長い坂道を

想イヲツヅル #52


先日の日曜日
熱海の花火は素晴らしかった


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熱海駅から長い長い坂を下っていく
息を上げながら海辺に向かう

サンビーチという砂浜にレジャーシートをひいて
缶ビールとおつまみを並べて
その時を待つ

花火が打ち上がる頃にはすっかりほろ酔いで
寝っ転がりながら
熱海の空に打ち上がる煌めきに
心を溶かしてしまう

今年はたったの15分の打ち上げ時間だったけれど

長い坂道
水平線
波の音
砂浜
湿った潮風

そのすべてがストーリーになって
空に輝いていた

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8月1日に彼女といけなかった花火大会も
「この日の感動のためにあったんだ」
と自分に言い聞かせることができる夜


ただ
終電の時間が迫っているので
花火が終わるや否や
そそくさと坂道を上り

汗ばんだTシャツ
息も整わないまま

駅内のコンビニで買ったアイスに食らいつく僕らはなんだか滑稽で
二人して笑ってしまった

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帰りの電車
彼女の頭が肩に落ちてくる

電車内の蛍光灯に照らされた
彼女の少し赤らんだ肌

お酒のせいもあるだろうけれど
夕日でも日焼けはするんだなぁ

なんてことを思いながら


さっきまでいた熱海の海岸で
君によく似た人をみかけたことを思い出した

まさかね、、、


熱海の花火はまだ何度かあるようだし

今度は君を
職場の仲間や友人を誘って来るのもいい

その時にでも君に聞いてみようと思う


ひとまず今は
彼女を起こさないように

″自分の肩は良質な枕なのだ″

と暗示をかけて

枕に徹することにした


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