大麻サムネ

【日本ではまだ聞けないハナシ】徹底討論!大麻は「薬」か「薬物」か?

 近年アメリカでは州単位で医療用、嗜好用として合法化が成立している大麻、マリファナ。私が見ている限り、日本でも賛成派反対派それぞれのエビデンスを出して、がっぷり四つというところでしょうか。賛否両論で、論争は絶えません。

「大麻に依存性はあるのか?」「精神病を引き起こす?」「大麻は他のドラッグへの入り口?」等、様々な意見がありますが、今回はジョー・ローガン氏のポッドキャストにて専門家2人お招き、徹底的に議論をしている模様をお伝えすることで、沢山の情報が飛び交う昨今、専門家の二人の意見と、中立的な立場のジョー氏の対談を今回共有し、私ができるだけ分かりやすくまとめることで、より大麻への理解が深まれば幸いです。ちなみに私は中立派です。

目次
・大麻は人を狂わすか?
・大麻は「治療薬」と言えるか?

・それでも大麻は「治療薬」とは言えない
・アレックス、貴方の本は真実を伝えているか?
・大麻合法国カナダ政府から、国民への忠告
・大麻使用=クレイジー?それとも…?
・精神障害とSNS
・最愛の人に向く刃
・ここまで分かった!大麻とDNA
大麻は他のドラッグへの入り口?それとも出口?
・議論の先に見えてきた現時点での決着

※議論を直訳して羅列してしまうと、非常に読みづらいため、私がある程度まとめていますのでご了承ください。白熱した議論の様子を観たい方はリンクからどうぞ!

登場人物:
ジョー・ローガン:ポッドキャスター。自身はマリファナを愛用しているが、立場は中立派。

アレックス・ベレンソン:作家。元ニューヨークタイムズの記者で、最近「Tell Your Children: The Truth About Marijuana, Mental Illness, and Violence ”あなたの子供に伝えて欲しい。暴力と精神病とマリファナの真実について”(意訳)」を出版。

マイケル・ ハート:医師。大麻が合法化されたカナダにて、医療大麻を中心に治療を行う病院を経営する。
今回の対談によく出てくる単語
大麻の大まかな成分(カンナビノイド)

THC:脳内にあるCB1レセプターに働きかけ、ある種の幸福感(ハイ)をもたらす。食欲増進や、不眠にも効果があるとされるが、それと同時に被害妄想なども引き起こす。判断力低下や、他の精神障害の引き金になる可能性もあり。
CBD:脳内のCB1レセプターとは反応せず、摂取してもハイにならない成分。鎮痛・リラックス効果や、てんかんや発作などの症状の軽減など。CBD単体摂取での副作用は吐き気や頭痛など。
統合失調症:2002年まで精神分裂病と呼ばれていた。症状として幻覚や妄想、対人コミュケーション障害など。


・大麻は人を狂わすか?


まず議論されたのは、巷でもよく話題になるアルコールと比較しての大麻の安全性について。

肯定側のマイケル氏曰く「まず、アルコールには致死量があるが、大麻には致死量がないんです。どんなに摂取しても、摂取量が直接的な原因となって死亡するケースはゼロ。例外としてマリファナを摂取しすぎて、車ごと崖から転落するケースも確かにありますが、致死量がないという点だけでも、私は大麻はお酒よりも安全であると考えています。」

これに対して反対側のアレックス氏、「もっともな意見だ。アルコール摂取が原因で亡くなる人は年間およそ9万件、そのうちの3万件から4万件はアルコールの過剰摂取に身体的ダメージによるものだ。肝機能障害とかね。もしくはアルコール中毒とか。

残った原因はアルコールに関すること。暴力、自殺、交通事故などだね。しかしこの調査は90年代もしくはそれ以前の調査だ。死亡原因究明の際にアルコール値を計って、血中に0.1%でもアルコールが含まれていたら、アルコールが原因の死亡とされていた。

この統計方法は私は間違ってはいないと思っているが、しかし現時点で、大麻に関する死亡原因究明の統計は同じ方法では取られていない。私は今すぐにでもこの統計を取り始めるべきだと思う。今述べた調査方法をとれば、その結果は大麻が間接的な原因である死亡数は1万件や2万件ぐらいに昇ると私は推測している。」

