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原作ゲームファンが見る「Amazon primeドラマ 龍が如く」後編

龍が如く。
20年続く人気ゲームシリーズ。
実在の街をモチーフにした架空の街「神室町」と、日本の裏社会を舞台にした作品で、人間ドラマを主に描くアクションゲームです。
最新作のナンバリングは8。
実写映画や舞台など、メディアミックスもすでに多作品存在しています。
そんな人気作品「龍が如く」が、今回Amazon primeでドラマ化。

これは後半3話分の感想です。
前編の感想はこちらから読めます。

当然のようにネタバレですので、気になる方はバックプリーズ。


残り3話更新

龍が如くドラマ、10月25日に前半3話が公開。
後半3話が、11月1日に公開になりました。

まずはおさらいおさらいしとく?

前半3話のあらすじはこんな感じ。

1995年。
桐生、錦山、由美、ミホ(錦山の妹)の四人は、孤児院「ひまわり」・父がわりの風間からの自立を欲していた。
まとまった金を求めて実行したのは、神室町にあるゲームセンターの襲撃。杜撰な手口ながらもうまく運んだかと思われた計画だったが、そのゲームセンターは堂島組というヤクザ組織のもつ店舗だった。次の日には身元が割れ、ひまわりに押し入るヤクザたち。間に立った風間と、子どもたち4人は堂島組事務所へ連行される。

風間は元東城会の若頭だった自分の顔に免じて子どもたちを許すよう組長に願い出るが、風間の懇願も虚しく、堂島は聞く耳を持たなかった。
堂島は子どもたちに、店の修理代や迷惑料として多額の借金を負わせ、風俗やマグロ漁船で働いて返せと脅す。断る選択肢は存在せず、返せるあてもない額に愕然とする子どもら。

そこで桐生は、自分を堂島組に入れるよう直談判をする。
もともとゲームセンターの襲撃は、組入りのための足がかりとして決行したのだった。桐生は、堂島組が運営する地下闘技場で幼い頃に見たチャンピオン、「堂島の龍」に憧れ、その背中を追って自分も闘技場で戦うために、かねてから堂島組入りを望んでいたと言う。
面白そうだと思った堂島は勝てたら組入りを認めるとして、桐生を地下闘技場に出場させる。辛くも勝利し、晴れて堂島組に入ることに。
それを受けて、錦山も堂島組入りを志願。こちらも組入りを果たし、由美とミホはセレナでホステスとして働くことになる。

神室町の闇に身を置くこととなった4人は、組から与えられた閉店した古い銭湯を住処として、神室町で暮らす。ひまわりと風間の管理から離れ、自立した生活を送ることは4人共通の本来の目的だったこともあり、自由を謳歌し楽しみながら4人はそれぞれ自分の道を進み出す。


この頃東城会は、神室町再開発計画と土地を巡るビジネスに関与していた。特に堂島は、神室町にランドマークであるミレニアムタワーを立てる計画のために、エドガーが権利をもつ土地を欲していた。

土地の権利書を巡る各組織の思惑と暗躍のなか、兄貴分の渋澤と共に権利書を盗み出すことに成功した桐生と錦山。しかし盗みに入った先で、エドガーの死体を発見する。また、権利書と同じく必要な判子は見つけることができず、エドガー本人が死んだことでその手がかりも失ってしまう。

死体が出たことで出資者が離れ、焦る堂島。エドガー殺しの犯人として渋澤が逮捕され、このままでは自分たちも組から処分されるであろうことを予期する桐生と錦山。
同時期、ホステスの仕事が祟って倒れたミホの看病のために風間が神室町に来ていた。その電話のやり取りを聞いたミホから、エドガーの妹が判子を持っていることを知る錦山。二人は失態の払拭のため妹を抑えにかかる。
二人は判子の奪取には失敗したが、最終的にハンコは堂島に届けられ、土地は堂島組のものとなるのだった。

