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貧困化、そして二極化が進む日本はこれから混乱していくことになる話
前回、前々回と交通や結婚から日本の将来を考察してきました。今回は貧困を切り口に考えていきます。
日本の貧困と二極化事情について
日本の貧困化は進んでいると言われています。生活保護受給者は年々増えており、今年も去年より増加しています。
また生活保護受給者ではなくても、8050問題の当事者の方々も数十万人から、場合によっては100万人近くいると言われており、親の年金で生活している方がそれだけいる状況です。当然、親御さんが亡くなられた後の生活展望はなく、現在親御さんの年金で生活している40代~60代の方々が将来的に生活保護に頼ることは確実視されています。
そのため、生活保護費が大幅に増えることが見込まれており、その原資をどうするかが危ぶまれています。
また物価が高騰する中で、賃上げも大企業を中心に進んでいますが、中小企業は進んでいません。日本の雇用者の7割が中小企業勤めであるため、フリーランスなどを含めても半分以上の労働者はなかなか賃金が上がらない状況に置かれています。
全体の2割程度の大企業勤めの人は順調に賃金が上がり(と言っても大企業でもあまり賃金の上がっていない会社も多くありますが)、そうでない方はなかなか上がらないという二極化、差が広がる傾向になっています。
なぜ貧困化は進んでいるのか?
最近、境界知能が指摘されることが増えてきました。境界知能というのは、知的障害にはならないが、それに近い知能指数の方々を指します。これは決して差別や偏見ではなく、学術的に指摘されていることであり、実際これに該当する方々は現代社会でかなり生きづらい状況に追い込まれています。
なぜ、この話を先にしたのか。それは貧困化の原因が、現代社会がかなり高度に発展してしまったからです。
この十数年で現代社会は大きく変わりました。会社では一気にシステム化、自動化が進み、また法律は複雑になり、様々な概念が増えました。
ハラスメント、コンプライアンス、ダイバーシティ、LGBTQ,、SDGs、マネジメント、など。私が関与する人事でも、法制度は格段に増えました(実際に社会保険労務士の資格テキストは10年前から比べて1.5倍くらいに厚くなりました)
また、それにより単純作業の仕事は減り、企画や調整、プレゼン、フロー構築、環境整備など答えの決まっていない仕事の割合が格段に増えました。
そのため、それまで勤勉に寡黙に仕事をすればよかった職種は格段に減りました。反面、仕事に必要な能力(記憶力、理解力、論理性、会話力、文章力、創造力、など)は変わり、ただ真面目に仕事をするだけでは評価されなくなってしまいました。
そうすると、それらの能力を持っていない方々、例えば境界知能の方々などは仕事に対応するのが難しくなり、結果として職を離れたり、心身不調に追い込まれるなど、貧困に追いやられるケースが増えているのです。
二極化の深刻化も同様
二極化も同様です。上記の現代社会で必要とされる能力は、IQ値が高い方々も追い込んでいます。今では技術者も営業職と一緒に営業活動をしたり、クライアント対応、プレゼンを行うことが当たり前になりました。
また経営者も人前でわかりやすく説明する、大衆に効果的に訴えかける力を必要としています(スティーブジョブズや、孫正義さんなど)
IQ値が高くても会話力や想像力は高いとは限りません。大衆に訴えかける力も同様です。そのため能力を天性や努力で持っている人は、大企業に勤めたり、フリーランスで仕事を獲得できる一方、持っていない人は恵まれない環境に行く可能性が高まります。
その結果、持つ者と持たざる者に分けられ、経済格差が生まれ、そして現代社会はさらに高度化することで格差はより深刻かつ大きな広がりを見せています。
貧困化がもたらす害について
貧困化が進むと、人は4つに大きく分かれていきます。
一つは安くても、それでもまともな職について頑張る人。
これはもちろん立派です。しかし、給与水準の低い人がなかなか結婚できないというエビデンスがあります。こういった職業の場合、昇給や賃上げもあまり期待できないことから老後に向けての対策もできません(退職金もない、厚生年金も少ない、貯蓄・資産運用もできない、医療保険等も入れない)。つまり、前回の記事のような小婚化、それに伴う少子化、将来の生活不安、将来的な生活保護などの問題がつきまといます。
