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#非効率は愛情だ 食用バラ農家 横田敬一
テーブルの上に1輪置くだけで、部屋中がバラの香りに包まれてしまうような。そのバラを噛むと、その日は口中がずっとバラの香気に包まれてしまうような。そんな奇跡の芳香性をもつエディブルローズについてのお話。
× FARO 資生堂
× UN GRAIN
× béni by Kenji Yamanaka
× Tea creator Yuko Shimizu
ものづくりの「非効率」こそ肯定したい
こんにちは!小澤(@ryo__food)です。
これまで全国250以上の生産現場に足を運ぶ中で、もっとも心を揺さぶられた体験は、目指す品質のために“あえて非効率に挑む”生産者との出会いでした。
安く売るために生産の“効率”が求められる現代。
そんな中で、理想の品質を追求するために必要な職人的なこだわりや製法は得てして“非効率”とされてしまいがちです。
しかし、彼らの話を聞いていると、すべての手間には必ず理由があり、“非効率”に感じる部分にこそ、生産者としての信念や愛が詰まっていることを実感せずにはいられませんでした。
経済原理という強力な磁場の中で理想のものづくりを貫く姿がなんと美しいことか。
この連載では、ものづくりに込められた“非効率”の価値を、成分分析ブランディングによって科学的に解明します。
連載のテーマは『非効率は愛情だ』。品質にたっぷりと愛情を注ぐ生産者たちに光を当てることで、彼らのチャレンジを後押しします。
※成分分析ブランディングについての説明は以下の記事をご覧ください。
唯一無二の香り高い食用バラを栽培する横田園芸
「#非効率は愛情だ」第1回目。今回は食用バラの生産者、「横田園芸」の横田敬一さんを紹介します。
神奈川県平塚市の緑豊かな場所にある「横田園芸」は、有名パティシエや星付きシェフ御用達の高品質な食用バラ「YOKOTA ROSE」を育てる、業界では知る人ぞ知る存在です。
花のクオリティを極めるために代表の横田敬一さんが独自に編み出した栽培方法は非効率なことばかり。
YOKOTA ROSEのふたつの「非効率」
ひとつは、育てるのが難しい品種を選ぶという「非効率」。
香りのよさを追求し、品種改良を重ねて生まれたバラは、動物でいえばサラブレッドや血統書付きの犬や猫と同じ。野生のバラと比べると圧倒的に繊細で、どうしても品種的に弱いといわざるを得ません。しかも強い香りは虫を呼び寄せるので、栽培にはとりわけ神経を尖らせる必要がでてきます。
また、香りが強いということは、植物がひとつの花により多くのエネルギーを費やしているということなので、必然的に開花数は少なくなってしまいます。一般的に流通しているスプレータイプのミニバラは1本の茎から10〜20輪/回/株の花が咲くのに対して、YOKOTA ROSEで採用されているバラは1〜2輪/回/株。さらに、開花する時期も限定的なので、栽培効率は決してよいとはいえません。
しかしながら、200種類以上のバラを食べ比べて、食味がよく香り高い、横田さんが想う理想の4品種に絞り込んで栽培しています。
食用バラYOKOTA ROSE🌹
— ryo|食べられる花屋|スタートアップ×食|小澤 亮 (@ryo__food) May 25, 2021
ピンク = イブピアッチェ
オレンジ = カナローズ
パープル = ブルーリバー
ホワイト = フェアビアンカ
生産者の横田敬一さんが200種類以上のバラを食べ比べて選んだ4つの品種です #エディブルフラワー pic.twitter.com/dyaNuFwDOc
もうひとつは、自然栽培という生産の「非効率」。
横田園芸では、「植物本来の性質をもっとも引き出せる栽培方法は自然栽培である」という考えから、化学農薬、化学肥料、除草剤を一切使わずに、限りなく自然に近い環境でバラを栽培しています。
この「限りなく自然に近い環境」、これが難しいんです。
そもそも農業とは、人為的な環境で人為的に改良をした植物を育てること。
品種改良したバラは、本来たくさんの肥料や農薬を必要とするので、これを自然に近い状態で育てるのは並大抵のことではありません。
横田さんは試行錯誤を重ねた末、アブラムシ対策に自ら捕まえてきたテントウムシを放ったり※、さまざまな害虫を捕食してくれるクモを大事にしたり、また、あえて畑を耕さないことで土壌の微生物や菌の活性を促すなど、独自の方法で時間をかけてハウスの中に自然をつくり出し、生態系のバランスを最大限に利用した自然栽培に行き着きました。
