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黒質線条体ドーパミン経路による聴覚識別行動の制御
Nigrostriatal dopamine pathway regulates auditory discrimination behavior というNature Communicationsに掲載された論文から。
ラテン語で黒い物質(Substantia nigra)を意味する黒質という脳の部位と聴覚の関係についての研究です。
黒質緻密部はパーキンソン病にも関係している
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今回紹介する研究はパーキンソン病とは関係はありませんが、黒質の緻密部の異常はパーキンソン病の原因もなっています。
黒質緻密部にはドーパミンを作る神経細胞が存在します。パーキンソン病は、この黒質緻密部の神経細胞が減少し、ドーパミンが作られる量が減ることで起こります。
ドーパミンと言うと報酬系のイメージがありますが、運動制御にも関わっており、黒質で作られるドーパミン量が減少することで、線条体やその先の脳部位への信号が弱くなり運動機能に障害が起きます。
ちなみに黒質は「緻密部(pars compacta)」と「網様部(pars reticulata)」に分かれていますが、黒質緻密部はニューロメラニン色素を含有するニューロンが多いため、黒色を帯びています。
黒質緻密部から聴覚線条体へのドーパミン経路を阻害すると…
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オプトジェネティクスを用いて、黒質緻密部から聴覚線条体へのドーパミン経路を抑制したところ、マウスの音判別タスク(高い音と低い音を聞き分ける)の成績が低下しました。
※CAV-Creウイルスを用いて、聴覚線条体に投射している部位が黒質緻密部(SNc)であることを特定。さらに、CAV-Creと光に反応するチャネルであるアーキロドプシンTを黒質緻密部で発現させた。これを緑色の光パルス(530nm)で刺激して神経を抑制した
ドーパミン経路を阻害しても、運動機能には影響を与えなかった
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運動時間や早期離脱率などの運動パラメータを、通常のマウスとドーパミン経路を抑制したマウスで比較したところ、ドーパミン経路の抑制による影響は見られませんでした。
また、オプトジェネティクスでドーパミン経路を抑制した直後(=もう抑制はしていない状態)のタスクでは、(直前のタスクでの)ドーパミン経路抑制の影響は消えており、通常のマウスと(直前のタスクで)ドーパミン経路を抑制したマウスで正答率に差はありませんでした。
黒質ドーパミンの放出は難易度依存的である
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高い音が鳴るのか低い音が鳴るのかの確率がはっきりしている難易度が低い時に比べて、それぞれの音の鳴る確率が五分五分の難易度が高い時の方が、黒質からのドーパミン放出が多いという結果になりました。
【龍成メモ】
非常に専門的で恐縮ですが、たまに聴覚系(いや、たまにじゃないかもですが)の論文を紹介して行きたいと思います。
全く関係ないですが、最近お笑いラップアニメのYoutubeにハマってしまってます。これとか。これとか。
Rachel LeslieによるPixabayからの画像
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![龍成(りょうせい)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72573886/profile_99bdc138f01327b47543e60e7b490414.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)