堂島組での下積みをこなしながら、桐生は並行して闘技場で順当に勝利を重ね、堂島の龍への道を進んでいた。堂島から1勝するごとに刺青を少しずつ彫ってやると言われ、背中に龍の姿が現れつつあった。

一方、由美は行方知れずとなった実の姉、アイコを探していた。アイコは、母の自殺ののちに妹の由美と共にひまわりに預けられ、桐生や錦山たちとも知り合い幼馴染になるが、ある日突然ひまわりから姿を消した。しばらくは手紙のやりとりがあったが、それも途絶えてから随分たっていた。

金も稼げるようになりツテもできた由美は情報屋を使い、大阪にいるらしいと聞いてミホと共に向かうが、結局本人に会うことはできなかった。
しかし実はアイコは情報通りそこにいたのだった。


2005年。
桐生は獄中にいた。
投獄前からの知り合いである刑事・伊達から、大阪の極道組織、近江連合から100億が強奪されたと聞かされる。近江連合は東城会の関与を疑っており、このままでは西と東の極道の抗争が起きる。それを止めるために、特赦で出所させるので力を貸してほしいと依頼される。

自分には関係ないと突っぱねる桐生だったが、その強奪現場で目撃された女が、由美の姉アイコであることを知る。近江連合はアイコの近親者である由美を狙ってくるだろう。また、今や堂島組組長である錦山も矢面に立つことになる。抗争が起きれば無事では済まない。

家族のため、100億強奪事件の解決に動く桐生。

時期を同じくして、死体に逆さの五芒星を掘り込むことで知られる、新宿の悪魔と呼ばれる殺人集団が暗躍していた。


以上が、前半3話の大まかなあらすじ。
原作ゲームとはストーリーが大きく異なり、それに伴ってキャラクターの性質等も変更されています。

ちょっと引きが弱いのが困ったところで、続きが気になる!とさせてくれないのがネック。
今のところは、先行きが気になるほどキャラの魅力を描けておらず、ストーリーも意外性のある展開ではない……と言わざるをえません。

「伏線の料理次第では面白くなれる可能性アリ」くらいの評価となっております。

さて。
後半へ残された疑問点を解消しつつ、どこまでキャラに愛着を持ってもらえるかが勝負となった後半戦(原作との絡み?そんなもんに期待してはだめ)。
前記事でもまとめたリストをなぞりながら、どうなったのかを見ていきたいと思います。


後半への宿題とそのアンサー

ミホはどうなったのか

前半で、ホステスの仕事の最中倒れたミホ。あの描写だけでもおそらく飲酒に向かない体なのだろうな……ってことは察せられたのですが、その後再び倒れ、入院。腎不全であることが判明します。
一時凌ぎとして人工透析が行われますが、根本解決には移植手術をうけるしかありません。検査の結果錦山は適合せず、移植の順番待ちをすることになります。また手術には莫大なお金がかかるため、桐生・錦山・由美の三人は金を作るために奔走することに。
そうしているうちにもミホの病状は進行していきます。焦る3人。

ミホのことを知った堂島は、錦山に臓器ブローカーを紹介。ブローカーはすぐに適合者を見つけ、金さえあればすぐにでも来日できることを知らせます。そして堂島は”あること“をすれば、臓器代も手術費用も全てもつと言いました。

その”あること“とは、桐生を試合で負けさせること。
ミホの手術代のために必死にファイトマネーを稼ぐ桐生は今や負けなし。闘技場のスターとなっていました。トーナメント最終戦、桐生が勝つと予想される試合で八百長を仕掛け、対戦相手に賭ける堂島に大勝ちさせること。それがミホを救う交換条件として錦山に提示された条件でした。

兄弟の夢と妹の命を天秤にかけて迷う錦山でしたが、組の親に逆らえるはずもなく、試合中飲み水に薬を盛ります。しかしその場面を由美に咎められ、結局計画は頓挫。詳しい事情も説明できぬまま、優勢の桐生に「ファイトマネーだと足りない、妹のために負けてくれ」と懇願します。

