【WEEKLY留学記㉕】(3/25~3/31)
アイキャッチの画像はあんまり関係ですね。去年の暮れにシティで何気に撮ったもので、ニューヨークらしくてお気に入りです。
遠慮せずにいけよ!という話
以前のぼくの留学記を読んでくれた人は知ってるしれませんが、先学期は遺伝子回路の研究室に入ってました。で、そこで週一回のラボミーティングに参加したり、あとたまに、計算ソフト(MATLAB)の使い方を教えてもらって、回路のシミュレーションをしたりする機会があったりして、まあ難しいけど楽しいなって感じで通ってました。
そもそもこの研究室はアンダグラッド(学部生)を原則受け入れてなくて、例外として入れてもらえただけでもめちゃくちゃ嬉しいんですけどね。それはそうなんだけど、手を動かして実験をすることができなかったんです。
実験は院生からというルールで、しかも僕は一年間のみの交換留学生だから、一つのプロジェクトを完成するにはやや期間が短かいということでした。
ここね、研究環境めちゃくちゃいいところ。院生一人一台の自分専用のデスクがあって、そこら中にディスカッション用のホワイトボードがある素晴らしい研究所。アメリカだーって感じ。
でも、やっぱり早く実験をしてみたいなぁ、とはずっと思ってて。研究室にこもって実験してみないと、本当に研究が好きかどうかわからんしなぁって。
そんな感じで、去年の12月の学期終わりぐらいから渡り鳥のように次の研究室を探し始めることに。とりあえずぼくはタンパク質とか、DNAとか、細胞の中の小さい分子にずっと興味があったから、それ関連の研究室を探したんですね。
それで一応見つかったんです。1月下旬ぐらいに一人の博士課程の学生が論文書き終わるから、それ以降なら実験見てあげれるよって。よしよし、と思って年が明けるのを待つ。
で、一月下旬になる。「いや、うちの研究室は人が少ないからやっぱり難しいかも」、とそこのPI(主任研究員)に告げられたんです。
えー、やるって言ったやん、ってその場で控えめに抗議したけど、まあしょうがないかと思って、たしかその日は凹みながら帰ったと思う。
そしたら、翌日にそのPIから、レチナールの精製を手伝ってくれないかってメールをくれて、もちろんラボに足を運び入れる機会なら喜んでやりますと二つ返事で返信。
お願いされたのは、毎週金曜日にラボに来て、HPLCというめちゃくちゃ時間がかかる精製作業を代わりにやってね、という内容でした。まあそれは単純な作業かもしれないけど、ぼくとしては結構ワクワクすることなんですよね。機械の中を流れる分子を想像しながら、その機械の前でその研究室の論文を読むのは幸せな時間だなぁと感じてました。この感覚を共有できる人は少ないと思いますが。
で、僕の遠慮の話。
そのレチナールの精製のやり方を教えてもらった初めての金曜日、その帰り際に、アンドリアという博士学生から「来たい時にいつでも来ていいからね」って言ってくれたんです。普通に嬉しかった。
普通に嬉しかったけど、実験ない日に行くのもなぁ、なんか気まずいよなぁって思ってたんです。英語に少し自信がないのも重なって。だいたい僕、大学一年の夏、岡山大学にいた時も、ある研究室にお世話になって、同じようなことを言われたんです。「実験ない時も来ていいよ」って。その時も、大学一年生が一人ポツンと行くのも気まずいなぁって思いながら、実験期間が終わってから全然顔を出せてませんでした。実験するのも好きだし、研究してる人の話を聞くのも好きなのに、なんでだろうね。
そんな僕だったから、初めてのレチナール精製が終わってから、次にラボに足を運んだのは一週間後の金曜日。しかも、その時は丁寧に前日の夜に、明日は11時ぐらいに伺いますって連絡も入れた。今思えば少し滑稽だけど。
そんな感じで遠慮してたんです。実験やりたい気持ち、関わりたい気持ちあるのに、全面に出してないこの感じ。そんな僕を見かねて、あの博士学生アンドリアがメールをくれたんです。
Honestly, you're free to come in whenever you want! Your desk is always there. So don't feel like you're not allowed to come in to lab if I don't necessarily have time. Something for you to do can always pop up while you're there.
メールを勝手に引用してあれだけど、アンドリアがこのブログを読んでないことを願う。まあ、読んでくれてたらそれはそれでいいんですが。
メール内容は、要は「本当にいつでも来ていいからね」、ってもう一回言ってくれた感じ。同じことを二回も言わせてごめんなさい。
このメールをもらって、もう遠慮しちゃいかんなって本気思いましたね。
ぼく金曜日以外の平日は毎日16時に授業が終わるんですけど、毎日授業終わってから、その足でラボに行くようになりました。最初の方は勉強だけしてました。そのラボの全人数は5人だけで、修士課程1人、博士課程2人と、ポスドク(博士取得後)2人。少しざわざわする図書館よりも、勉強するのに落ち着く環境でした。
本当に不思議なんですけど、そうやってラボに通い続けてたら、「今からNMRするけど見に来る?」とか「細胞培養をやってみる?」とか声をかけてくれるようになるんです。普段聞けんような研究テーマの話もしてくれるし、たわいないコミュニケーションも増えてくる。
気がついたら、朝8時半ないしは10時に教室に向かい、夜の22時に研究室から家路に着く生活は1ヶ月少し経ちました。今は、アンドリアの研究テーマで使う細胞の培養を任せてくれて、ぼくが育てています。なにせ一番嬉しかったのは、僕にもっと残って欲しいって言ってくれたことで、あー迷惑になってないんだなってホッとしました。
研究室で過ごす時間が自分の生活で一番楽しみな時間になったので、このまま留学が終わって欲しくないと思うのがこの頃です。だけど、その環境に僕を持ってこれたのは、間違いなくアンドリアのメールのおかげということを忘れちゃいけない。遠慮してた自分だったら、またそれまで通り生活だったかもしれない。
遠慮せずに行けよ!図々しいぐらいにやりたいことをやってこうよ!
って自分に言い聞かせているところです。
やりたい気持ちを全面に出して初めて、自分のやってることに満足出来るし、周りにいる人、僕を見てくれてる人も、その自己肯定感に心地良さを感じると思う。ただ、これは「わがまま」とのバランスが難しい。経験を積むしかないのかな、なんて思ったり。
ともかく、在籍してる大学に帰ったら、あれ以来顔を出せなかったあの研究室に、帰ってきたよって挨拶しにいこう。