フリーランス駆け出しの33歳男がまさかの外車をGETした話〜電動車椅子を補助を受けて作るための方法〜
この度、僕の愛車が新しくなった。
その名も「ペルモビールF3コルプス」
新車とは、何を隠そう電動車椅子だ。15の秋から乗り始め、18年間でこれが4代目。
電動車椅子は「最低6年は乗って下さい」という暗黙のルールがあるから、年数もバッチリ合う。
※高校を卒業する満18歳までは(身体の成長が著しいこともあって基本的にその縛りはなく)僕も最初は2年半で乗り換えさせてもらっている。単独での大学進学=通学を実現するために。
→この冬もまもなく始まるお正月の風物詩、箱根駅伝5区ばりにキツい山の上でのキャンパスライフを制覇するためには、さらに頑丈で、耐久性に優れたバッテリーを搭載したモデルが必要だったのだ。
時代が変われば(そこに求める)目的も変わる。
今回はこの夏行ったトークセッションがきっかけだった。次なる相棒を探していた時、お客さんが僕の運命を決めてくれた。
今日はそんな御縁に感謝を込めて、長年車椅子ユーザーを務める僕が「電動車椅子をGETするまでの流れ」を心を込めて精一杯、解説したいと思う。
言葉だけで伝わるか、心配だけど。
車椅子が欲しい!と思ったら
まずは管轄の市役所・区役所に行こう。
これは電動車椅子に限らず、すべての車椅子、さらにはどんな福祉用具でも一緒だ。行政(に申請する時)はこれらを総称して”補装具”と呼んでいたりもする。だから、交渉の最終目的はこの「補装具支給券」(正式名称:支給決定通知書)をGETすることとなる。
また、(市役所・区役所以外にも)申請先はいくつかあり、僕が以前住んでいた地区の管轄は福祉事務所だった。
このあたりの詳細及びご自身が受けられる制度については、各自治体の窓口などに置かれている「福祉のしおり」を確認してほしい。
(※冊子の名称は自治体によって異なります)
窓口に着いたら
管轄の窓口に着いたら、まずは地区担当の職員(ケースワーカー)と話をしよう。
実は市区町村の障害福祉課(※これもその自治体によって名称は若干異なる。児童分野と統合されている場合には、児童福祉課としているところも多いはず)の中には、さらに自分の担当の職員がいます。
〇〇市1丁目は××さんのように。意外とこれを知らない方も多いのが現実です。
そこで担当の職員さんに自分の欲しい福祉用具を伝えて相談するところから、すべてが始まります。これが、補装具支給に向けた第1歩。
福祉用具って高いんでしょ!?
そして、次なる問題は金銭面になるかと思います。福祉用具って結構高いんですよね…。特に車椅子となると完全オーダーメイドだったりするから、そのハードルは一気に上がります。すべて自費で賄える方なら何の問題もないのですが、ほとんどの人が補助を必要としていらっしゃるはずです(もちろん僕もその1人)。
そこでポイントとなるのが「受給者証」を持っているかどうか。正式名称を「障害福祉サービス受給者証」といいます。(市役所・区役所から許可された)すべての福祉用具を受給、ならびに日々の通院など必要な医療を受ける際に最大1割〜3割の自己負担で受けることができる証明書です。
(※生活保護を受けている方や年収が国の定める基準額以下の方は、自己負担なしで受けられる場合もあります)
基本的には対象者の前年度所得で決まりますが、満18歳以上は対象者本人の所得、18歳未満=児童の場合は保護者の所得が判断基準になります。
ですので、まだお持ちでない方は受給者証を取得するところから始めることになります。そのような事情もあり、欲しいものがすぐに手に入るわけではありません。むしろ、どんなものでも最短1〜3ヶ月、オーダーメイドやカスタマイズが多い車椅子などは半年〜1年を超えることも少なくありません。
壊れてから申請では遅いので、注意しましょう。
さらにポイント!