二つ目はきついけど稼げる仕事に就く人
例えば女性が水商売や風俗で働くようになる。男性は肉体労働などに就くなどです。
これはまっとうな仕事なので、大きな問題はありません。しかしながら、これらの仕事が稼げるかどうかは、後述する二極化に大きく影響されます。
三つ目は、親に頼る人
これは既に8050問題として指摘されています。劣悪な職場環境に置かれた人たちが、諦めたり、心身を病んで、仕事を離れ、親に頼ることがあります。日本社会では一度、中長期間の仕事のブランクが生まれると、その後の復帰は容易ではありません。
仕事はあっても、安い給与、きつい仕事などの職場にしか戻れないことが多く、上記の一つ目の問題につながったり、また職を離れるというサイクルに戻ります。
しかし、いつまでも親に頼るわけにいきません。親が亡くなったあとに、生活保護に頼ることになったり、生活の仕方がわからず(親が全部やってくれていたから)餓死したり、凍死したり(ガスや電気が止められるため)、という事例が実際に目立ち始めています。
※亡くなる子供も既に60代、場合によっては70代なので、老後の孤独死と混同されることもあり、事態は複雑化しています
四つめは違法行為に走る人
新宿での、たちんぼの増加が問題になっています。それだけではなく、繁華街に家出した未成年がたむろし、飲酒、薬のオーバードーズなどをしている。半ぐれの増加。たちんぼやパパ活などの売春者の増加と、背景に反社勢力がいるなど、貧困は人を違法行為に走らせる原因になります。
違法行為は単純に善悪の問題だけではありません。
例えば、売春が増えると下記の問題が起きます。
・脱税(売春で稼いだお金を納税させることが困難 ※風俗の場合、店側が女性に支払っていることは追えるので、風俗で一定以上稼いでいる女性は納税する場合もちゃんとある)
・病気の蔓延
既に梅毒が非常に広がっています。オランダなども同様の事態が過去にあり、売春を合法化し、性病検査を定期的に行うことを義務付けることで病気の蔓延を防止しました。病気の蔓延は医療資源の浪費、健康な労働者の減少につながり国力の衰退にもつながります。
・反社会勢力への資金流入
違法行為である売春は女性側が圧倒的に不利です。買う側の男性と二人きりで個室に入るわけで、力では敵いません。そのため避妊をしてもらえない、暴力を振るわれるなどの行為が起きかねません。また金銭をちゃんと渡してもらえないなども同様です。そうすると、そこに反社会勢力が入ってきます。彼らは女性からマージンを受け取り、何かあった時の用心棒になります。これは一見、ウィンウィンに見えますが、美人局や暴力事件の温床になっていきます。
結果として、売春の客が減少するなど女性の貧困化が進んだり、警察が疲弊するなど税金がここに投入されることになり、我々の不利益にもつながっていきます。
二極化は貧困化を加速させる
経済を発展させるには、中産階級をいかに増やすかが大事になります。
例えば10人いたとして、
・1人はすごく収入が多く、9人が貧しい収入状況
(4,100万円×1人+100万円×9人=5,000万円)
・10人全員が普通の収入
(500万円×10人=5,000万円)
の2パターンあったとしましょう。
合計の収入額は一緒です。つまり経済規模は同じということです。
しかし、経済が発展するのは後者です。
一人がすごい大金持ちでも、お金はいろいろなところには落ちていきません。ご飯を食べる量は同じです。時間も平等に24時間なので遊ぶ時間も他の人と同じだけしかありません。なので高級車を買う、高い家に住む、ブランドを買う、宝石を買う、高い席でスポーツを見る、など一つのお店に高いお金が落ちていきます。
そして貧しい人はお金を落とすことはできず、安い食料品や最低限の衣服、日用品だけ買うに留まります。場合によっては公的支援を受けることがあるため、むしろ税金が投入されます。