以降迷って実力が出せず、敗北濃厚となる桐生。
事情がありそうな錦山の言と、憧れの堂島の龍。散々殴られて朦朧とした意識の中で、かつてミホにねだられたアッパーカットを繰り出し、結果、テクニカルノックアウトで試合に勝利してしまいました。

その後病院へ呼ばれ急ぎ向かった三人は、心臓への負担が大きすぎてこれ以上透析は施せないと伝えられます。それはミホの死が近いことを意味していました。錦山は桐生に「おまえのせいだ」と言い、病室を去りました。
残された二人は桐生の勝利を応援してくれていたミホに、桐生の勝利を伝えます。おめでとうと力なく祝うミホの言葉に涙する桐生。

金は後からなんとかするからミホを救ってくれと医師に縋りついて訴える錦山。しかし医師は、たとえ臓器が用意できて移植ができたとしても、既に手術には耐えないだろうと言われます。逃げるように去る医師は「そもそも錦山の臓器は適合していた」という衝撃の事実を口にします。ミホの腎不全が発覚したすぐに調査したので、その時点であれば助けられたはずでした。
その足で堂島に紹介されたブローカーの元へ向かう錦山。「本当に臓器提供者を用意していたのか」と詰め寄りますが、ブローカーは「自分は金をもらって言われた通りにしただけ、まともな病院にかかっていれば助かったのに」と宣います。

全ては堂島が描いた絵でした。ミホが救えなかったのは桐生が勝ったせいではなく、自分が桐生を負かせる駒として、堂島に利用されたからでした。絶望する錦山。
憔悴しきった錦山は放心状態で住処に戻り、そこにいた由美に迫り、拒絶されてしまいます。


原作では錦山の妹は、長く闘病生活を送っていることが描かれます。難しい病気で何度も手術を繰り返し、最後には亡くなってしまいます。こちらの原因となったのはヤクザがらみではありませんでしたが、桐生収監後に病んだ錦山が騙され、結果死んでしまう流れは原作に倣ったものでした。

ミホが死んだのは「桐生のせい」。桐生が勝っちゃったせいではないけれど、勝っても負けてもミホは助からなかったことを思うと、結局は桐生のせいってことになっちゃいますよね。
ミホがホステスしてるのも桐生のせいだし、ヤクザに絡んだのも桐生のせいなので……。

そして風間さん、何もできず。
ここだけはちょっと本当に解せない。少なくともなんかしてる描写は必要だったんじゃないかな?と思いました。
特に錦山は風間さんへの反発が強いみたいだったので詳細は知らせていなかったのかもしれませんが、ミホ自身には連絡ついたと思いますし、金集め始めた時点で風間には頼るべきじゃないですか?風間への反発の方がミホの命より大事ってことはないはずですよね?

由美に抱きついて迫ったのはシンプル〜に嫌でしたね。ついでみたいになにやっとんねん!
原作ファンへのヘイトをしっかり重ねていくじゃないですか。20ポイントくらい溜まりましたよこれで。

ちなみに冴島がサクッと死んだのとか、遥がめちゃくちゃ生意気なクソガキとして描かれてるのでそれぞれ20ポイントずつくらい溜まってます。

原作では由美に迫るのは堂島組長です。彼は女に目がないので、由美にも手を出そうとし、そしてそれにキレた錦山が銃を持ち出す……というのが物語的にも重要なポイントなんですよね。
錦山も桐生も由美が好きでした。由美は桐生が好き……という、いわゆる三角関係。これは原作に倣った形です。
原作は、由美はお互いとの距離感を変えたくなくて踏み出せない、錦も由美は桐生が好きなんだろうな……となんとなく思ってて、お互い身動き取れずにいるのがエモなんですけどね。ドラマは恋愛要素をここまでほぼ描写してないので、けっこう唐突に感じました。


親殺し、殺したのは桐生?

