「他の生命」から取り入れた遺伝子によって昆虫は強化されている
Genes purloined from across the tree of life give insects a boost というNatureのRESEARCH HIGHLIGHTから。
昆虫は「バクテリア、菌類、植物、ウイルス」から1,400以上の遺伝子を取り入れている
ハエからミツバチまで218種のゲノムを包括的に解析したところ、昆虫は「バクテリア、菌類、植物、ウイルス」から1,400以上の遺伝子を取り入れている(Horizontal gene transfer=水平伝播)ことが明らかになりました。元論文はCellに掲載されています。
昆虫は細菌から1,115(79.0%)、真菌から194(13.8%)、植物から42(3.0%)、ウイルスから36(2.6%)、他の系統から22(1.6%)、合計1,410の遺伝子を取り入れてます。
求愛行動を高める外来遺伝子
蝶と蛾の共通の祖先に存在する遺伝子(LOC105383139)も他の種から取り入れられた遺伝子です。この遺伝子を遺伝子編集(CRISPR-Cas9)によって機能しないようにしたところ、オスのメスへの求愛行動が著しく減少しました。この外来の遺伝子(LOC105383139)が交尾率を向上させていることが分かりました。
一見無駄に見える遺伝情報が遺伝子発現に寄与
遺伝子には、遺伝子からタンパク質を生成する際に使用されない、一見無駄に見える「イントロン」というものが存在します。
他の種から獲得された遺伝情報のうち、イントロンを持つものと持たないものを比べた場合、イントロンを持つ遺伝子の方が高い発現量を示していました。
外来遺伝子内のイントロンは他の種から遺伝子を獲得した後に、ネイティブ側(=昆虫)で追加されたことも分かりました。このことから、イントロンの追加によって外来の遺伝子の長さをネイティブの遺伝子の長さに近づけ、それによって遺伝子発現の可能性を向上させていることが推定されます。
【龍成メモ】
蝶や蛾が細菌(リステリア属菌)から得た遺伝子によって求愛行動が活発になり、繁殖力が増しているという事実が非常に興味深かったです。
また遺伝子としては情報が使われず一見無駄に見えるイントロンがあることで遺伝子発現が向上している、つまり無駄ではなかったという点も面白いです。
昆虫は求愛行動の他に、解毒や防御(寄生虫に対して)能力などについても、他の種の外来遺伝子から獲得しているようです。
※写真はLeptidea sinapis(シナピスヒメシロチョウ)Wikipediaより
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