数十年の休眠を経て、神経科学はルネッサンスを迎えている(The Economist)
After fallow decades, neuroscience is undergoing a renaissance というThe Economistの記事から。
神経科学(脳科学)が休眠してたか?と言われればそんなことはないのですが、外部から見ると飛躍の時期に来てるんでしょうね。
とりあえず記事にあるキーワードを挙げるので、何かの参考にしてください。
基礎技術としてのキーワードリスト
遺伝学(genetics)
分子回路(molecular circuitry)
光遺伝学(optogenetics)
オルガノイド(organoids)
新しいイメージング技術(new forms of imaging)
新しい治療法
神経免疫学(neuroimmunology)
(壊れた遺伝子を正常に機能させる)遺伝子治療(gene therapy)
サイケデリックドラック(psychedelics)
神経調節(neuromodulation)
遺伝子や分子回路に基づく精密医療(precision medicines)
遺伝子編集(gene editing)
幹細胞移植(stem-cell transplants)
RNA療法(RNA therapies)
過去のnoteからキーワードに関連した記事をピックアップ
過去の私のnoteから上記キーワードに関連した記事を拾ってみたいと思います。
遺伝学
寿命を縮める災害ストレス(FT)
ハリケーンを経験したサルが、人間に換算すると7~8年も老化していたという話です。人間でもテロなどの強いストレスにさらされると寿命が短くなったり、加齢に伴う病気にかかりやすい可能性があるということです。
科学は貧しい子供たちの収入を増やすことができるのか? | The Economist
この記事の中では「遺伝情報を教育に活かすべきだ」と主張するテキサス大学オースティン校のキャサリン・ペイジ・ハーデン教授が登場します。
遺伝以外の要素も絡んできますが、母親の学歴などの社会的格差から、子供が小さい時に触れる言葉の数に大きな影響を及ぼし、それが子供の脳波の違いとなって現れたりもします。
生まれ(遺伝子)か育ち(環境)か? ~ まずはキツネの話
野生のキツネを繁殖し、相対的に人になつく性質(実験者に近づくなど)を持つキツネのみを選別しさらに繁殖するということを繰り返しました。
そうすると第10世代で「タレ耳のキツネ」や、家畜化された動物によく見られる「まだら模様」が現れました。さらに世代を重ねると、ストレス反応に関係するコルチコステロイドのレベルが下がり、キツネの脳にはより高いレベルのセロトニンが存在することもわかりました。
これはソ連の遺伝学者ドミトリ・ベリャーエフが行った実験です。
オルガノイド
脳オルガノイドを用いて神経発達障害の原因を解明
脳オルガノイド(人工的に培養された数種類の神経細胞を含む合成組織)を用いることで、結節性硬化症(TSC)の原因を解明した研究です。
※本当の狙いは疾患の分析をもとに、人間の脳の発達に関する基本メカニズムに迫る、という感じかもしれませんが
耳が聴こえなくなってしまう薬とオルガノイド
耳毒性と呼ばれる耳に悪い薬、今回は抗がん剤であるシスプラチンが内耳にどのような影響を与えているのか、内耳オルガノイドを作成して検証した研究です。
ネズミの脳に埋め込まれた人間のオルガノイド
「人間の知能を持ったネズミが作られた?」と一部で騒がれた、あの研究です。実体としては全くそんなことはないので、是非noteに目を通してみてください。
新しいイメージング技術
新しい脳イメージング手法、エピジェネティックMRI
日常会話で「生まれつきだよね」とよく言いますが、これはDNAに書かれた情報の話です。ただし、DNAに書かれているからと言ってすべての情報が使われるわけではありません。難病の遺伝子を持っているけど、本人はいたって健康というのが、これにあたります。
環境や努力(他にも様々な要因)によって、DNAに書かれた情報が使われるようになったり使われなくなったりする機構のことを、エピジェネティクス(な変化)と呼びます。
このエピジェネティクな変化を捉える(=撮像する)ことに成功したのが、表題にあるエピジェネティックMRIという撮像方法です。
遺伝子治療
科学は新たな遺伝子革命を可能にした(The Economist)
8月27日版(2022年)のThe Economistは特集ではないのですが、ゲノムの記事がもりだくさんでした。光合成の効率を向上させる遺伝子組み換えの話や、「血液がん、脊髄性筋萎縮症、血友病、鎌状赤血球症」などの治療にも遺伝子治療が登場しつつあるということが紹介されています。
サイケデリックドラック
サイケデリックの微量摂取が気分を改善し、メンタルヘルスを向上させる
マジックマッシュルームの主成分シロシビンをマイクロドーズ(少量摂取)する研究についての話。
上司が部下にサイケデリックを試させたい(The Economist)
アメリカの一部の州でシロシビンやMDMAが合法化される流れもある中で、従業員向けのカウンセリングやリトリートプログラム(合宿みたいな)が出てきているという話。さすがアメリカ。
LSDのマイクロドージングは、メンタルヘルスにとって、良いの?悪いの?
マイクロドージングは "A Really Good Day" のような大ヒット本が生まれるほどのブームがありましたが、そんな熱狂に一石を投じるシカゴ大の研究です。
#TheEconomist #ブレインテック #脳科学 #神経科学
Michal JarmolukによるPixabayからの画像