職場実習
※学内で仕切り屋だった男が、学外に出るとどうなるか。
その一端を感じていただければ幸いです。
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高校卒業後進路にあたっては、特別支援学校出身者なら誰もが悩むところです。当たり前のことですが、中学卒業時と違い、この後はもう「障害者用の学校はない」ですから、大学に進学するか、専門学校に進むか、「職業訓練校」という障害のある方が就労のためのスキルを身に付ける学校で、技術を磨いて適性を身に付けるか、あるいは就労支援A・B型のような「作業所」ですぐに働くのか、いずれにしても大きな選択を迫られることになります。
そのため、桐が丘養護学校(現:特別支援学校では高校2年生になると全員が5日間の「職場実習」を体験します。「職場実習」とは、高校卒業後の本人の希望や適正に合わせ、仕事に対して初めて向き合う貴重な機会です。しかし、一般に肢体不自由者養護学校の生徒はボランティアやアルバイトといった経験は皆無な場合が多く、この時期になっても「仕事」に対してのイメージを描くことができず、苦労するケースもよく見られます。かくいう私もそのうちの1人でした。
担任の先生らと熟考した結果、東京都の北区にある『東京都障害者総合スポーツセンター』にお世話になることに決まりました。同所は毎年6月頃に行われている『東京都障害者スポーツ大会』(※今年はコロナ渦の影響で中止なりました)に向けた直前記録会等、授業で何度か訪れたことがあり、「通勤」に際しての支障がないことも決め手の1つでした。
支障がないとはいえ、(当時住んでいた)実家の最寄り駅から池袋までは30分。さらに送迎バスで15分という道のりは、実際かなり長く感じました。なぜなら、私は当時も今も限られた条件の下でしか1人で排泄をすることができないため、常に「行きたくなったらどうしよう」という不安を抱えていたことが大きいと思います。
スポーツセンター内のトイレには手すりもあり、なんとか1人で排泄もできる」という大変恵まれた環境の中、任せていただいたのは「受付業務のアシスタント」でした。来館されたお客様から利用カードを受け取り、お客様がやりたいスポーツ施設で提示する利用証をお渡して記録を付ける仕事でした。お帰りの際には、次回の利用が決まっていたら予約をされるかどうかを確認して、利用カードをお返しする。
見ていると一見簡単そうなのですが、実際には焦りからカードがうまく手につかなかったり、パソコンへの入力に手間取ってしまい、気付けば目の前のお客様に対して引きつった表情のまま対応してしまったりと、決して合格点とはいえないものだったと思います。それでも、言葉遣いや真面目な姿勢を褒めていただいたことは本当に嬉しく、学校外でも評価していただいたことで、また少し自信になりました。
5日間を終え、「働くってこんなに大変なのか」と痛感するとともに、「ただやるだけではなく、どうすればお客様に喜んでいただけるか」を考える必要性を実感しました。
さらにもう1つ感じたこと。それは、生徒会長としての経験を少しだけ活かせたかなという、過去が今に繋がっている手応えでした。
高校卒業まで残り1年。それは、「自分の中の自分」と「他者の中にある自分」との葛藤の毎日だったのです。