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逆算の恐怖

 昨日は「こんなはずじゃなかった」という後悔と自責の気持ちから、具体的症状について書きましたが、今日は切迫感が引き起こす周囲との関係性についてです。

事実上の”お先真っ暗”な日々

 休むべき時に休めない精神状態が続き、あっという間に1カ月が経過しました。本来は予定通りに復帰できれば良かったのですが、そうはいきませんでした。  
 実は9月中旬に1度会社に行き、直属の上司と面談した際、「俺が復帰のGOサインを出すまで休養して良い」と言われていました。事実上の“無期限休養” です。
 また、「社会福祉士の通信教育のレポートを書くことを仕事として認める」と言っていただいたことは、何かしらの役割や生きる目的を必要としていた私にとって、本当に有難いことでした。
 一方で事実上の無期限休養を告げられたことで仕事復帰までの目的を見失ってしまったという面もあります。社会福祉士実習を終えて翌年の春には復帰したいと思っていましたが、この時点では自分がその時どうなっているのか、全く想像がつきませんでした。

お風呂から出ると身体が真っ赤に・・・。そして始まった逆算地獄。

 具体的な症状についてはすでに書きましたが、ホッとしたのでしょうか。発症から1カ月余りが経過したある日、入浴後にふと目をやると全身が真っ赤になっていました。蕁麻疹を患っていたのです。
 すぐにインターネットで調べてみると、「心身のストレスの強い人では、運動や発汗が刺激となって、蕁麻疹になることがあります」と書かれていました。無意識のうちに、1カ月で復帰しなくてはいけないと自分にプレッシャーをかけてしまっていたのかもしれません。
 身体的な症状以外に私を苦しめたのが、【逆算の恐怖】です。例えば試験前の受験生が「いつまでにここまでやる」と計画を立てますよね。これが健康な人が普段何気なく行っている逆算だとすれば、私が行っていた逆算は、生活の中でこれから起こるだろう出来事をすべて想像し、常にカウントダウンしていくような類いのものでした。

 皆さんにはなかなかイメージが沸きにくいと思いますので、さらに説明をしますね。

 気の合う優秀なヘルパーがいる時には、「あと何分でこのヘルパーが帰ってしまう」という思考回路になり、「次のヘルパーにはきっとこれも説明しないとできないから大変」だと考える。そして、やり残したことはすべて翌日に持ち越しとなるため、「明日はあれもこれもやらなくてはいけない」と、逆算を起点にした悪循環を繰り返してしまうのです。
 また、食事中には「半分の量を食べるのに1時間もかかっている。なぜ食事をするだけで2時間もかかるのだろう。これを1日3回だから1日の1/4を潰している」と考えてしまう。
 さらに、当時はせっかく体調の良い時があっても「どうせ明日になればまた悪くなる」と思ったり、「自分は仕事をしていないのだから、楽しそうにしていたら同僚から白い目で見られてしまう」と決めつけたりといった最悪の状態でした。
 やがて、身近で生活を支えてくれているヘルパーに対してさえも、「こんなにマイナス発言ばかりしていたら誰も介助に入ってくれなくなってしまうのではないか」という疑心暗鬼の気持ちを抱いていました。
 とにかく常に時間に追い立てられるような感じで怖かったことを覚えています。無意識のうちに逆算し、連想ゲームの中で自分にプレッシャーをかけてしまう。

 そんな悪循環から抜け出せる見通しも持てないまま、自然と自宅に籠(こ)もるようになっていきました。

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長野 僚
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