殺したのは錦山でした(でしょうね)。
上記したミホの死の真相を知ってからの流れでの殺害です。

原作では由美を襲われ、怒りで突発的に殺してしまったが、ドラマ版のほうがまぁ説得力はありますよね……。
あの天真爛漫な妹の仇となれば、錦山の強い殺意も納得できます。

ただそれだと問題なのは、桐生が庇う理由が希薄なことなんですよね。
原作版だと由美のことに加え、妹(この時点では闘病中、肉親は錦山だけ。桐生は妹と直接の面識はなさそう)のことがあるので、親殺しを桐生が着る強い理由がありました。

ドラマ版だと罪の意識?
まぁミホが死んだの桐生のせいだしな(広義的には)。
ただ直接的には堂島のせいで死んだともうわかってるんだとしたら、俺にも銃を寄越せ!撃たせろ!になっててもおかしくないと思うんですけどね。

ただ桐生的にもミホのことに責任を感じながらも、堂島とのこと何で話してくれなかったんだ?と思っていそうですよね。お互いにお互いを裏切ったと思っている……みたいな。
桐生には「よかったじゃん、堂島の龍になれたな!(目は彫ってもらえなかったみたいだけど)」と思わなくもない。
この2人の関係性に関しては、この解釈が上手くハマる気がします。

ドラマ版錦山がやけに堂々としていて、庇ってくれた桐生に罪悪感を感じて病んでない理由はわかりましたね。この錦山なら「あ、庇ってくれんの?じゃあどうぞどうぞ」くらいに思ってても不思議じゃない。だってミホが死んだのは桐生のせry

いや、本来はそうじゃないはずなんだけど……ミホの件を受けて、由美にも拒絶されて、その時点でもう壊れちゃったんだな。


近江連合から盗まれた金の行方

アイコが持ってました。
ほとんど使ってなかったし、近江にお返ししたらなんか許されました。めでたしめでたし、よかたったね(そんなわけある?)。

アイコの目的は?

これはまじでわからん。
目的なんか別にないんでしょうね。
妹を置いてひまわりを出たのも、由美が大阪にまで会いに来たのに会わなかったのも、しばらくして神室町に会いに来たのも、100億盗んだのも。

遥に賭ける愛情だけは本物。遥が死んだと思い込んで自殺しようとしてたところを見るに、多分それは本当なんだろうと思う。まともに教育しているとは思えないわりに、遥からも大事にされているようですし。

でもじゃあヤクザの金に手をつけた?
バレたら娘にも被害行くのわかるでしょ?とも思うから、本当に何も考えてないんだろうな。

妹に会いに来たのは金が入り用だったからなんでしょうね。
最初にセレナに会いに来たところから、麗奈への報復として堂島組が未成年雇用の検挙を画策して、ツテがあってアイコに依頼が行き、裏工作を果たした、と。
それで妹にどんなダメージがいくのかまでは考えてない。
妹が自分の手紙大事に保管してるのを見て何を思ったんですか?何も思わなかったわけないですよね。でも見て見ぬふりをした。

ずーーーっとそうやって生きてきたんでしょうね。
目の前にぶら下がった餌に飛びついて、本当に大切なものを棒にふるような人生。お前が幸せになれるわけないだろ、としか思えない。何?ハワイに別荘?バカかよ。幸せはずっと手元にあっただろ。

最後の最後に凶弾から妹を庇うんですよ。本当に大事にすべきものが何かわかってるんですよ。でも大事にできないんですよね。根っからそういう性質なんだ。だからこの話は終わり。

面をつけた人物は何なのか?

