ぼくが生まれて初めて憧れた人のお話
男の子は誰しも…と主語を大きくは出来ないですけども
(主語を大きく書くことの愚かしさはまた別の機会に長々とお説教します。覚悟しなさい。)
私小さいころは特撮が大変好きな少年でございましてですね。
ウルトラヒーローたち、ガメラ、そして怪獣王ゴジラ。
一通り見ました。
覚えていないものも多々ありますが今でもゴジラは大好きです。
長々と語りたいですがそれはまた別の機会に。
子供向けのアニメやコメディ映画なんかも見ました。
今でも映画の「マスク」は大好きです。
(ポケモンは家庭の事情でちゃんと通れなかったので私に話を振らないでください。泣きます。)
えー脱線しまくりましたが本題です。
まあそんなね、感じで小さい頃の私も色々憧れたものです。
ウルトラマンに変身する隊員だったり、
ゴジラそのものだったり、まあ色々と。
小さい子はそんなもんじゃないかなと個人的には思います。
で、私の場合その憧れってのは実在しない存在なわけです。
ゴジラしかり、マスクの仮面そのものも主人公のイプキスしかり。
ウルトラマンティガに変身するダイゴ隊員を演じた長野博さんは実在しますが、
ダイゴ隊員というのは実在しないわけです。
まあ小さい子の憧れなんて空想のものが多くて、
大きくなるにつれて芸能人やスポーツ選手みたいな
実在の人物に憧れは移行していくと私は思います。
男の子にとっての憧れって「ヒーロー」なんだと思います。
だからヒーロー像が少しずつ変わっていくんでしょうね。
でも、ある程度のラインでヒーローは
「その年の頃のヒーロー」ではなく
「一生のヒーロー」になったりします。
私もしかり、空想の人物への憧れは薄れ、
心にヒーローの姿を失ってしばらくたった時、
私にとって人生を大きく変える出会いがありました。
20年前。
高知県のとある中古車販売店にある方がサイン会に訪れました。
父曰く、「同級生が高知に来る、会いたいから行ってくる。一緒に来るか?」
とのことだったので、
よく知らずにふわっとついていきました。
そして父は会場に着くと
家族を置いて一人楽屋へ通され、しばらく帰ってきませんでした。
そしてサイン会の寸前に父は戻ってきました。
サイン会にその方が姿を現しました。
階段を非常に降りづらそうにしてたのを今でも覚えています。
その方が座る机の前には幾つかのおどろおどろしいデザインの
鎧のような仮面のような、覆面のようなものが飾られており。
スキンヘッドにヒゲの大柄な男性に、気圧されてしまったのも覚えています。
会話の内容なんて正直覚えていません。
多分実家に写真はあったと思います。
色紙と、その時着ていたTシャツにサインをもらいました。
Tシャツのサインはその後、その方がどんな方かを知って以降、額縁に入れて今でも実家にあります。
家族が片付けてなければ。w
そんなこんなでサイン会は終了。
家に帰った私は父に尋ねました。
お父さん、あの人は一体何の人なの?
そうか、涼佑には見せたことなかったな。
見せちゃろ。
父が持ってきた一本のVHS。
それは一本のプロレスの試合が録画されたものでした。
新日本プロレス。
'96BATTLE FORMATION。
1996年4月29日。
グレート・ムタvs新崎"白使"人生。
プロレスとはなにかも分からないままその試合を見ました。
まずは新崎選手の入場。
荘厳で悲しげな音楽の中、
全身に写経を施し、
お遍路の格好で不気味に入場する僧侶、新崎選手。
対して不気味なイントロと笑い声が響いたかと思えば一点、
豪華絢爛な三味線の音色の中、回転する花火の中から
龍を背負い髑髏を被ったグレート・ムタが現れました。
叫びましたよ。
お父さん!あの鎧!さっきの人の所にあったやつ!?
