「reflection」 / 掌編小説
穏やかに陽も沈みかけようとしている7月7日。
駅から少し歩いた公園で、私はあなたと待ち合わせ。
「大体ね、18時頃に...公園の何処かにいるわ」
そう言って昨夜は電話を終えて。
あなたなら、見付けてくれるでしょう?
そう確信しながら公園沿いの道を歩む。
これから本番を迎える、そんな夏の風をゆったりと浴びながら。
私が何処であなたを待ちたいか。
そうではなく、あなたと会いたい場所を探して歩む。
だって、そうよ。
あなたとの時間の始まりを、単に私が待ちたい場所にしたってつまらないわ。
二人の時間の始まりに相応しい、そんな場所を私は探したいの。
でもそれって、早く着いた方の特権よね。
だから私は敢えて早目にここへ来て、そんなちょっとした主導権を握った気になる、それだけよ。
暑さに一息ついたような紫陽花、そして重なる緑が美しいから、私はあなたを此処で待つわ。
あなたに返す文庫本を読み返しながらね。
今日は七夕、そして彼女と待ち合わせ。
駅から歩いて約5分、そんなあの馴染みの緑の豊かな場所で。
「大体ね、18時頃に...公園の何処かにいるわ」
「探してみせるよ」
そう言って昨夜は電話を終えた。
まだ、陽は長い。
君は何処にいるのだろうか?
けれど俺は見付ける。
そんな確信をもって、駅から公園への道をゆったりと歩む。
俺なら何処で待つか。
そうではなく、君と会いたい場所を探す。
悪戯好きな君はきっと俺より先に着いている事だろう。
今日、君が待っていてくれそうな場所を探る。
君は何処を選ぶだろうか。
君が選ぶ場所と、俺が選ぶ場所。
きっと、そこに大きな差異は無いと思うんだ。
人が散らばる広場より、こじんまりとした空間とか、上手く言えないけど…そんな場所に君が居そうな気がしてさ。
夏はまだまだこれからだけど、やっぱり陽が落ちると風が心地よいな。
...見付けた。
reflection。
彼に彼女が反響し、彼女に彼が反響する。
流れる疏水は揺らめきながらも流動し、一つの水面に様々の姿を映し出して。
流水は常にその成分を新しくし、しかし一つの水滴がその流れから切り離せぬように、それらは混然としてもいて。
reflection。
反響する鏡のような水面には、陰と陽、N極とS極のように様々な二極性が響き合い、波紋を生み出しながら調和しているのだろう。
世界はreflection。
あなたと、わたし。
きみと、ぼく。
だれかと、だれか。
一人では見え難い何かは、誰かと反響すると浮き彫となり、そこに鮮やかに美しく浮かび上がる。
天と地と、銀河と銀河。
風の囁きに耳を澄ませ、幽かなる星の便りをそのなかに拾って。
えんとゆかり。
偶然に見せかけた必然。
ただ、タイミングの妙。
微笑みは空気を振動させ、どこかで目覚めようとしている花のつぼみを優しく撫でるだろう。
reflection。
小さなさざ波はやがて緩やかな波となり、反響を起こす。
あなたの肌の下に流れる、あなたを生かす水流にさえ、それらは反響しているのだから。
image of the story from
「reflection eternal 」/ Nujabes
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ふと思い出し、過去作品に一寸七夕色を添えて🎋
確かリンクに貼ったNujabesの曲を流しながら、浮かんだイメージで書き始めたらこんな作品になったのでした📝
七夕の夜は生憎の天気がお決まりな記憶があるが、明日は上弦の月も楽しめそうな予感🌓
皆さま、素敵な七夕を🌌
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