錦。お前……厨二病に目覚めちまったのか(その歳で)。

堂島組の本部もなんか彫刻とか飾ってたもんね。なんだあの部屋。
そんで悪魔崇拝ですか。殺すまではともかく、マークつける必要あった?
その武器のチョイスはちょっと龍が如くっぽいけどさ。
全部壊してやる……!って、それはふわっとしすぎやで。

正直面をつけた暗殺集団は、映像的には映えるけど、画面のために作られてる感がすごかった。ヤクザの抗争を起こして勝手に滅ぶ状況を作るために暗殺が必要だとしても、堂島組組長なんて立場があるのにわざわざ自分で活動してるのはなんで?信頼できる組員に頼むか、殺し屋雇えばいいじゃん。

つまり殺したいから殺してるんですね。本当に殺人鬼ですよ。
軸がぶれる話差し込まないでもらえます?

「堂島の龍」とは誰なのか

やりましたよ。
やめてねって言ってたの、やりましたよ。
「堂島の龍」風間新太郎じゃねーか!
いや、でしょうね。ほんと。面白くない着地点ですよ。

前編の記事でも書いたんですけど、風間さんの背中が龍なのだけはやめて欲しかった。本当に。ゲームでぼかされてる部分をドラマに持って行かれた感あって、とても辛い。それだけはやめて欲しかったのになあ。
というのはゲームファンの私の思想ではあるんですが。

ひまわりの子供たちの親を殺したのが風間だってところは残す、のはまあいいとして……(それであの感じなのは白々しすぎる感もありますけど)。
錦山がそれを伝えてくるっていうのは、風間さんの罪を自分で伝える機会をなくすことになって、たとえ続編が作れたとしても脚本がしんどいことになりません?


いったんファンであることを…忘れる!

いったんファンであることを忘れて、普通の任侠もののドラマとして考えてみよう。Amazonが力を入れて作った…地面師とか評価よかったし(私的には言うほどかな?って感じだったんですけどそれはそれ)。
ファンであるとどうしても原作と比較してしまって、乖離しているところが気になって本筋に集中できない(名前を冠しといてそれはどうなんだ?)。

ゆるふわ極道(きわめみち)


全体的に粗が多い印象。
時系列の前後が唐突で要らぬ混乱を招く。1995年と2005年の2軸でやるのはいいけれど、だとしたらそれぞれの軸は時系列で進めていかないと、2軸とは言えなくなるのでは?
それぞれの軸で前後したうえ、それぞれの時間軸でも前後するので、これはもう2軸とかじゃなくて普通にぶつ切りですよね。

極道ものとしてもちょっと弱い。
前編でも述べましたが、極道がそれでいいんか?というご都合ムーブをけっこうかます。もっと厳しく、メンツや看板を命より大事にするはずの極道組織にしては違和感がある展開が多い。
ケジメがゆるかったり、逆に厳しすぎたり、それは別にいいんだけれど、じゃあどうしてそうするの?というところに納得させて欲しいんですよね。

100億の件、なんで組員多数殺されてお金も奪われて、お金は帰ってきたからで許すんです?アイコは亡くなったんでしょうね。でもよく黙って救急車に乗せさせましたね。死体だけでも回収しないとダメじゃないです?その人主犯ですよ。メンツ丸潰れじゃないですか。

そもそも東城会は関わりがない(実際なかった。ないんかい)のがわかって、それを理由に結構近江にやられてるはずなんだけれど、東城会からはその件についてもお咎めなし。戦争にならなくてよかった〜みたいな雰囲気。最初から最後まで東城会は抗争を嫌がってましたね。
東城会、それで大丈夫?その弱腰で近江と均衡保ててるのが驚き。ついでに近江連合、東城会潰して関東乗っ取っちゃえるんじゃないですか?