中立な立場のジョー氏「交通事故などの大麻による間接的な原因はまだ究明されていないということだが、私の意見としては、マリファナの過剰摂取が原因で様々な社会問題が発生していることもある。いわゆる WAKE AND BAKEというやつで、朝起きてすぐにマリファナを吸い始めて、無気力、怠惰になった彼らは大麻の過剰摂取によって社会活動に影響が出る典型的な例の一つだと思う。朝起きてすぐにハイになり、食欲の増進から、すぐに食べ物に手を出して、結果的に体重が増えて間接的な健康被害も生じている。」

アレックス氏は、酒と大麻の比較自体をそもそも問題視しています。その理由はアルコール摂取と大麻摂取では、それによって発生しうる症状が異なるから。

一般的にアルコールの害といえば暴力性の助長、判断力の低下、臓器障害などがありますが、大麻の場合は、致死量というものは無いものの、やる気が出ない無動機症候群、被害妄想などの情緒不安定、そして短期記憶力の低下など。

そもそも症状が全く異なるものを比較し「大麻がアルコールと比べて安全である」という結論を導きだすのが、問題であるとしています。

 私の個人的な経験ですが、アメリカで10年ほど生活していた時、ニューヨークからカリフォルニアに引っ越した友人の話を聞くと、「カリフォルニアの人は様々なことに対して行動を起こすのが遅く、 忙しいニューヨークとは大違いだ。たくさんの人がマリファナを吸って1日中チルしている。」と言っていました。それは暖かい気候など様々な要因があると思うので、一概に「マリファナは人の生産性を落とす」という結論にしてしまうのは危うい思考回路だと考えますが「そもそも何で、そんなに生産性を高めなきゃいけないの?何でそんなに働くの?もっとリラックスしなよ。」という声も聞こえてきそうです。

・大麻は「治療薬」と言えるか?


アレックス氏「マリファナを薬として私は認知していない。確かにいくつかCBDには鎮静効果があるし、THCのがん治療中の患者への効果は存在する。しかし、殆どの人は大麻を使用しハイになるため、娯楽用に使用することが多い。CBDではなく、大麻自体が安易に「治療薬」である見なされる風潮があることに私は危機感を感じているんだ。

大麻が合法化されているカナダで診療所を経営してるマイケル氏に質問なんだが、患者さんたちはどういった目的であなたの元を訪れることが多い?」

マイケル氏「私達の患者のほとんどが治療目的で私の診療所を訪れます。これはマリファナが医療目的でも、嗜好品用でも合法化されているカナダの利点でもあります。娯楽用にマリファナを使用したいのであれば合法で、どこでも手に入れられるので、そういった人たちは後ろめたい気持ちで私たちの診療所に来ることはありません。そして私の元へ来る患者さんのほとんどは「ハイにはなりたくない」という強い希望を持って診療所を訪れます。もちろん、そういう患者さんには、ハイになるTHC成分を除去したCBD成分だけを含んだもの処方します。

ここで明確にしておきたいのは治療として、医師の監修の元、患者さんがCBDを服用することと、ハイになる為、THCを目的に摂取することを区別して考えるべきだと思います。

CBD に関しては様々な健康効果が証明されていることは事実です。

しかしアレックス氏が仰ったように、THCが娯楽用として使用されることが多いというイメージが世の中にはあるが、 THCとCBD を組み合わせた治療が、乳がんの一種、HER2型乳癌を患う患者のガン腫瘍の成長を遅くし、さらに腫瘍自体のサイズも縮小させたというケースもあります。また深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)などに悩んでいる患者さんにTHCを含む大麻を処方することで症状が緩和するというデータもあります。

これは一般的ではないですがNABILONEと言うTHC純度100%の鎮痛剤をPTSDに悩んでいる方が服用することによって、悪夢を見る頻度が減少したという報告もあります。もちろん定期的な運動することによってPTSD症状が徐々に緩和することもありますが、様々な薬を服用したが、効果がなく、藁をも掴む思いで私達の診療所に訪れる人達が、実際に大麻を使用することによって症状を緩和できた、という報告がありました。」

・それでも大麻は「治療薬」とは言えない

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