団塊の世代は、なぜケチなのか?
Baby-boomers are loaded. Why are they so stingy? というThe Economistの記事から。
莫大な資産を有する(米国の)団塊の世代が引退すると、大消費時代が来ると思っていたが…
アメリカのベビーブーマーは人口の20%しかいないのに、国の純資産の52%を所有しています。
チャールズ・グッドハートやマノジ・プラダンの「ライフサイクル仮説」によれば、引退したベビーブーマーは生産する労働力(=デフレを生む)から消費をメインで行う消費者(=インフレを生む)に生まれ変わり、消費ブームと共にインフレ率と賃金の上昇が来るはずでした。
しかし、実際は資産を温存し続ける傾向にあります。
イタリアや日本の先例
世界で最も高齢化が進むイタリアや日本では、長期に渡る低インフレと低金利が続いています。
学者達が ”Wealth Decumulation Puzzle” と呼ぶ、想定以上に高齢者の資産取り崩しが少ないという現象が起きています。
日本では純資産額の1〜3%しか消費に回さないため裕福なまま亡くなる人が多く、イタリアでは退職した高齢者の40%が引き続き富を蓄積しています。
他の国々でも高齢者は貯蓄に励む
アメリカでは1990年代半ばまでは、高齢者は支出が収入を10%上回り、蓄えを食いつぶしていました。しかし2015年以降は収入の1%程度を貯蓄しています。
カナダでも2015年以降に退職者の貯蓄率が上昇。韓国も2019年から2023年にかけて、65才以上の貯蓄率が26%から29%に上昇。オーストラリアに至っては2000年代初頭には65才以上の人の収入はほとんどに貯蓄に回っていませんでしたが、2022年には収入の14%を貯蓄するようになりました。
日本でも貯蓄率が急上昇しています。
高齢者が消費しない隠れた動機、それは相続、そして「長生きリスク」
高齢となったベビーブーマーは、自分たちで資産を消費してしまうのではなく、学費の支払いや家の購入で苦労する子供たちに資産を残したいと考えているようです。
日本でもよく言われている「長生きリスク」を彼らは意識しています。つまり、いつまで生きるか分からないため、長生きしても大丈夫なように資産を使い切らずに生活しています。
【龍成メモ】
そもそも歳を取るごとに、一般的には「消費パワー」が低下する気がします。若い方がエネルギーがあるため無邪気に消費することができます。
特に病気になり、体が思うように動かなくなってからの散財というのは想像がつきません。
とここまで書いていて、都内に出てきた老人向けの超高級マンション(介護体制付き)を思い出しました。価格についても部屋や年齢によっては2億円を超え、なおかつ毎月50万弱維持費を払う必要があります。
上記は富裕層に限った話にはなりますが、若い時のようなパワーが必要な消費ではなく、安心と快適を上手く設計できたところにお金が流れていくのかもしれません。