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妻の姉夫婦の引っ越し祝いにタルトを焼いて持ってったら、ウイスキーをもらった話。

 専業主夫の僕は、妻の姉夫婦の引っ越し祝いにタルトを作った。僕は昔、パティシエをしていたこともあり、タルトは得意なお菓子の一つなのだ。

 少しだけタルトのことを語らせてもらえば、美味しさを左右するのはなんといってもバターだろう。タルトにとってバターとは、人間にとっての深み、頭の良さに類似すると僕は思う。良質なバターを使うと、生地の状態からでもふんわりといい香りが漂ってくる。焼けばなおさらだ。

 そこで僕は、大丸の地下に入っている製菓専門店でバターを仕入れることにした。そこにはスーパーではお目にかかれないようなバターの数々が並んでいる。見るだけで、楽しくなってくる。ドイツ、フランス、日本、いろいろあるが、僕の目当てはカルピスバター。少々値ははるが、深いコクと奥深い味わい、そしてお一人様一個限定というフレーズが購買意欲を駆り立てる。

 お次はフルーツだ。どうせなら季節ものを使いたいので、桃、巨峰、無花果を買った。

 生地とアーモンドクリームを一日前に仕込み、冷蔵庫で寝かせて、次の日にタルト型にセットし、焼成する。その間にカスタードクリームを作っておく。

[パート・シュクレ]
薄力粉:100g
バター:50g
砂糖:25g
卵黄:1個
塩:少々

[クレーム・ダマンド]
バター:50g
砂糖:50g
卵:1個
アーモンドパウダー:50g

[カスタードクリーム]
卵黄:3個
牛乳:400ml
砂糖:60g
薄力粉:25g
グランマルニエ:少々

 やっと完成。

 さていざ、出陣。

 部屋は、、、散らかっていた。そして玄関先にはイケアの大型家具が。

四人(僕と妻、姉夫婦)で悪戦苦闘のうえ完成。やっぱりイケアの家具は組み立てるのが大変だと再確認。

そのあとは姉夫婦が作ってくれた料理を食べ、お酒を飲んだ。食後には僕の作ったタルト。思いの外、好評でした。

さてそろそろ帰ろうか。ちょっと待って・・・義理の兄に手渡されたのはなんと・・・僕の飲みたかった『イチローズモルト』。

「え?いいんですか!」

「いいよ」

じゃあ、お言葉に甘えて。

海老で鯛を釣るとはこのことか。