる創生の神々、その二代目破壊の神が神々を裏切り、それが原因で神々と破壊神軍と魔王軍との三大勢力の世界大戦”レギリオンの大戦”が勃発した。
それが原因であった。
そしてその五代目となる破壊の神と四代目光の神が魔王軍の出現と聞き、出現から5時間後に戦闘を開始した。
ここは、ウォーシンク大陸南の防壁。嵐の時に波が高くその先の国や町に被害が起きたというわけで設置された砂浜にそびえ立つ壁……防壁の前には多くの騎士が水平線の一点だけを見つめていた。
一早く魔王軍の召喚に気付いたこの大陸の国の騎士は集まっていた。
その目には明らかに恐怖の色を浮かべながら、何千もの騎士はそこにいた。
だがそこにいる全てが人間である……その状況は無意味である。
人間が魔王軍に勝てると言うことはない……人間種には極稀に才能を持って生まれる者がいるがそれは人間全体から見たら指で数えられるほどしか存在しない。
代表的なのは勇者、せっかくだからこの世界の仕組みについて……。
この世界は六人の神々によって創生された世界……この世界には六つの領域があり、それは六人の神々が住まう領域である。
最大国家光の国”エレクシア”領域、製造国家炎の要塞”ファイテンラスク”領域、漁業国家水源都市”ソルレンテ”領域、最大領域翠色の大地”シズゼリア”領域、この四つの領域は四大国家でありでありお互い同盟関係にあり、四つの領域で生まれた種族人間種・天使種・妖精種・エルフ種・獣人種・海妖種・ドワーフ種だ。
そして悪魔や魔族、魔王の住処となり常闇の夜空”ネルトシネアス”領域、ドラゴン種・機人種の最強種族が住む、破壊独立国”ディスラクシェント”領域は独立国として発展している。
魔王軍はその領域外の国を狙いその場所に近い所に召喚されたり、町中に召喚されることもあった。
対抗できるのは、神に仕える騎士や最強の種族、そして領域に住まう神だけであった……。
つまりはそこの人間達は死に行くようなものだった。騎士達が向いている方は水平線が見えるだけだったが、向こうの海がだんだんと黒く染まるのが見えた。
あれが魔王軍の影だ。
「騎士長ッ――魔王軍が確認されました……」防壁の背後に張るテントの中に一人の騎士が慌てて入って来た。
若い男の声がテント内にいた騎士長や副騎士長などがその報告と叫びを聞いた。
それと同時にその者達の奥底から震えと背筋が凍り、怯え、恐怖した。国を守るためにここに集まった騎士達だがいざ戦場に立てば、そんな心などすぐに折れてしまう。
若い騎士は膝をつき、息を整えた。
この空間の空気は一瞬にして凍り付いた。
全員が絶望を感じ始めたからだ。絶望の感情が体全体にのしかかり目から涙を流し、座り込む者もいた。
もう終わりだ……死にたくない……。心の中の叫びが聞こえるほどに、空気は更に重さを増していく。
ほとんどがその感情であったが騎士長は違った。騎士達は誰よりも努力し、そして誰よりもわが国を愛している者だ。
最期まで命を懸けて戦うと……。
勇気ある者がそこにはいた……周りの者が絶望に満ちている中で希望など捨てただ戦いのみと決断した者が……。
ただのちっぽけな一人の人間……剣術ができるだけ、俺にはそれしかないのか……。思えば思うほど自分は本当にちっぽけである。
全ての騎士に国の紋章がある。
それはこの国を背負っているという証拠だ。魔王軍だから、勝てないからじゃなく……騎士として役目を果たすッ!!
騎士団長は恐怖に屈することはなく、立ち向かう表情をしていた。
これが、国を背負う騎士長の姿、そして死を恐れず進む人間の目……。
この目は人間にしかない目……無数の種族の中で最弱の人間に与えられた、最も深きもの……心……。他の種族より明確に存在する感情…喜び、悲しみ、怒りの無数の感情を持ち、恐怖心を抱えたり、悔しさや、その感情に対する結果もある。
それはとても美しいもの、人間一人一人に存在する。
生まれた時から自分の中にそれに任せることもいいが、自分でそれをコントロールし、人間は進んで行く。
それを改めて感じ、大きく息を吸って立ち上がった。
「今!我々は絶望に満ちている。だがそれでも我々はこのウォーシンク国の騎士として最後まで戦うのだ。たとえどんなに敵わない相手でも騎士の誇りを懸けて魔王軍と戦うと……俺は今まで背負ってきた国のために、そして自分の心とともに…最後まで戦う!!」
その言葉は凍った空間を壊すほどの迫力と威力……全ての騎士が上を向いた。
「この国のために友人のために家族や大切な人のためにッ俺達は魔王軍をこの国に一切入れないことだッ!それが今ッ俺達にできることだ!」
その言葉を聞き、表情が決意という強い意志として一つの肉体が変わり始めた。
そして騎士団長は柄を握った。
「さぁ、騎士達よ!剣を抜けぇぇぇぇぇッ!」雄声えが響き、それは空気を震わせ騎士達に力を与えた。
「オォォォォォッ!!」一斉に剣を抜き、上に捧げた。
そして魔王軍の前線が海から顔を出した。
その容姿は化け物の一言だった。
「魔王軍を進行を阻止しろぉぉぉぉぉッ!」防壁の上から攻撃魔法を放ち、騎士達は防壁を超え、魔王軍に斬りかかった。
これが人間なんだと魔王軍に分からせるために騎士達は援護の攻撃魔法を盾に少しでも近づき、その強く握る剣で魔王軍を切り刻むために……。
だが、結果は承知の上だった。
騎士達は肉片となって散らばり、大地は赤く染まった。
数時間経ち、防壁は崩壊し、その先の国は跡形もなく滅ぼされた。
これが世界を蝕む存在である。
※この作品は『小説家になろう』で連載しております!
続きはお手数かけますが、なろうサイトで読んでくださると嬉しいです!