そうです。
そのサイン会でサインをくれたのは
グレート・ムタの代理人、武藤敬司選手でした。
試合は衝撃でした。
20年前と言えばPRIDE全盛期。
ミルコだシウバだグレイシーだ、等々が席巻していた時期です。
ゴールデンでやってるPRIDEは興味がないながらも目に入っていました。
対してプロレスは深夜だったので目に入る機会もなく、
よく分からんけどデカい人がパンイチでバトってるんでしょくらいのもんでした。
そもそも私、格闘技に一切の興味がなかったのです。w
まあそんなことはさておき
初めてちゃんと見たプロレスの試合。
それがグレート・ムタvs新崎人生でした。
まあそのころには分かってるんですよ。
アニメや特撮は実在しない、
爆発も特殊効果かCGだって。
でも、だからこそ衝撃だったんです。
人間と言うより「霊」や「悪魔」の類にしか見えない二人。
究極の非日常を、実在の人物が実際にリングの上で
お客さんの前で生で繰り広げている。
これがとにかく衝撃でした。
当時の私の中では、
非日常=日常では起こりえない事、と言うカテゴライズでした。
なので、例えば怪獣が火吹いてドーン、これは非日常です。
そして、それは決して実際に見ることは叶わない、
どんなに頑張ったって画面の向こうのもの。
今でもVRゴーグルが限界です。
そして、それ以外の日常。
例えば同じ格闘技でも、人が殴り合うのは日常でも見れるので
別にリングの上で何万人が入る会場でやろうが、
その辺の路上でやろうが、私からすれば日常、とその時は思っていました。
でも!
これは本当に衝撃でした。
確かにVHSなので画面の向こうです。
でも、画面の向こうと言っても
お客さんの前で実際に「非日常」を作れる、作っている人がいる、
そのことが本当に衝撃でした。
当時はうまく言葉にできませんでしたが今言語化するならこんな感じです。
演劇やヒーローショーとは決定的に違ったんです。
なぜならこの試合、ムタが徹底的に白使をいたぶり続けるんです。
試合開始前、白使は持ち込んだ卒塔婆をリングに立てます。
その卒塔婆に書かれた名前は「愚零闘武多」
ムタの漢字表記です。
ムタの墓場はここだ、と試合前に宣戦布告の挑発をおこなったのです。
これに怒ったムタが口から緑の毒霧を噴射!
衝撃でしたね。
いきなり口から緑の霧を放ってくるんですよ。
もうこの辺でムタが人間に見えなくなってます。w
試合開始すると、しばらくの膠着の後ムタは再度毒霧を噴射!
ちょっと待っていつ口に含んだ?
含む暇などないはずなのに。。。
しかも舞台は四方をお客さんに囲まれたリング。
いつどうやって含んだ?
袖に引っ込むとか後ろ向くとかカメラ止めるとか、
普通の舞台やテレビ番組で使う手段は使えない。
だがムタは2発目の毒霧を吹いた。
そうです。
ムタは毒を体内で生成できるんだ(思考停止)
涼佑少年は考えるのをやめて試合に没頭しました。w
そして試合は進み、、、、
ムタは白使の持ち込んだ卒塔婆を叩き割り、
その折った卒塔婆で白使の頭を2度突き刺しました。
そして白使の顔面、東部からおびただしい量の出血。
履いていた袴も血で染まり、元の白色よりも
血の赤色の部分の方が多いんじゃないか、とも言うべき惨劇。
これも衝撃でした。
血のりやメイクでの出血は特撮なんか見てればザラですが
実際に頭叩き割られて、傷口も見えてて、ほんで血もドバドバ流れてるわけですよ。
でも出血でパニくったり
ブチ切れるでもなく、
血を使って卒塔婆に「死」の文字を描き舌なめずりするムタ。
出血のあまり倒れる白使。
そしてそれでも試合は止まらない。
机へのパイルドライバー、スペースローリングエルボー、絞首刑。
白使も反撃の念仏ケブラーダ、ダイビングヘッドバット。
ここらでお気付きかとおもいますが
当時は格闘技的な攻撃しか見る機会がなくて。
パンチ、キック、関節技。
それに対してこのプロレスの試合は
ロープを使った技、派手な投げ技に飛び技、
キックもソバットや輪廻のような回転したりジャンプしてのキック。
倒れこみながらのフラッシングエルボー。
投げもタックルから転ばすのではなく
パワーボム、ジャーマン、ブレーンバスター。
カッコいい技が飛び交います。
もう夢中です。
残虐の限りを尽くすのに技の一つ一つが華麗なムタ。
白使も流血でだいぶダメージがあるように見えましたが、一切感情を見せず、まるで亡霊のように立ち上がりムタに反撃します。
そして試合終盤。
白使は最後の力を振り絞り、彼の必殺技「念仏パワーボム」を狙った白使。
その瞬間でした。
ムタが3発目の毒霧を白使の画面に噴きつけたのです!!!