慣行農法は「科学されている」ため、決まった型に当てはめれば、1年目からでも農業は成り立ちます。しかしながら、横田さんの方法は1年や2年でできることではありません。
「終わりも答えもない旅のようだ」という横田さんの言葉が印象的でした。
※ちなみに、野生のテントウムシを1日で200匹ほどを捕まえているとか。巣を見つけるコツがあるそうです…
非効率だからこそ生まれる価値を科学する
こうして一見「非効率」と思える栽培方法で育てられたYOKOTA ROSE。
見た目は文句なしの美しさですが、「香りを食べる」というコンセプトを強化するため、香り高さや機能性成分、食味について成分分析を行いました。比較したのは、一般的に流通している食用の「べルローズ」です。
まず、香りについて分析を進めるとその差は歴然。
YOKOTA ROSEはべルローズと比較して、1gあたり約550倍のバラ様香気成分を含み、さらにバラ1輪あたりだとバラ様香気成分は約3,840倍含んでいることが明らかになりました。これは、YOKOTA ROSEは一般流通する慣行農法の食用バラの約3,840倍香り高いことを意味します。
また、ポリフェノールの含有量についても、ベルローズと比較して9.29倍という結果が。
もともと花にはポリフェノールが含まれています。近年スーパーフードとしても注目されているポリフェノールは抗酸化物質の代表格ともいえる成分で、分かりやすくいうと「自分の体を守り健全な状態を保つ物質」。つまり、ポリフェノールが多い植物は生命力が強く免疫力が高いということになるのですが、逆にいうと、野生でたくましく育った生命力の強い植物ほどポリフェノールは多く含まれるということにもなります。
今回の「ポリフェノール9.29倍」という数字は、野生に近い状態で栽培されたYOKOTA ROSEがより力強く育っており、それにともない栄養価も上がっていることを証明しました。
さらに、香りは虫を呼び寄せて受粉させるための生命活動なので、生命力の強さは香りの強さにも比例します。生命力が強いバラを育てることは、結果としてより香り高いバラを生み出すこととなり、これが前述の「約3,840倍の香り」にもつながってくるのです。
相場の35倍の値付けでも取引数は7倍に成長
圧倒的な数字を後ろ盾に、YOKOTA ROSEは相場の35倍の高価格を設定。一般流通する食用バラが1輪20円なのに対して、YOKOTA ROSEは1輪700円としました。それでも、その美しい見た目と華やかな香りは全国の有名シェフや人気パティシエから高い評価を受け、星付きレストランを中心とした販路は15件から106件へと着実に広がっています。
また、これまでスイーツや料理の飾りとしてのみ使われる脇役的な存在だった食用バラですが、その香り高さや豊かな味わいから、YOKOTA ROSEを主役としたドリンクやアイスクリームが開発されるなど、活用の場も広がっています。上品な香りなので、洋食だけでなく和食にも用いられるのもYOKOTA ROSEの特徴です。
× JULIA
× 鮨 心白
× forucafe
× 京遊膳 花みやこ
たのしかった食用バラのファームツアー🌹
— ryo|食べられる花屋|スタートアップ×食|小澤 亮 (@ryo__food) May 15, 2021
✏️https://t.co/P07S2VOuMZ pic.twitter.com/5snnIT1hVM
料理人たちとのYOKOTA ROSEのファームツアー
美しさと香り高さ、栄養価、そして安心・安全をも兼ね備えたYOKOTA ROSEは、まさに「非効率」が生んだ奇跡の花。愛情とこだわりが詰まった一輪のバラには、食卓だけでなく口にした人たちの心も華やげる底知れぬパワーが秘められています。
【告知】成分分析ブランディング × YOKOTA ROSEがTV放送されます!
告知です!成分分析ブランディング × YOKOTA ROSEで、初のTV取材を受けました。放送日が決まったらTwitterで告知する他、こちらのnoteに追記させていただきます!
★追記
6/23(水)23:40~24:25のフジテレビ「FNNニュース」で成分分析ブランディングが放送されることになりました!※突発ニュースや大きな事件が発生した場合は順延します