桐生や錦山の組入りにしてもそうだけど、本当にゆるい。
キャラや物語的に意味があるといいんだけれど、それも描写されないので、本当にゆるいだけです。

こう進めたいというシナリオに引っ張られて、それぞれの組織や人物の思惑や行動に説得力がないのが、このドラマの欠点だと感じます。

主軸がぶれてるのもありますよね。

  • 桐生が龍になるまで(桐生・風間の話)

  • 盗まれた100億(由美・アイコの話)

  • 新宿の悪魔(錦山・ミホ・堂島・桐生の話)

ざっくりしたメインの話だけでもこれだけあって、絶妙に噛み合ってない。全部別の話。ややこしい。桐生の話なら100億はいらなかった。100億が東城会の金ならまだまとまるような気もするけど……。


邦画的キャラクター

自己矛盾を抱えて行動に一貫性がないことこそ人間!」みたいなの、邦画は好きですよね。現実では確かにそうかもしれない、けどそれを再現するのがリアリティではないと思うんだ。というか娯楽映画にその方面のリアリティは求めてないんじゃよ。

感情移入できるキャラがいない。
というか、これは悪口なんですけど、全員ガキすぎる。

1995年の時点では本当に全員幼い。今時の高校生で、クラスメイトくらいの距離感ならわからなくもないんですが、家族という扱いなのにお互いに話をしなさすぎ。
全員中学生くらいのメンタリティなんですよ。おそらく最年少のミホですら少なくとも20歳以上のはずですよね。それでその性質はちょっと幼すぎる。
子供がヤクザごっこ、キャバ嬢ごっこをしてる。
イライラして怒鳴り散らす。見てるこっちは終始「ちょっと落ち着けよ…」と思っている。風間さんも今こんな気持ちなんですかね……。

桐生は「堂島の龍になる」のは別にいいんですけど、じゃああの日の堂島の龍はいまどうしてるのか?ってことには一才言及しませんよね。

人を殺さないという信念も、なんだか大事そうだけど、なんでそれが彼にとって大事なのか描写されません。闘技場の格闘はセーフ扱いでいいんですか?普通に相手が死んでもおかしくない暴力だと思いますけど。

そもそもヤクザに関わるきっかけを作ったのは桐生です。
強盗するにしても、神室町じゃなくもっと違うところにすればよかったんです。手近な銀行とか襲っていた方が、まだ予後がよかったでしょう。

風間さんは指を落としたし、ミホは飲酒が必須の仕事に就いて、結局亡くなった。そのことに対して、後悔はないんでしょうか。家族を巻き込んで、過酷な運命に引き摺り込んで、そこには何もない。

堂島の龍になるって、何のために?そもそもどういう経緯で子供の頃にこの違法賭博の場にいたのか?経緯は描かれません。それが桐生にとって、家族の負うリスクを考えても取らないといけない大事なものなのかの描写がない。
アイコにも言えることですが、一番大事なところが描けてないんですよね。だから終始納得感がない。

2005年の話では主人公としての存在感もないです。由美にくっついて回るだけ。近江との交渉で啖呵きるのも由美。錦山との戦いでも本心が見えてこない。この人は結局どうしたいの?

錦山はまあ……妹が死んで壊れちゃったので、やり場のない怒りと憎しみでキリングマシーンになったんでしょう。自己嫌悪で全部ぶっ壊したいやぶれかぶれキラーなので、感情移入とかないです。
まあ実際、桐生のせいとも言えなくないですし。

錦山にいいとこなしで描かれてるのも厳しいですよね。桐生は物理的に強いからいいとしても、錦山の魅力が描けていないから、お互いに支え合ってる描写が足りないんです。どっちのも別の魅力があることを描かないと、この関係には説得力出ないですよね。

由美は、ホステスっていう仕事へも前向きなミホのあり方に嫉妬してる風だったし、最初に倒れた時もすぐに錦山たちには話しませんでした。
だから由美は桐生についてきたかっただけで、別に錦山やミホはどうでもいいみたいなスタンスなのかなって思ったんですよね。

でもそれなら出所した桐生にずっと無意味に冷たいのなんで?
帰ってくるって約束を破ったからですか。
錦山より自分を選んでくれると思ってたのに?
あまりの利己的女ムーブに、結局ミホも錦山もどうでもいいっていうのの証明がなされたようで、号泣シーンも正直マジで何泣いとんって感じでしたね。

