なぜ最低賃金1,500円を目指すのか?② 必要性と懸念点について
今回は2回目になります。前回の記事は上記のリンクからどうぞ。
前回の記事では、今回の選挙戦で各党が最低賃金1,500円の達成を掲げるようになったことの理由や、なぜここにきて急に最低賃金を大幅に引き上げ始めたのか、引き上げ続けるのかを解説しました。
今回の記事では、最低賃金1,500円を数年以内の早期に目指すことの必要性や懸念点についてまとめます。
最低賃金1,500円は目指さなければならない目標
まず前提として、資本主義では豊かな暮らしを維持するためには賃金や物価の成長は必要不可欠です。欧米各国には差を広げられ続けており、発展途上国には追い付かれ始めているのが現在の日本です。
よく「日本は日本のペースがある」とか、「無理に成長しなくてもよい」という意見を耳にしますが、その選択肢のたどり着く先は、エネルギー不足、食料不足の日本です。少なくとも食べるものに困らず、暑さ寒さをしのげて、余暇を楽しむことができる生活、人生は無くなります。そして貧しくなった日本は、経済大国の都合の良い経済植民地になるでしょう。
世界中の人たちが豊かになるという理想や課題はありますが、この記事ではまず日本の豊かさの維持を念頭に展開します。
上記のようなことにならないようにすると、前回の記事でも書いたように、国の経済力=国民の所得を上昇させなければならず、その方法の一つが最低賃金の上昇です。
最低賃金を上げることは問題なのか?
では、なぜ最低賃金を上げることに反対意見が出るのでしょうか。ここではその懸念点を説明したいと思います。
急激な引き上げによる、経済、社会の混乱
既に日本では平成28年から継続して3%程度、最低賃金を引き上げ続けてきました(コロナの影響により令和2年のみ引き上げ額は1円、0.1%の上昇)。
さらには去年の令和5年は約4.5%、今年の令和6年は5%程度上昇しており、この10年で大幅に引き上げているのは事実です。
ここから1,500円を目指すためには、5%から7%の引き上げを最低でも5年程度は行う必要があり、今まで以上の急激な引き上げになります。最低賃金の引き上げは自然と物価上昇を招きます(会社からすればコストが増えるため売値を上げるしかない)。
その結果、一時的に一部の人たち(給与が上がりにくい中高年やシニア社員、年金受給者など)は生活が圧迫されていきます。これが懸念点の一つ目です。
潰れていく弱小企業
次に競争力の弱い会社から潰れていきます。コストが上がる中で、売値を上げることができない会社は潰れていきます。そのため、そこで働く労働者の方たちは少なくとも一時的に失業状態に陥ります。また、そういった会社で働く方々は一般的にスキルが高くないことが多く、転職活動は困難になると見る有識者もいます。つまり一時的に不景気になる、というのが二つ目の懸念点です。
最低賃金は上げない方がいいのか? どうすべきなのか?
ここまでは一般的な酸性反対、双方の意見を書きました。ここからは私個人の意見を書いて、まとめにしたいと思います。
結論としては、5年以内に1,500円、少なくとも1,300円程度の最低賃金引き上げを目指すべきと考えます。
まず会社が潰れていくことですが、現時点で日本は深刻な人手不足社会です。経済同友会などは提言していますが、中小企業は合併や買収などによって、ある程度の規模にまとまっていくべきとしています。個人的にも同意見です。売値を上げても買ってもらえる競争力のある製品やサービスを提供できれば取引先の大企業や一般消費者も受け入れざるを得ません。そして、そこで得た利益を社員の給与として分配されていくことで経済は成長します。
大企業が価格転嫁を拒んでいるから簡単に価格転嫁できない。だからコスト(最低賃金)引き上げはしないほうがいいという意見があります。しかし、競争力を有している中小企業は数多くあります。それらの会社が手を組むことで、大企業も無視のできない存在になれば、適正な価格反映がされると考えます。
そして、そういった会社の再編の中で職を失う方もいるかもしれませんが、現時点で医療・介護事業やバスなどの交通インフラ、建設関係、その他数多くの業種で人手不足は日々深刻化しています。余剰人員を社会で生み出し、必要とされるところに移ってもらう。そういった視点も必要ではないでしょうか。
1,500円は現実的か?
では、早期の1,500円は可能かどうか。個人的には、理論上は可能だが少なくない犠牲や困難を伴うと思っています。特に高齢世代を中心に生活困窮者は増えていくでしょう。現実的なラインは5年後に1,300円達成かなと思っています。ただ、これは問題の先延ばしでしかないのも事実です。
他国の成長率や現時点の最低賃金を鑑みると、やはり2030年までに1,500円というのは必要最低ラインでもあるように感じます。
そういう意味では前回の記事でも最後に書きましたが、この30年間、積極的に国の発展や課題解決に繋がる行動をしてこなかったツケが来ていると言えます。ぬるま湯につかっていた30年間を少しでも巻き返すには、2020年代の1,500円到達という劇薬は必要なのかもしれません。
今回の記事は以上です。ご覧いただきありがとうございました