#つながる余白をつくる旅
つながる余白をつくる旅
2020年春、SNSでインドの詩人が発表した詩が話題になっていた。
離れることが「正義」となり、つながることが「悪」となったコロナ禍において、旅の醍醐味だったはずの「未知なる出会い」は価値を失い、「誰とも会わない」ことが旅の目的となった。冒頭の詩は、この突然の価値変化を儚く表現している。
1年半が経った2021年秋、第5波が収束に向かおうとする折に、弊社が提供している旅のサブスク「HafH」では利用者向けのツアーを開催。和歌山・南紀白浜を皮切りに、石川、北海道、高知、長崎で、のべ200人以上が参加した。このツアーのテーマは「#つながる余白をつくる旅」。本来あるべき旅の価値を、取り戻したいと想いを込めた。
高知では龍の形をした神秘的な湖・さめうら湖でカヌーを漕ぎながら自然とのつながりを感じ、北海道ではアイヌの語り部から日本のルーツとつながるきっかけをもらった。長崎では移住者と交流しながら移住の決め手や、ご近所コミュニティについて共有してもらったりもした。
現地集合、現地解散。参加者自身で企画を選び、自分の足で向かう。会議や作業がある場合には、リモートで対応する。旅をどうデザインするかは本人次第というのがHafHが提案する新しい旅のスタイルだ。企画自体をあえて「不完全」にすることで余白が生まれ、この余白をどう使うかは自分の選択次第になる。人任せにせず、参加者同士がつながり、お互い旅を楽しくしようと努めてもらう。自分で選んだ先に「嬉しい偶然」が重なると、人は幸福度を高め、自分の人生を自分で選ぶ自信に繋がっていく。
参加者の約半数は、大学生たちだった。彼らは入学以来、新歓コンパどころか、友人づくりさえ大きな壁に立ち塞がれている。今回の旅を通じて、大人たちと同じ施設に宿泊し、その日感じたこと、これから挑戦したいことを、夜遅くまで語り合う時間になった。年代や性別に関わらず、参加者同士がつながっていく旅を通じて、学生らの顔つきはみるみるうちに変わっていった。釧路ツアーの参加者は、帰宅直後に釧路行きの飛行機を買い直し、友人らに声をかけて20人で再訪準備中。長崎ツアーに参加した東京在住の男子大学生は「冬から長崎に住んでみたいと思っています」と、この旅が彼の人生の転機になりそうだ。
つながれなかった2年間があったからこそ「つながる余白をつくる旅」の価値はコロナ以前に比べて高まっていると感じる。ワーケーションや多拠点居住も、仕事をしに遠出するわけではなく、自然とつながり、人とつながり、自分らしく生きれる場所を探しながら、その場で仕事をしている、という表現の方が近い。居心地の良さから、2回、3回と通い出し、複住スタイルになっていく。正解のないVUCAの時代に、自分らしくつながりを感じられる場所は、誰かの情報を頼りにしても見つからない。自分がその地でつながりを感じられるか。また会いたいと思う人や景色に出会えるか。答えはどこにもない、自分自身の中にある。
トップ画像撮影:MONA photo
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