赤ちゃんが胎内で「解像度の低い音」にさらされることのメリット
MITの研究ニュース(Early sound exposure in the womb shapes the auditory system)から。
胎児が子宮内で浴びる音は、主に低周波
子宮の中で胎児は、妊娠20週目ごろから音を聞き始めることができます。しかし、羊水や周辺組織の消音効果によって、胎児が浴びる音は低周波に限られます。つまり豊かで複雑な音を胎内で聞けるわけではありません。
入力の質の低さは胎児の学習にプラス?
MITの研究チームは、この「入力の質の低さ」が実は人間(や他の生物)の初期の学習にとって、逆に有効なのではという仮説を持っています。
視覚の話になりますが、この研修室の過去の研究においてコンピュータモデルに「ぼやけた画像」に最初の時期に触れさせることで、後の学習効率が向上したという発見があります。
初期の音声学習において重要な低周波
今回の研究では、人間の聴覚システムを模した計算モデルに「フルレンジの周波数(=豊かな音)」にさらすと、より長い時間をかけて情報を処理する必要がある課題(例えば音声から感情を識別する課題)においては、汎化性能が低下することが示されました。
逆に低周波の後に全周波を加えた、発達登場の乳児が受ける音刺激に最も近い音をコンピュータモデルに投入した際には、音声からの感情学習において最もよい学習パフォーマンスが得られました。
視覚の研究と同様に聴覚でも、発達の初期に質においては低下した入力があることで、後々優れた学習能力を発揮できることになります。
早産における「音の環境」は改善できるポイントがあるかもしれない
早産で生まれた赤ちゃんは、生まれてすぐに全周波の音に曝されてしまうので、本来はまだ母体において低周波で音の学習をしていた期間、低周波で音を学習する機会が奪われてしまうことになります。
従って、早産後の初期の時期(まだ母体にいると想定される時期)においては、母体内を模した低周波を赤ちゃんに聞かせてあげることが後の音の認識、聴覚の発達にとってはよい可能性があります。