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現場での最初の壁 / ACL再受傷の要因

今回のnoteでは高校の女子バスケットボールチームへの現場サポートに行き始めて気づいた最初の壁と医療現場での出来事についてお伝え致します。
(2010年頃の話です)

先日の"赤山的スポーツトレーナーへの道 / 長編"でもお伝えしましたが
私はスポーツトレーナーとして理学療法士資格を保持し
スポーツに関わるのであれば前十字靭帯再建術後(以後ACLR)のリハビリテーションについて深く学び習得しなければならない。

そのように感じており、それを基準に職場を選び、一般的にACL損傷の多い女子バスケットの現場を探し現場サポートが開始することとなりました。

クリニックでは毎日のようにACLRの患者様に携わり、多い時には1日10名近く担当することもありました。

院の方針で術前から完全復帰まで同じPTが担当させてもらえ、様々な競技やカテゴリーの選手達の復帰までのリハビリメニューを考え関わっていました。

経験症例が100例から200例くらいになってくると、自分の中でもこれくらいトレーニングしていけば大丈夫。

とか、初期でしっかり動作の制限や生活指導をしていれば歩行後も腫脹が残存しにくくなる。

といった流れが想定できるようになりました。

クリニックで200例くらいを担当するまでは再受傷を経験する事もなく、自分の中でも《ACLRが分かった気でいました》。

バスケ現場でも主にメディカルスタッフとしての関わりであった為に、練習中に痛みを有する選手に対してケア・コンディショニング方法を提示。

その関わりによってこれまでよりも痛みを長引かせる選手が減り、動きもよくなる選手が多くなりコーチからも動きや身体の操作についてアドバイスを求めらえる事が多くなっていました。

そんな臨床3、4年目(現場にでて2、3年目)頃にクリニックでも再受傷を経験し、サポート現場でもなかなか復帰出来ずに苦労する選手を経験しました。

クリニックでの再受傷については今思えば原因は明確で私の短絡的な思考が原因だったのです。

その時の私は膝を完璧に治して、(この完璧という視点も浅かったが)身体機能を受傷前以上にすれば再受傷するリスクは限りなく少なくなる。

そう信じていました。

その時明らかに足りていなかった視点は、以下の通りです。

・身体機能が術前以上であることは受傷リスクを減らす要素の一つではあるが極一部でしかない。(他にもメンタル・環境など多岐に渡る)
・身体機能が受傷以上になってもチームでの立ち位置含めて試合に出場、勝利に貢献出来なければ本人の満足度は低いものになる。

主には上記2つの観点になります。

リハビリ室でのトレーニングフォームや機能が問題なくても、それが現場で問題なくプレイ、パフォーマンスを発揮できているかというと話が別物なのです。

要は、ACLRの選手達にとって膝を治すことも大事ですが、元のチームに戻ることやこれまで以上の活躍をすることが大事であり、それがなされていなければ満足度が低いままでのプレイとなるのです。

そうなると必要以上にアピールしようと身の丈にあっていない動きをしてしまったり。(怪我は身の丈に合わない動きをする時に発生しやすいです)

チームメイトやコーチ陣との関係性の問題から心身相関の観点で、よい身体環境でプレイしにくくなってしまうのです。(特に思春期の女性アスリートの心身相関は慢性障害にも影響を及ぼしやすい)

選手からしてみれば、半年間チームから離れてリハビリすることは孤独であり、不安が多々あります。

膝の機能や身体機能が改善してもその孤独や不安から拭い去るにはまだまだフォローすべき要素があるのです。

チーム内で置かれている立場を初期の頃から考慮し、可能であればチームスタッフと経過等の連絡を綿密にとる。

現場でも痛みを訴える選手のチーム内での立ち位置やコーチからの指導・家族との関係性についても考慮しなければならない。

そのように考えるようになりました。

ちょっとここからは赤山のバイアスもありますが、以下のような選手は再受傷や慢性障害を長引かせやすく注意が必要です。

・責任感が人一倍強い
・悩みを打ち明けられる家族やチームメイトがいない
・自分のパフォーマンスとチームでの立ち位置に納得していない

など心身相関というと繊細なイメージがあるかもしれませんが、一見ハートが強い選手でも一旦歯車がかみ合わなくなった時には症状として身体にサインがでてきます。

その歯車がかみ合わなくなる要素は医療現場だけで判断することは極めて困難であり、チームからの情報収集は必須となるのです。

今回私がお伝えしたいことは。

①医療現場で選手に関わる上でも身体機能は一部でありメンタル・環境含めて選手の心情を深く洞察する必要性がある。

②可能な限り監督、家族、チームメイト、チームトレーナーなど本人とは違った角度から本人や周囲の状況を情報収集すること。

この2点だけでも選手の復帰時のパフォーマンスや慢性的な障害からの解決の糸口があります。

やや抽象的な内容になってしまいましたが、次回以降はこのような心身相関、チームとの関係性について具体例を交えながらご紹介できればと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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