【WEEKLY留学記⑰】(12/10~12/16)
今週のトピックは二つ!!
ニューヨークのキリスト教 と バイオ研究のラボ自動化
ニューヨークで若者が宗教離れ!?
先週末の日曜日、ボストンからニューヨークに遊びに来てくれた先輩と解散した後、まあ、家に帰ろうかと思い、マンハッタンの中心にある駅、Penn Station へとことこ歩いていたら、すごい長さの長蛇の列を見つけた。
ニューヨークにはホームレスがたくさんいて、もしかしてこれはシェルターで、中でフリーフードを配っているのか?でも、並ぶ人どれも身なりが整っているし、列の先はホテルらしき建物。近くに並んでいた人に聞いてみると(何のための列か全然見当つかなかったのに、既に並んでた笑)、
「中でフリーコンサートでやってるよ、素敵だからおいで」と。
コンサートがフリーって言うし、帰りの電車まで時間あるし、寄ってみようと思い、並ぶこと10分。
軽い荷物検査と金属探知機のゲートを通って中に入ると、巨大なコンサートホールがありました。ここまで本当に入場料もなにもかからなかった。
パーティーみたいな雰囲気で、サンタもちらほらいるし、これから何が始まるんだろうって不思議に思ってたら、灯りがだんだん暗くなり、舞台に一人タトゥーが入った男性が登場。早速アップテンポな音楽に乗って歌いだし、後ろのスクリーンに映る歌詞を見て、これが何のためのコンサートなのかをようやくそこで悟った。
一曲目が終わった後、アコギを持った女の子(可愛かった)も加わり、その後三曲連続で演奏してくれました。
写真で見えるかな? 歌詞には、「JESUS」(イエスの英語バージョン)があり、観客のみなさんも手を天に掲げて一緒に歌っていました。
そう、これはキリスト教のコンサートライブだったんです。毎週日曜日の夜8時から、このイベント会場、マンハッタンホールセンターで開催しているらしい。毎週ってまたすごいな。
そして、このライブ、キリスト教徒ではない僕でもすごく楽しめました。歌詞が前のスクリーンに出ているから、みんなで手を振って一緒に歌えるし、演奏が全部終わった後、周りの人とハグをしあうのもすごいいい体験でした。
帰ってから調べてみたんですが、こんなデータがありました。
これは2015年のニューヨーク州に限定したデータですが、65歳以上で宗教に所属していない割合が12%に対して、18~29歳ではそれが三倍以上の39%です。
このように若者の宗教離れが年々続いている背景があるから、ポップミュージックのコンサートを無料で開き、交流しやすい場所を提供しているのかもしれません。
時代の波に逆らうことなく柔軟に対応するキリスト教に見習うところって結構ありますよね。以前のWEEKLYでも紹介しましたが、教会が主体となって、環境保全やLGBTQにも活動の範囲を広げています。それぞれの地域コミュニティの中心となって、社会全体を動かしていくのが宗教の役割なら、もっと多くの人が関心を寄せていくべきテーマだなと思ったりもします。
とにかく飛び入り参加のライブ楽しかった。また行きたいな。
バイオ研究でのラボ自動化にはまだ道が遠い
今、期末テスト期間でテスト勉強に追われていますが、並行して取り組んでいるプロジェクトがあって、「アメリカにいる研究者たちの声を集めてみよう」です。
これまで大学内でバイオ分野を中心に、4名の研究者たちにインタビューをしてきた。初めてのインタビューした時は、めちゃくちゃ緊張したし、英語も不安だったけど、どの教授も優しく受け答えをしてくれて、インタビューをすることにはだいぶ慣れてきた。(深掘りをしていくスキルはまだ足りないけど)
質問リストはいつもこんな感じ
・現在の研究テーマの簡単な紹介
・メンタリングシステム
・教育と研究のバランス
・アカデミアと産業の連携
・ラボ自動化
・アメリカのファンドやグラント(補助金)
・アメリカで研究するにあたって良い点と悪い点
