(ニッチ戦略)タマス:選手を花にたとえるならば、私たちはその花に仕える蝶でありたい
田舛彦介氏の卓球にかける熱い思い
創業者の田舛彦介氏は卓球の選手でした。創業前の話になりますが、1941年の国体(当時は明治神宮体育大会)で卓球が「軟弱なスポーツ」という理由で除外されます。
憤慨した田舛氏は厚生省と日本卓球協会に猛烈な抗議。そして「卓球の名誉をかけて」地元山口県のマラソン大会に出場し優勝してしまいます。
自身が使いたいと思う卓球用具がなかったため創業
田舛彦介氏は混合ダブルスで日本一に輝くほどの実力でしたが(男子シングルスは2位、男子ダブルスでも2位)、選手時代に良いラバーの入手に苦労します。
この経験をもとに、誰もが簡単に入手できる高性能ラバーを日本でつくりたいと志し、1950年(昭和25年)にタマスを創業します(田舛彦介 生誕100年より)。
卓球という小さな井戸を深く掘れ
現在、卓球は競技人口12位のニッチスポーツですが、野球(10位:814万人)やサッカー(11位:814万人)と比べても766万人もおり、遜色ありません。
しかしサッカー用品市場が630億円(矢野経済研究所)に対して、卓球用品市場は130億円しかありません。田舛氏が創業した当時は、卓球人口も市場も今よりさらにニッチだったことが想像できます。
そのニッチ市場を徹底的に開拓するという意味で田舛氏が掲げたのが「卓球という小さな井戸を深く掘り続ける」というモットーです。
主要ブランドで6割近いシェア
タマスの主要ブランドであるバタフライは、世界トップレベルの選手のうちラバー(=ラケットに貼って使用する)のシェアで53.2%、ラケットに至っては56.6%ものシェアがあります。
選手を花にたとえるならば、私たちはその花に仕える蝶でありたい
このバタフライ(蝶)というブランド名は、創業者田舛氏の「選手を花にたとえるならば、私たちはその花に仕える蝶でありたい」という想いから来ています。
赤字でも続けた雑誌「卓球レポート」
卓球界を盛り上げ続けることが同社の生命線であるため、赤字覚悟で雑誌「卓球レポート」を出し続けました。
同誌は2018年4月号(3月20日発行)をもって休刊しますが、今は形を変えウェブサイト「卓球レポート」として卓球界を盛り上げ続けています。
【龍成メモ(模倣はよし。しかし最後は、君の卓球を創造せよ)】
私も卓球をしていた頃があるのでButterfly(バタフライ)のブランドは知っていました。しかしまさか、このような美しい意味(選手を花にたとえるなら…)があるとは知りませんでした。
田舛氏は他にも数々の名言を残しているようです。
Photo by Ivan Cortez