キャラクターの魅力を描写し切れてない、というのを強く感じました。そのキャラが何を考えて、どうしてそういう行動をするのかが描けていないから、物語に動かされているように感じる。
実際はちゃんとあるのかもしれないけど、描けてないよ〜。

「これはこれでアリ」になれたのか

なれなかったな、というのが私の結論。

アウトレイジとか孤狼の血とか好きで何回も見てるけど、これはもう見ようと思えない。ファンである自分を切り離しても、ちょっと良いとは思えませんでした。

映像の魅力もそれほど…な感じ(背景美術とか頑張ってたらまだ…だけど、1995年も2005年も微妙に雰囲気がそれっぽくない)だし、ヤクザものとしてもちょっと説得力に欠ける。
海外には受けるのかなあ。
海外に求められてるYAKUZAも、これではない気がするんだけどな。

龍が如くであった意味

中途半端に寄せちゃってんだ

龍が如くのシナリオやキャラを、知っていることは前提になっている気がしました。全然別物としながらも、完全に原作を意識しているシナリオです。何も知らない人がいきなりこれ見て意味わかるかな?みたいなところも結構ありますよね。

けれども原作へのリスペクトは見えないんです。
原作で登場するキャラの名前だけは出す。役回りもキャラクターも完全に無視したオリジナルのキャラクターに、名前だけはお馴染みのものがついていたりするわけです。

遥も真島も冴島も、ドラマ本編には全く必要のないキャラクターです。
なのになぜ出てくるのか。原作に出てくるから出してるんです。それは多分ファンサービスのつもりなんですよ。でもそれを原作ファンが喜ぶわけないじゃないですか。

実際真島はすごくよかったと思います(それは青木崇高さん自身の、原作真島さんへのリスペクトなんだと思いますけど)。

でもさっくり撃たれて死ぬ冴島を原作ファンの誰が見たいねん。ただ憎たらしさをやたら強調された無意味なキャラクター(由美の子ですらない)になった遥を誰が見たいねん。龍が如く8を経て、伊達さんをよくもあんなキャラにできたね……。

まあ少なくとも監督や脚本の人は、龍が如くをプレイしてないんでしょう。今まで爆死して散っていった残念な実写化作品が浮かばれませんね。

評価すごいぞ!!

Amazonの評価を見てください。
☆1.6ですよ。すごいですね。

B級どころかC級でしょ!みたいなストーリー破綻しまくったドチープなホラー映画とかでも1.6はなかなかないですよ。
2とか3でも、見る前にちょっと構えるレベルです。
私が途中で見るのをやめた「テラフォーマーズ」は☆3、なんならあの悪名高い「実写劇場版 進撃の巨人」ですら☆2ですよ。まじかよ。

名前を借りておきながら、原作ファンを敵に回した結果がこれです。
でも怒った原作ファンが、怒りに任せて無茶苦茶書いてるだけと認識してほしくはないんです。

この評価は理不尽なものじゃなくて、原作の名前を借りた作品が当然追うべきリスクだと思います。この作品が龍が如くじゃなくて、普通のオリジナル作品だったなら、こういう評価にはなっていなかったはずですから。

もちろん、再生数やレビュー数も、ここまで昇らなかったでしょうけどね。

役者さんは、みんな与えられたキャラクターをちゃんと演じていたと思います。真島役の青木さんは特によかった。アイコ役の森田さんとか、上手でしたね。上手だったからこそ、アイコへの憎しみが湧きました。

撮影や背景もまあ、多少粗はあれど、やはり一般的な連ドラとかに比べてこだわりがあったように感じました。やっぱりお金かかってるのかな?神室町のごちゃごちゃした汚い街の感じとか、ちゃんと出ていましたし。

☆1評価をつけた原作ファンだって、みんな☆1付けるつもりで見たんじゃないと思います。楽しめる作品であって欲しいと皆んなが望んでたはずです。


だからこそ本当に残念。
面白い作品になって、「え〜Blu-ray買っちゃおうかな〜」とか言いたくなる未来だったらよかったのに、と思います。


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