毎回、何かしらの面白い話が聞けるので、始めて良かったかなとは思います。インタビューがひと通り終わると、撮ったムービーを編集して60分ぐらいのドキュメンタリー動画にしようと思うので、それもまたお楽しみに。
で、質問の中で、僕が一番意外だなぁと思った解答が「ラボ自動化」についてです。
少し、バイオ研究の性質を紹介します。
バイオ系の実験はその名の通り生物を扱います。実際に大腸菌やイーストなどのモデル生物を使って、細胞の中の特定の遺伝子を発現させたり、特定のタンパク質を抽出したり、はたまた集団の中で蛍光で光っている細胞の数を確かめたりする実験がよくあります。細胞ひとつひとつが非常に繊細な存在なので、僅かな気温や気圧の差でも、実験結果に大きな影響を与えてしまうことがよくあります。「ネイチャー」という国際的な科学誌の調査によると、70%以上の研究者が他の研究者の実験を再現しようとして、失敗に終わったという統計もあります。
バイオ研究、とにかく再現性が大事なんです。
一方、テクノロジーの方はバイオ研究に伴ってくるその性質を補ってくれるポテンシャルを秘めていると。Googleの画像検索や、無人コンビニAmazonGOで使われている画像分析と機械学習の技術が、実験室でも活かせれるんじゃないかと、最近話題になっているようです。実際、既に一部の研究室では、Amazonのアレクサが人間に実験手順のアドバイスを出せるようになっています。
(ここから少し飛ばしても大丈夫、ラボ自動化を可能にするテクノロジーは現時点で既にあるよ、ということを例で言いたいだけなので)
例えば、大腸菌からある特定の種類のタンパク質を精製する実験。
CPRで遺伝子増幅→ベクターに導入→大腸菌に導入→タンパク質発現→最適条件で精製(たぶんこれが一番難しい)
タンパク質はその折りたたまれ方ひとつで性質や機能が決まります。そのタンパク質特有の性質にピッタリ合った条件を見つけて、そのタンパク質だけを取り出すのが目標ですが、現実はなかなかうまくいかないケースが多い。
しかし今の時点で、発現する前のタンパク質の遺伝子の塩基配列から、タンパク質の立体構造を高精度で予測できるソフトが開発されているようです。(Google内の研究室DeepMindで開発されたAlphaFoldというソフトウェア)もしそれが実用化できれば、タンパク質のあらゆる情報が事前に分かることができて、最適条件をコンピューターが教えてくれるようになることが期待できます。
CPR(遺伝子を増やす技術)は既に自動化が普及しています。遺伝子をベクターに導入する作業や、ベクターを大腸菌群に導入する作業も、画像分析のソフトと精度の高いハードウェアがそれ専用で開発できれば、ここも自動化できるかもしれません。
上の実験は通常一週間ほどかかる作業の連続ですが、その全体の過程を自動化できれば、作業の時間をもっとクリエイティブな部分に回せるようになります。
と、こういう側面しか見えていなかった僕は、ラボ自動化には楽観的でした。
しかし、話を聞いた現役のバイオ研究者の4名からはラボ自動化についてはまだまだ時間がかかるという意見をもらいました。
要は、現時点の人工知能はまだ人間の認知能力に匹敵しないという考え方です。
実験をする時、微妙な力の入れ具合や色の判断は、経験を重ねた人間の感覚の方が信頼度は高いですし、
仮に自動化を導入して、実験結果に大きな誤算が出た時、原因解明が難しいとも言っていました。
実際これまで科学史上の重要な発見は、予想外のミスから生まれたものばかりで、科学者たちはそれを「セレンディピティ」と呼んでいます。もし機械が実験を代行するとなれば、思いがけない偶然による発見の数は減ってしまうのかなとも思ったりします。
視野を広げるために僕ももうちょっとエンジニアリングの分野を勉強してみようと思います。
とにかく、サンプル数はまだ少ないですが、アメリカで生物系を研究している教授たちは新興テクノロジーの導入に慎重でした。(意外だった)
みなさんはもう期末テストが終わりましたか?僕はまだ水曜日に有機化学が残っています。頑張りましょう!!
また来週。
君に幸あれ!!!