「久遠」/ 詩
細長く
地に横たわるような 川の土手で
ぽつり ぽつりと
残照を灯す鬼百合たちが
ゆうらり ゆうらりと
荻や葦の合間に佇み
風に頭を揺らせている夏だった
硬質な気配を放つ
大学病院の夜間窓口の側では
誘蛾灯のように夜顔が開き
その白い香りを零し
無機質な佇まいのなか
盆の行灯のように
ひときわ 浮世離れしていたっけ
あれから三六五日が経ちました
なんと言うか あっという間で
ある意味もどかしく
地に蠢いてきたようでもあり
然れど指先はよく動かしてきたので
時折痛い思いもしつつ
裁縫は少しましにはなりました
よく泣きましたが
食欲はちっとも衰えぬ不思議です
世界はその後微妙で
しかしこちらは植物一辺倒
阿呆の如く写真ばかり撮っています
だから相変わらずと言うのか
まあ 何とかやっております
多分 そんな感じです
先日夢で会いましたね
葡萄をひと房買って貰いました
なんだか 豊かな気配を感じたものです
月の満ち欠けは意識しても
この一年は 特に
冬の星も また夏の星も
まともに目にしていなかったと
落し物に気付いたようになり
ちらりと覗いた夜空に
金の星の姿を確認する
巡る 巡る
天も地も季節も時も
あめつちの調べ
地に走り 天を渡る
響き 沁みわたり
水の旅の如く
自由に姿を変えながら
久遠の星よ
光を放っている