2024年4月29日(月)『宗教勧誘』
祝日だから映画を見にいこうと思っていたが、祝日だから人多いだろうと思って行くのをやめた。
周りが祝日だろうがぼくからしたらただの日常。
昼頃に起きてチャンスの時間を見て、いつものようにYouTubeでネタを見漁ってたら、大きい音のインターホンが鳴る。
一瞬焦る。
祝日のこんな時間に誰かが訪ねてくることなんてあるのか。
もしかして母上に郵送を頼んでいたからそれが来たのか、でもそれなら事前に連絡くるから違う。
もしかして先日家に泊めた同期が誰かしらを連れて遊びに来たのか、それなら連絡をよこさないのも合点が付く。でもあの同期はぼくの家をおそらく覚えてないだろう。
もしかして部屋での音が大き過ぎてクレームなのだろうか。これだとしたら本当にやばい。
もしかして…もう出てこなかった。
恐る恐るドアを開けると、マダムが2人立っていた。
なんだなんだ。誰だ?
クレームを想定していたけどこのアパートの近くにこんな婦人たちは住んでいないのはわかっている。
だからって誰なんだ。まじ誰。怖すぎる。
恐る恐る話を聞くと「私たち聖書をいろんな人に呼んで欲しいんです〜」と言ってきた。
でたーーー!!!!!!!!!!!
まじででたーーーーーーーー!!!!!!!
これが噂に聞いてた宗教勧誘ってやつだ!!!
本当にあるんだ。こういう奴ってフィクションって思ってたけどノンフィクションだった。
空想の話が現実だったと言うことと、自分がそれの当事者になってしまったことにさすがに笑ってしまった。
そしたら1人のマダムが持っていた聖書を読んでみるように渡してきた。
興味があるわけじゃないが、遊び心でどんなことが書いてあるのか知りたくて読んでみようかと思ったけど、明らかに日本語じゃなかった。全く読めなかった。微塵も読めなかった。
どういうこと?
普通に困惑した。
「え、読めないんですけど」
「あ、ネパールの方じゃない?」
「ネパール!?ネ、ネ、ネ、ネパール!?」
もう意味わかんなかった。ぼくの身なりをどう見たらヒマラヤの麓になっちゃうんだよ。あってるのはアジアだけ。南アジアと東アジアで全然違う。方言が悪影響を与えることは可能性の1つでもにしても違いすぎる。
ぼく日本人です〜、と言うとですよね〜って言って笑ってた。
絶対違うだろ。
同じアパート内にネパールの方が多かったかららしいが、にしてもである。どっからどう見ても日本人の田舎者である。
長崎からやってきたことを伝えると、テンションが上がっていた。長崎には教会あったりキリシタンのなんならとかがあるから、ど真ん中だったのだろう。好きなものの話の時だけ饒舌になる人のそれだった。
「なにか将来不安なことはありますか?」
と間髪いれずに聞いてくる。
「ないっすね」
全然ない。信じられないくらいない。希望と夢に包まれている。やりたいことをやれているし、これからもっと楽しくなっていく。
そう言ってるとまたマダムが口を開く。
「あ、もしかしてその感じだと〜音楽やってる方?」
あーー、残念。惜しいすぎる。高円寺に住んでいる人の二分の一を外してた。
「残念、お笑いの方です〜」
と言ったら、また笑ってた。
何も面白いこと言ってないけど笑ってた。
これで終わりかな〜って思ったらまだ終わらせてくれない。ぼくもずっと扉を手で開けてる状態だから全然疲れてくる。いっそのこと家の中に招き入れようとも考えたけど、自分の部屋に1番最初に招いた女性が宗教勧誘のマダム×2は流石に抵抗があった。
「神様の存在って信じてますか?」
もう哲学じゃん。
ぼくは個人的には信じている。神様はいると思っている。天にいるとか神社にいるとかそんなとこまでわかんないけど、どこかしたらにいると思っている。
いると思う〜って言ってたら、マダムの表情が一気に明るくなったのがわかったから、別に崇拝なんかはしてないよ〜と加える。
少し暗くなったのもわかった。それでもまだ笑ってた。
神様はいるだろうが、自分の人生において神様は介入してこない。神様に頼ったところで、それが上手くいかないと神様のせいにしてしまうのか。それだと最後まで人のせいにしてしまうから人生としては物凄くダサい。そんな奴の人生がかっこいいわけない。そうならないためにも自分で道は選ぶし、自分を1番信じている。神社を巡るのは好きだけどね。あくまで神様には手助けや追い風になってくれればいいだけで、迷った時の選択肢ではない。
と、長々とマダムよりも長尺で得意げに喋ってたら、暗くなった表情も明るくなり相変わらず笑ってた。
「最近、あなたみたいな若い人も少ないですからね〜。やりたいことをやるみたいな。すごいですね〜。あなたと出会えて良かったです〜」
なんか少し心動かしたかもしれない。
最後に聖書を無料で読めるQRコードが記載された名刺みたいなやつを渡された。
いまどきって聖書タダで見れるんやな。
無料で聖書を学べますって書いてある。
“読めます”じゃなくて”学べます”。
ここにどんな意味が込められているのか。
気が向いたら読むとしようか。たぶん気は向かないだろうけど。
2人のマダムにお礼を伝えて最後まで見送る。
最初のドアを開けた時よりもドアを閉める時の方が、マダムの表情は輝いていた。
2人は最後まで笑っていた。
バイトのことをnoteに書こうと思ったけど気が乗らなすぎてやめたそんなある日。