劇場と客は共犯関係
MerryCreationオリジナルミュージカル「金平糖1.0」
小屋入りしました。
搬入仕込みが終わり、場当たりを完了させて、いよいよ、と言った感じです。
私がMerryCreationで活動をするきっかけになった作品がひとつあります。
2015年に初演が上演された
ミュージカル「HEADS UP!」です。
あまりミュージカルを観てこなかった自分が
(たしか)宮野氏の誘いで観に行った作品です。
開場した時には舞台上は本当に素の舞台の状態で、台車に乗った平台が置いてあったり、裏の大道具室が見えていたり。リノすら敷いていない。
上演中に「仕込み」から「バラシ」までを行う、観たことがない舞台でした。
この舞台を観た直後に、MerryCreationの活動が本格始動したと記憶しています。
この作中に、私が特に好きなセリフが3つあります。
『劇場とお客様は共犯関係にある』
「私がここは広大な草原!と言えばここは草原になるし、後ろには大海原が広がっている!と言えば背後に荒立てる日本海が存在する」(ニュアンスです)
舞台というのは一つの建物の空間で行われるので、いくら素晴らしい美術や演出があっても限界があります。
そこで、お客様と共犯関係を結び、お客様の想像力を用いて、その世界と情景を共に作り上げる必要がある、という事です。
なまものはお客様ありき、というのはお客様の大事なお時間やチケット代を使っていただくことはもちろん、お客様に"共犯者"になっていただかなくてはならないのです。
『客はセットやスタッフワークを観に来ているんじゃない。それら全てが発する熱を観に来ているんだ。』
これは演劇だけでなく、コンサートやお笑いなどでも同じ事が言えます。
昨今世界中を揺るがす某ウイルスの影響で、オンライン配信というものが主流になってきました。
自分もありがたくオンラインで視聴する機会はとても多いですが、やっぱり生で観るのが1番、という理由にはこのセリフが全てを語っていると思います。
もちろんオンラインで自宅で、リラックスした状態で好きな時に視聴するエンターテイメントも最高です。
ですが。
この空間で発生する熱や空気感と言うものは、その場に足を運び、この空間に入ることでしか体感することはできません。
『チケットを売ったと言うことは約束をしたと言うこと、最高の作品を届けると言う。』
チケット代というのは、諸々の経費や、キャストスタッフに支払われるお金に回るものではありますが、
何よりも、「約束」の印だと思います。
この日、この場所、この時間に、自分達が創り出せる一番良いモノを、
大切な時間、お金、労力を払ってくださったお客様に届けると言う約束の。
キャストスタッフ一丸となって作品を愛して大切に育てて来ているので「作品」として、一緒に愛して、約束を結びたいのです。
自分達の公演前に、他作品のセリフを引用して自分の気持ちを上乗せするのはいかがなものかとも思いますが、
少なくとも私はMerryCreationで活動してきた6年間、ずっとこのセリフ達が私の根底にあります。
音楽をやったことがない、舞台に立ったことがない、そんな私が「ミュージカル舞台制作」をやりたいと思ったきっかけなので、
多分これからも、心にあり続けるんだと思います。
我々MerryCreationは、基本的に
脚本演出・代表の宮野つくり氏と、
音楽の市川航也氏と、
ぺーぺーのりょうあゆみの3人がブレーンとなって、
毎公演プロデュース形式でキャストさんやスタッフさんを募ります。
演者を持たない団体なので、劇団ではない、と思います。
私は2人の作る世界が大好きで、尊敬しているので、その作品づくりに一番近くで関わりたい、
と言う気持ちが、一番の原動力だと思います。
宮野氏とは20年来の付き合いだし、
市川氏ももういとこの兄ちゃんくらいの感覚なので、面と向かっては絶対言わないですけど。
私は発想力が乏しいのでゼロイチを作ることがすごく苦手で、
でもイチをジュウにすること、「それっぽく作る」ことは割と得意で、
彼女の発想と、彼の音楽を聴くと、自然と色んなアイデアが湧き出てくるのです。
MerryCreationオリジナルミュージカル「金平糖1.0」
明日2022年10月6日、幕が開きます。
宮野氏が描く世界、
市川氏が創りだす音楽、
具体性と幻想を与えてくれる照明・美術・音響、
そこにまりあんぬさんの振付スパイスが織り交ぜられ、
キャストさん達によって美味しく調理された我々自慢の一品。
是非ご堪能ください。
「アガリ」の一杯として、是非パンフレットも連れて帰ってくださいね。