いわゆる「障害者手帳」を持っていることが、補装具支給の権利を満たしていることにはなりません。金銭的な補助を希望する場合は必ず受給者証が必要になります。障害者手帳は障害者であることの証明書なのでほぼ全員が持っていますが、受給者証は(障害者の中でも)全員が持っているとは限りません(※公的サービスが必要な人だけ)。
事業所を決める
そろそろ電動車椅子に話を戻しましょう。受給者証の申請についてはここでは長くなるので割愛しますが、支給決定を目指す過程で重要なのが事業所(会社)を決めることになります。
色々な福祉用具(補装具)がある中で、どんな車椅子を選ぶのかはもちろん(実際に使うユーザー1人ひとりの)自由。電動車椅子と一口に言っても実に様々なものがあります。
だから、ユーザーの1人として実感でお伝えするならば「自分が乗りたい電動車椅子を扱っている最寄りの事業所はどこか」で製作をお願いする会社(事業所)を決めている方が多いのではないかと思います。
僕の場合は今回、友人と出演したトークイベントのお客さんからの紹介で、東村山市にある『車椅子工房 輪』さんにお世話になることに決めました。
今ではインターネットを検索すれば全国色々な事業所がすぐに出てきますし、毎年東京ビックサイトで開かれる「HCR 国際福祉機器展」に出向いて何年も前から情報を仕入れている方もいます。
間違いなく言えるのは、車椅子ユーザーにとって格段に情報を得やすい時代になったということです。
事業所と決める〜どんな車椅子にするか〜
お願いする事業所と車椅子(機種)を決めたら、次はどんな車椅子にするかを決めます。もう少し付け加えるならば「どこまでカスタマイズするか」ということです。
車に例えるなら、免許を取る時にオートマ車にするかマニュアル車にするかを選択したり、いざ車を購入する時に車体の色を決めたりするみたいなもの。
僕は以前まで「普通型電動車椅子」だったのですが、年を重ねるごとに姿勢を保つこと=真っ直ぐ座ることが難しくなっていて、最近では慢性的に首や背中が痛いです。だから今回、最低40歳まで乗る電動車椅子を決めるにあたり今回は”座位保持機能”と”下腿長調整”の機能調整を搭載した、「特殊型電動車椅子」の支給決定を目指しました。
(*簡単に言うと身体のズレを防止する機能と、車椅子の上で足の位置を変えたり屈伸をすることができたりする機能です)
今、「〜を目指しました」と書きましたが、色々な機能をつけようとすると電動車椅子の”区分”も変わります。これまでは普通型電動でしたが、今回は特殊型電動車椅子という括りになりました。
最後の関門は…「判定会」
受給者証を無事取得できて、電動車椅子の具体的なイメージも(事業所と)共有できたら、最後の関門は判定会です。電動車椅子のような高価な買い物になると、管轄の市役所(や区役所)だけでは支給決定をすることができません。
東京都障害者福祉センターのような、もう1ランク上の機関に出向いて「本当に長野にこのクオリティ(良質)の物が必要か」判定を受けます。
作る前の判定は主に「該当する(電動)車椅子の操作が安全にできるかどうか」を見ることが目的。
完成後の判定は「本当に支給決定通知書通りに作られているのか」を確認するために行われます。
※作る前の判定で支給が認められれば、晴れてようやく支給決定通知書が交付されます。受給者証を元にした公費(補助金)の支給額も、普通型電動と特殊型電動では異なります(もちろん後者の方が高いです)。
判定会において、希望したすべての機能を搭載した電動車椅子が認められるとは限らないですし、「あなたには特殊型電動車椅子は必要ありません」と申請自体が却下されてしまうこともあります。
どうしても高い買い物ですし、(一部)皆さんの税金を使わせていただくわけですから仕方ない部分もあることは分かりつつも、「皆さんは無料で歩けるのに…!」というもどかしさや、他の同じような障害のある方と比べられてしまうことへの葛藤は少なからずあることは事実です。
そして、これらの手続きを無事に通過し、ある程度出来上がった旨の連絡を受けたら、(このまま仕上げをしてしまって良いかどうかを見極めるため)再び業者に出向いて”仮合わせ”を行います。もちろん、不都合があれば納得いくまで修正を依頼します。
僕の場合は運良く、即日納車をしてもらうことができましたが、これは極めて稀なケースです。
また、特殊型電動車椅子の場合には完成後にも出来上がりを確認する2度目の判定(=”適合判定”)があるということも、先日初めて知りました。やはり自分で経験しないと分からないですよね…!
ちなみに今回、僕は障害福祉サービス受給者証の1割負担+(電動車椅子の総額ー公費負担上限の差額分)=60万円 ほどを自己負担しました。
決して安くはないですが、「それだけ出しても欲しい!」と思える車椅子を製作して下さった『車椅子工房 輪』の皆さんには、本当に感謝しています。
2021年12月7日、仮合わせにて。
担当スタッフの三浦さん・山崎さんと、技能実習生2人とともに記念の1枚。
これからは新しい相棒とともに全国各地へ!
冒頭でお伝えしたように、電動車椅子は福祉用具(補装具)の中でも特に高価で、最低でも6年間は乗ることを義務づけられた生活に不可欠な必須アイテムです。
皮肉にも身体の劣化(=脳性麻痺の二次障害)を自覚したこのタイミングだからGETできた代物ではありますが、僕にはまだまだこれからやりたいことがあります。それは、全国の学校を回っての講演活動!
小さな頃から色々な大人と触れ合うことで、私たちがいる社会が当たり前になればいい。「頑張らなくても自然と一緒にいる」状況を、本当に人生かけて作っていきたいんです。それが今の、僕にしかできないこと。
いただいたものより大きなものを人生かけて必ず返すべく、常にご依頼お待ちしています。
それでも怪しいと思った方は、ぜひ本も読んでみてください。(包み隠さず想いを綴っていますので…!)
これからも、私の足である電動車椅子をフル活用し、自分の想いに正直に、1人ひとりの声と向き合っていきます。
以上、今回は電動車椅子を獲得するまでの流れについてお伝えしました。