もうお客さんもわーーーーです。
テレビの前で僕もわーーーーーです。
いやさっきまで目えぐられて叫んでたやん。
反撃食らってしんどそうやったやん。
突然なんで毒霧吹けるん。
そしてたどり着いたひとつの答え。
「ムタは体内で毒霧を生成できるんや(思考停止)(2度目)」
そうして毒霧で視界を奪い激痛にのたうち回る白使に対し
リングの四隅のコーナーに駆け上り、
脳天の傷口にチョップを一撃。
もんどり打って倒れた白使の上に
再度コーナーに駆け上がり、
バック宙しながら100キロ以上の体を浴びせる必殺技「ムーンサルトプレス」を敢行!
ついにムタが勝利しました。
いやぁもうなんと言うか…
衝撃が詰まってた試合でした。
この試合を20年前に見れて良かった。
おかげで非日常への憧れ、
プロレスとの出会い、
エンターテインメントに対しての自分なりの価値観、
そして別人格を持つことへの憧れ。
色んな今ある「涼佑様」と言うコンテンツを形作る上での
ベースとなったのはこの試合、ひいては武藤敬司選手への憧れでした。
人前に出る以上今風に言えば
「コンテンツ」になることが求められると思います。
「コンテンツ」としてのキャラクターを
演じるのか、ありのままの自分をコンテンツにするのか。
それはそのジャンル次第だったり、人それぞれだと思うけど
私は「涼佑様」と言うコンテンツを作るに当たって
虚構のみでもなく、ありのままでもない、
リアルとフェイクの入り交じった姿を模索しながら「涼佑様」を作っていますが
それは結構グレート・ムタやプロレスからの影響が大きいです。
リアルとフェイクの狭間。
ありのままの私では決してなく、
作り上げられたキャラクタでもない。
現実の中に存在する虚構。
それこそが私の憧れたエンターテインメントであり、目指す場所だと思っています。
その全てのベースになった存在、
武藤敬司。
私の永遠のヒーロー。
最後の大阪にムタ降臨も見に行ったし
18歳の時もう一度お話した時、覚えてくれてて嬉しかったな。嘘でも嬉しいじゃん。笑
そんな武藤敬司の引退がいよいよ明日。
ゴールのないマラソンをゴールすると決めた武藤選手。
今はいい時代だね。
俺は仕事休めなかったけど、PPVで見れる!!
本当は会場で生で見たあとPPVを見返すのが1番好きだけど仕方ない。笑
時代が変わるソワソワと
どんな作品を最期に残すのかな、って言うワクワク、
そして武藤敬司がプロレス界から去るこの寂しさたるや。
(ちなみに先日のライブの翌日、グレート・ムタの最後の試合でした。泣いた…)
兎にも角にも明日は見届けます。
きっと泣きます。
誰か武藤敬司オフ会しようよ。。。
では明日に備えて今日は瞑想でもします。おやすみ!
(ちなみに1.1、元旦に見たムタvsSHINSUKE NAKAMURAの試合は完全にムタvs白使に並ぶレジェンド試合だったと思います。
絶対あれ見て将来何かに憧れる人はきっと多いよ!)