10月23日(月)『第5回単独ライブJAM・中』
〜一喜一憂の二週間編〜
オーディションをいい結果で終わらせて一夜明けた次の日。
オーディションに来れなかった演者の後輩がそのネタ動画を見て、これでもかというほど絶賛の連絡をくれたりと気分のいい1日のスタートだった。
オーディションは出順が次になると準備をしないといけなく、ネタも全部は見れてなかったため、ぼくも改めてネタを全部見返した。
全21ネタ全部が面白かった。単独前にある地下ライブ向きのネタも多くあったが、単独ライブでやっても見劣りしないネタの数々。サークルの成長が甚だしくなんだか嬉しくなった。
全部見終わって思うことがもう一つ。
ぼくのネタは一位じゃなかった。
審査をしてくれたみんなのことを否定するわけではなく、そう評価してくれて嬉しい限りなのだが、全体的に見た時にあるネタに負けているなと感じた。ぼくが審査員側にいたら順位は変わっていただろう。
もちろんぼくは自分のネタが好きだし、面白いと自負している。それでも面白さ、笑いやすさをみた時に完全に負けてしまっていた。
一位をとって意気揚々となっていた心は瞬く間に塵と化した。
そして単独ライブの香盤表が発表された。
全9本で、オーディションの上位8ネタ+ぼくの1ネタ。
オーディションの最後にやった自信のあったネタが順位は振るわなかったものの評価されて単独ライブでできることに。
これはとても複雑な気持ち。
普通にネタが評価されたことは嬉しかった。ただ順当に勝ったわけではなくその経緯等は不明、批判的な声ももちろん。
その声も受け止めることしかできないし、ぼくが出来ることは本番でちゃんとウケてこの選択は間違いではなかったと証明するだけ。
このネタの追加でぼくは4ネタやることになり、単独ライブの約半分が自分のネタとなった。
最初はやっぱり嬉しかった。散々漫才やってきてもここまでのステ数を現実にすることはできなかったし、やっと自分が報われた気がした。ちょっとの驕りまであり、もうほぼ自分のライブだと思ってしまうほどでもあった。まるで夢見心地。
それでも時間が経つにつれ現実に戻される。
プレッシャーがずっとのしかかってくる。ネタの数が多い分自分がコケるわけにはいかないし、追加された1ネタもある。今までの単独でここまでのことはなかったからこそ、責任感や重圧に潰されそうになる。
今まで多くのネタをやっていた演者に尊敬の念を抱いた。
それからまたネタの修正に励んでいくのだが、そんな中リハーサルを迎える。
初めての中部講堂ということでリハーサルも短い時間だったが入念に行われた。
音響や照明、スクリーンはさることながら、コントのセット転換など。
コントに至っては客席からよく見えるように、机のや人間の位置も調整し、音響との兼ね合いなども緻密。この時のライブを作っている感はものすごく楽しかった。
ただ演者の1人が日向坂46のライブがあるとかいって欠席。おいてめぇと。なにやってんだと。しかもこいつは3ネタ。なにやってくれてんだと。
タイミング悪いなぁと思いつつも、そいつに使っていないサイリウムをあげるなど楽しむサポートをしてしまったのはここだけの話。お金が浮いたと喜んでいた。今度メシ奢れ。
後日話をきいたらさぞかし楽しんだみたいでまぁそれはそれで良かったなと。でもこいつのせいで3ネタが合わせられなかったからなぁ。メシ奢れ。
もちろんコントだけでなく漫才のリハもあるのだが、今回中部講堂ということで新しく照明が演出に加わった。
作っていただいた出囃子に合わせて、照明で更にワクワク感が増す。その中から「どうも〜」と袖から出てくるのはさすがに羨ましく思った。コントしかやらない分、漫才の特権であるこの「どうも〜」が言えないのがちょっと寂しく漫才もやっとけばよかったなと後悔してしまうほど。
それほど演出がカッコよくて綺麗で華やかでライブとしての格も上がったなと思った。
そしてコントも漫才もリハが終わり、最後にコーナーのリハ。
しかも初めてのMC。
10月頭に諫早で行われた学外のライブに招待された際に、二つの意味で背中を押されコーナーのMCもやってみることに。
リハの時には内容が決まっておらず、即興でジャンケン大会をやったのだがこれがとても楽しい。ずっと楽しい。真面目に進行したり、ツッコんだり、たまにボケたり。MCもいいじゃないと思った。
そんなかんだでリハーサルも無事終わったのだが、ステージに立てない演者が「立ちたかったなぁ」と声も漏らしているのがその途中に聞こえた。
胸がキュッとなった。
9ネタのうち4ネタをやる身として、それまでは自分の力を発揮でき悦びに浸っていたが、なんて自分勝手だったんだろうかと俯瞰的にみて思った。
ただでさえ少ない9という枠の4をも独占し、その分みんなの中部に立つ機会を奪う。他のネタでも見劣りしないからそっちを優先させても良かったのではないかと。もう次の単独には3ネタくらいをオーディションに持っていくのが丁度いいかもしれないとも思った。
しかしこれは稀有に終わる。
今回は運が良かっただけで、次回またこれほどのネタを作れるかと言われたらわからないし、他の誰かが覚醒して猛威を振るう可能性だってある。だからぼくはいつまでもがむしゃらにネタを作っていくだけ。正々堂々と真っ向に戦うだけ。今は後輩たちにいい背中を見せれればそれでいいなと思った。これがいい背中なのかどうかはわからないけども。
ライブ本番でもこの9ネタで良かったと思わせなければならない。演者にもスタッフにもお客さんにもそして自分にも。結局そこに帰ってきた。結局それが一番だった。
リハで改めてギアが入り単独に向けて走り出したのだが、単独の前に一つの山場があった。
そう。
「土竜の板〜地上に這い上がってきた地下ライブ〜」
である。
地下ライブという初めての試みで、一体全体どういうふうになるんだろうと期待と心配と楽しみと不安が入り乱れるようなライブだった。
結果大成功という素晴らしい結果で終わり、実際にぼくも過去一楽しいライブとなった。
ただその実績がそのまま単独へのプレッシャーとして積み上がる。
この地下ライブはこれだけ成功しましたけど、単独の方は大丈夫なんでしょうねぇ?と言われている気がした。
それでもぼくは自信はあった。ネタそのものはもちろん、一緒にネタをやる相方もいるし、演者もスタッフもいる、みんなが選んでくれた9本のネタだからこそ抱え込むのは1人じゃないないんだと。そう思い力に変えた。
そしてそこから一週間弱。
最後の調整をし、当日を迎える。
「第5回単独ライブJAM・中」完。
「第5回単独ライブJAM・下」へ続く。