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最後の給料日。

 とうとうこの日がきてしまった。25日、最後の給料日。楽しみ半分、不安半分。僕は前の日から少しばかりそわそわした気持ちで一日を過ごしていた。そのせいか夜はぐっする眠ることができたわけだが、最後というのはなんとも不安なものでいくら考えても再就職でもしない限り、この日はやってこないわけだ。

 朝一番にコンビニのATMで確認する。・・・残高は変わっていない。これがタイムラグというやつか。仕方ないので、コーヒーとクリームパンを買って店をあとにする。

 近くの公園で買ったクリームパンをかじりながら、コーヒーを飲んでいると、どこからともなくハトがやってきた。首をかくかく動かしながら、目の前をとことこ歩いている。その姿がなぜかとても不憫に思い、僕はクリームパンのクリームがついていないところをちぎってやった。すると、またどこからともなくハトがやってきた。また僕の同情を誘うような動きだ。しかたないので、そいつにもパンをやった。するとまた・・・いつの間にか目の前はハトだらけになっていた。

はと

 もしかしたらこいつらは、どこか遠くから僕のことを見ていたのかもしれない。そしてパンをくれる甘い人間だということに気づき、一気にやってきたのかもしれない。そんなことを考えていると、段々ハトたちが憎く思えてきた。僕は見せつけるようにクリームパンを一気に頬張ると、わざと群れのなかを歩きハトたちを追い払った。最悪踏んでしまってもハトには痛点がないそうなので、大丈夫だと言い聞かせながら。

 午後一時、最後の給料がようやく口座に振り込まれていた。最後の給料はすこしばかり多かった。一番裕福を感じる瞬間だ。ああ、しばらく現実と向き合うのはやめて、この余韻に浸っていたい。