しかし、10人がそこそこお金があると、それぞれがごはん屋さんでご飯を食べ、スーパーでいろいろな物を買い、車を買う人もいれば、旅行に行く人、家電を買う人、絵画を買う人、スポーツを見る人など、いろいろなところにお金が落ちていきます。そのため、いろいろなところで仕事が生まれ、雇用が増え、賃金は上がっていきます。
日本が豊かだったのは、一億総中流と言われるように、この中産階級が先進国の中でも異常に増えたからです。
なので二極化が進み、お金を余暇に使う、ちょっとした贅沢品を買うことができる人が減っていくと、経済が縮小し、雇用が減少したり、賃金が上がらないといった傾向になります。
大きな例が風俗産業です。
現在、年々風俗産業の規模は縮小しています。つまり風俗で働いてもなかなか稼げなくなりました。これは気軽に風俗に行ける収入の人が減っているからです。(他にもモラルの変化なども指摘されますが、しかし大きな理由は貧困化です)
そうすると、お金を稼ぐために風俗産業で働くことにした女性も結果的に稼げず、貧困から脱することができません。
そうすると、どうにかそれでもお金を稼ごうと非合法の売春を行ったり、詐欺などの犯罪行為に走ることになります。また非合法での売春で性病を罹患し、働けなくなったり、子供を産めなくなるなどの状況に追い込まれたり、満足に働けなくなって、生活保護を受給したり、親を頼ることになります。
あくまで一つの例であり、母数としては大きくありません。また風俗産業が儲かるべきというような意見を言いたいわけではありません。
ただ、貧困化を二極化はさらに深刻化させるという指摘をしたいのです。
貧困化と二極化は相乗効果の関係にあり、現代日本はこのサイクルに既に突入しています。
このままだとどうなるのか?
まずは国力の衰退が進みます。また国力が衰退することは外国から輸入する物価がさらに上がることを意味しているので、エネルギー、食糧などの価格はさらに上がります。
また人材が先進国に持っていかれるので、人手不足はさらに進みます。既に出稼ぎする日本人が増えていますが、貴重な若者を他国に奪われてしまうのです。(出稼ぎすると、若い女性はそのまま現地の外国人と結婚する例もあり、小婚化、少子化はさらに進みます。また優秀人材も持っていかれるので、基礎研究力の低下などにもつながります)
といったように悪循環の状態が進んでいきます。さらにはスラム街の形成(問題になっているトー横など、あのようなところがさらに大規模化していくとスラム街につながっていきます)
ほかには反社会勢力の拡大、権力機構の賄賂の常態化、インフラ価格の上昇など、普通の生活を脅かすことが始まっていきます。
現実、白昼堂々と銀座の高級時計店を若者が襲撃、強盗するなど、今までの日本では考えられなかったことが起きています。
結果的に、安全に、快適に生きるためのコストが上がり、安全や健康な生活すら当たり前ではなくなるのです。
まとめ
ここまでいろいろな観点で日本の今後を考察してまいりました。
一つ言えることは日本、そして日本人は今、岐路に立っています。
この30年間で開いた欧米先進国との給与水準の格差を、どれだけ縮めることができるのか。
追いつかれつつある発展途上国との差を、もう一度広げることができるのか。
今の30代独身者に、できるだけ結婚してもらい、一人でも多く子供を産んでもらうことを促進できるのか。今、できるだけ多く子供を産んでもらえれば、西暦2040年ごろには、産まれた子たちは労働力として貢献してくれます。予測されている西暦2040年ごろの大人手不足を少しでも軽減、もしくは回避することができるのです。
貧困や二極化をどれだけ軽減できるか。そのためには、地方と大都市の最低賃金の差を解消する。最低賃金を引き上げる。競争力のない中小企業には退場してもらい、企業の合併・買収を促進することができるか。そして賃上げを促進できるか。
また心身不調などを減少させるべく、日本の特殊な労働事情を改善できるか。満員電車での通勤、苦労を美徳とする文化、異常な年功序列。外国人労働者に頼るならば、なおさら改善しないといけません。
果たして、どうすれば良いのか。個人の努力だけではどうにもなりませんが、
日本を変えるため政治活動をする
日本を将来的に離れてもいいように技術や語学を学ぶ
今から海外に出る、外資企業で働く
など、できることはあります。
これを読んだ方の参考情報になれば幸いです。今回はこれで以上です!